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300Bridge代表 藤原義昭氏と探る 小売×デジタルの次なる転換点

憧れていた将来ビジョンと偶然の出会いから趣味を仕事に パインバレー矢嶋氏が振り返る社長1年生の挑戦

“社長だけど新人”だからこそ顧客視点で 初年度に注力した施策とは

藤原 没頭できる趣味があって、それを仕事にできるなんて幸せなことですよね。「矢嶋さんのようには踏み切れないよ」という人も多いと思います。

矢嶋 もちろん私も迷いましたし、その気持ちにも共感します。好きなことを仕事にするのは難しいですからね。ただ、たまたま私がパインバレーのお客様だったということもあり、「バイクを楽しんでいる人をサポートしたいし、私も一緒に楽しみたい」と思っただけです。パインバレーのお客様でも、私のようにカスタムに悩んでいる人は多いですからね。

藤原 そういった人の後押しはどうやってするのでしょうか?

株式会社300Bridge 代表取締役 藤原義昭氏
株式会社300Bridge 代表取締役 藤原義昭氏

矢嶋 ハーレーに関していえば、「自分らしくカスタムを楽しむこと」がハーレーのカルチャーなのに、それがあまり知られていない点や、何を選べば良いかわからない点が課題だと思いました。

 ハーレー自体、乗り始める時点で勇気がいる乗り物ですが、楽しく乗り続けるには安心できるパートナーが必要です。既にディーラーや懇意にしているバイク屋があれば良いですが、中古で買って迷子になっているお客様もたくさんいます。なぜこうしたお客様が生まれるか考えた際に、私は「信頼できる情報が足りないのではないか」と仮説を立てたんです。今はそういった方にオイル交換や車検、カスタムパーツの情報を知っていただけたらと思い、情報発信をしています。

 実際にハーレー乗りになるとわかりますが、パーツ単品の値段はインターネット上で探せばすぐに出てくるにもかかわらず、プロショップに依頼する金額は情報としてほとんど出てこないんですよ。こうした情報がないから「カスタムに興味があっても先に進めない」というお客様は多いと思います。

 パインバレーには経験豊富なメカニックがいるので、彼らの知識やノウハウを基にハーレーの情報をわかりやすく伝えよう、車検やカスタム情報に金額も含めて掲載して、ハーレーオーナーの悩みや不安に寄り添うような情報提供をしようと考えました。

藤原 社長就任から1年以上経ちましたが、実際にその考えは行動に移せていますか?

矢嶋 はい、徐々に環境を整えています。元々創業オーナーがSNSに力を入れていたので、主要SNSのアカウントは既に開設されていたんですよ。YouTubeチャンネルは2012年から運用されていて、ハーレー専門店としては登録者もそこそこいます。ただ、動画の更新サイクルが現場任せ、かつInstagramやFacebookのアカウントも運用の方針がバラバラだったので、課題を整理して改善を図りました。

 また、自社サイトも当初は「パーツが買えるECサイト」としての機能に特化していて、コンテンツは店舗サービスの紹介とブログがあるのみと更新性の低い状態だったんです。お客様に楽しんでもらえる要素を増やすため、毎日更新のブログやカスタム事例、毎週更新するコンテンツを盛り込んだメディアサイトへと改修しました。

パインバレー公式サイトのトップ画像
初心者がぶつかる悩みや不安に応えられるような特集をサイトトップに掲載

藤原 こういったコンテンツの企画は、誰がハンドリングしているんですか?

矢嶋 基本的には私がファシリテーターとなって、社内の関連部署のメンバーを集めたコンテンツ会議を毎週開催しています。企画のテーマやアイデア出し、コンテンツの構成やデザインなど、「誰に向けて、何を取り上げると良いか」「どんな課題が解消できると良いか」といった細かな内容一つひとつを議論しながら決めていますね。

藤原 趣味関連の商材って、「口伝承のほうがかっこいい」「わざわざ足を運ぶから教えてもらえる」といった聖域的なものがあるように感じていました。パインバレーはあえてそれをなくそうとしているんですね。

矢嶋 そういったスタンスを取れるのは、歴史と伝統があるところに限られると思います。残念ながらパインバレーは老舗ではないため、「自分に合ったカスタムをして、もっと気軽にハーレーを楽しみたい」というお客様のかかりつけ医のような関係になるのが良いと考えました。なので、もっと情報を柔らかく届けたいなと考えています。

 たとえば、パインバレーではカスタム(施工)事例に動画を載せていますが、単にビジュアルを見せるだけでなく、マフラー音のような実際に見聞きしなければわからない情報も必ず盛り込むようにしました。常に「自分がお客様だったら何を知りたいか」と求める情報を想像し、形にするよう意識しています。

パインバレーのサイト内に掲載されている施工事例の一例。カスタムを手軽にくまなく見る機会を提供し、初心者への入口を設けている

藤原 まさに、ビームスの自社ECでやられてきたことを1から落とし込んでいますね。

矢嶋 私自身がパインバレーを利用していたので、「こういう情報があれば良いのに」をどんどん形にしている段階です。これからもハーレーを楽しんでもらえるような情報を発信していきます。

次のページ
中小企業のコンテンツ制作内製化は“不足の可視化”から

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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