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300Bridge代表 藤原義昭氏と探る 小売×デジタルの次なる転換点

憧れていた将来ビジョンと偶然の出会いから趣味を仕事に パインバレー矢嶋氏が振り返る社長1年生の挑戦

中小企業のコンテンツ制作内製化は“不足の可視化”から

藤原 ちなみに、コンテンツは外注していますか?

矢嶋 すべて内製化しています。内製化が好きなので(笑)。

藤原 そうでしたね(笑)。パインバレーのように、既に一定のお客様もいてビジネスは回っているけれど、本当はEC運営もコンテンツ制作もSNS発信も、もっと加速させていきたいという会社はたくさんあるはずです。ただ、みんな「やり方」の部分でつまずいてしまうんですよね。社内の誰に任せたらいいのかわからない。リソース配分はどうしたら良いのか、何を発信したらいいのか、といった悩みは僕もよく耳にします。矢嶋さんはやり方を理解されている側だと思いますが、どうやって今のフローを作り上げていったのでしょうか。

矢嶋 まずは、お客様側の視点から「どんな情報を求めているか」を考え、パインバレーの強みを整理した上で「何が今のサイトに足りていないか」をメンバーに問いかけるところから始めました。

 店舗接客時やECのカスタマーサポート宛にいただいた質問など、お客様から「不足している情報」のヒントを得る機会はたくさんあります。お客様にとって価値のある情報がまだまだ社内に埋もれているはずなので、それを見つけてはコンテンツにする、というアクションを繰り返している状況です。

 なお、パインバレーのコンテンツは、基本的にストック型になるように意識しています。ニッチな業界のマニアックな分野なので、こうした情報を探している限られた人に届けた上で、初心者の人も気軽にパインバレーに相談してもらえるようになればと期待しています。

藤原 日頃から業務に携わっていると当たり前なことも、お客様からしたら教えてほしい情報だったりしますからね。秘伝書のように口承伝聞していきたい人もいるかもしれませんが、惜しみなく見せたほうがプラスになることも多いです。その“お宝”を見つける際に意識していた行動はありますか?

矢嶋 「書き留める」という行為は毎日欠かさず行っていましたね。朝スマホのメモを立ち上げて日付だけ書いておいて、その日インプットしたことを全部記録してから帰宅するようにしていました。

藤原 素晴らしい習慣づけですね。

矢嶋 「社長なのに会社のことを一番知らない」という状況でしたし、思いついたことも忘れてしまったら意味がありませんから、とにかく記録していました。あと、社員と会話した内容もメモしていましたね。立ち話レベルでも、その人のことを覚えるためや新しいアイデアのヒントを得るためには大事だと思うので。

バイクブームに左右されない筋肉質な経営体質はどう作る?

藤原 「事業承継で社長に就任する」という経験についてもお聞きしたいのですが、この1年を振り返っていかがですか?

矢嶋 「まったく未経験の業界に事業承継で社長に就任するのは、こんなに大変なのか」と痛感した1年でした。当たり前のことですが、私がビジネスの全容を掴もうとしている間も、既存のビジネスは毎日回っています。最初の3ヵ月ほどは、社内の情報収集と整理をしつつ日々の稟議や重要な決裁もし、なるべく多くの社員とコミュニケーションを図ったりと本当に大変でした。

 また、これも“中小企業あるある”な話だと思いますが、運用やルールが決まっていなかったり、システムの足りない部分を手運用で補おうとしてリソースがひっ迫していたり、業務のほぼすべてが属人化している状態だったりと課題が山積みで、企業文化の違いに打ちのめされました。

 既存システムを継ぎはぎしながらデジタル化を進めてみたものの、担当者が退社してしまってよくわからない状態で構築がストップしている、といったものもたくさんあり、頭を抱えましたが、問題があることだけは明らかです。なので、現場責任者や社員一人ひとりにヒアリングして、業務一覧や売上が立つまでの流れを自分で書き起こし、修正し……といった作業をひたすら繰り返し、調達から販売に至る商流のすべてを可視化しました。その上で、ミスが発生しやすいポイントを見つけたり、今のパインバレーに足りないサービスを考えてシステム相関図を見ながら改修したりと、とにかく無我夢中で行動した1年でしたね。

藤原 経営戦略についても聞かせてください。

矢嶋 私が前社長から事業を引き継いだ2024年は、コロナ禍のバイクブームバブルが弾けた後だったんです。バブル時は売上至上主義でも乗り切れますが、業界の成長が止まり、減収が始まっている状況では筋肉質な経営体質に変えていかなければより厳しくなると感じ、「ランチェスター戦略」を取りました

藤原 具体的にはどんなことをしたのでしょうか。

矢嶋 端的にいえば、4Pと4Cの整理です。バイクは車種ごとに合うパーツが異なるものも多く、ECサイト上に実は約1万8,000点も商品が並んでいました。この中から1年間で一度もクリックされていないものを洗い出し、あえてSKUを減らすことでお客様が見たいものを探しやすくしました。スリムにすることができたら、今度は打ち出す商品を決めるためにMD会議を行っています。

 扱う商品(Product)の見直しをした後は、価格(Price)です。これは業界の中に入って知ったのですが、バイク用品は原価率が非常に高い商材で、利益を出すのが実はとても大変なんですよ。そのため、適正価格の見極めも行いました。

 チャネル(Place)は店舗と自社ECがあるのでそれぞれのオペレーションを把握し、分断されていた顧客IDの統合も行っています。新しく会員制度も作り、CRM施策もできるようになりました。

藤原 販促(Promotion)は、前述いただいたコンテンツ強化以外に何かされていますか?

矢嶋 リスティング広告を少し出稿していますが、最初の1年はコンテンツ制作を強化しようと優先順位をつけて取り組んできました。やっとオウンドメディアのコンテンツが揃ってきたので、SNSでの発信や拡散も行っています。今は、点と点がつながって線になってきたところです。中小企業なので多くのお金はかけられませんが、お客様の可視化やロイヤル化を進めていきたいと思っています。

※後編は、9月17日(水)7:00公開予定です※

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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