商品は“少しとんちんかん”が丁度良い?
ベイシアでは、さらなる商品拡大も進めている。これまでネットショップで対応していなかった医薬品の販売を、2025年7月22日に開始した。社内で薬剤師を採用、第1類医薬品まで取り扱う。また、もう少し時間はかかるものの、酒類の拡充にも注力していく方針だ。
「医薬品の販売を始めるとなると、数千ものアイテムが一気に追加されます。商品マスタをすぐに反映できる仕組みを構築していたことが、アドバンテージになりました。ここまで商品情報基盤を整備できたのは、Lazuli PDPをはじめ、外部パートナーの支援によるところも大きいです。これからも様々な分野のパートナーと一緒に、さらにアップデートして“売れる商品マスタ”にしていきたいですね」
具体的には、駄菓子のタグづけのように、顧客のインサイトを商品マスタに紐づけたいという。戸枝氏は「ここはAIの力を借りる領域」と語る。
「自分が検索していないにもかかわらず、しっくりくる商品が表示されるような仕組みを作りたいです。とはいえ、正確さの加減は難しいところ。少し気が利いているくらいが丁度良いと思います。あまりにも距離が近いと、かえって気持ち悪さを感じてしまいます。むしろ、たまにとんちんかんな提案がいくつか混じっているほうが自然でしょう。そこに気づきや楽しみがあるはずです」

過去の購入履歴や閲覧履歴から、顧客の好みを把握することは可能だ。しかし、パーソナライズされすぎると、顧客が興味のある情報だけしか出てこない。つまり、実店舗のような偶然の出会いを生み出すのは容易ではない。顧客に気づきを与える提案には、今手元にあるデータだけでは不十分だという。「改善の余地が多く残されている」と戸枝氏は意気込みを見せた。
そのほか、同社はスーパーマーケットならではの強みである実店舗との連携も重視する考えだ。アプリ予約は実店舗で受け取る仕組みだが、着実に成果が生まれている。
「実店舗だと、どうしても売れ残りなどが発生します。在庫ロスをできる限り防止するために、並べる商品の幅をあえて狭めているのです。そのため、非常に良い商品でも実店舗に置けないケースがよくあります。そんな商品も、アプリ予約なら取り扱えます。先日は、『Nintendo Switch 2』の抽選予約を、アプリを通じて行いました。これにより、店頭で顧客が何時間も並ぶのを防げます。従業員の手間も減り、Win-Winな関係を築けると思います」
こうした取り組みで同社が実現したいのは「いつものベイシア、だけど非日常」だ。“程よい距離感”で、顧客に寄り添える存在を目指す。