10年前の新規顧客 30%以上が今でもアクティブユーザーの理由
Love,Bonitoの強みは、顧客との長期的な関係構築にある。10年前に初めて商品を購入した顧客の30%以上が、今もブランドを愛用しているという。その理由について、まずはオフライン進出に触れなければならない。
元々、EC販売のみだった同ブランド。8年前の2017年にはじめて実店舗をオープンした。現在、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、香港、カンボジアで合計30店舗近く展開している。オフラインでもEC発ブランドならではの発想でデータを活用し、顧客との関係を強化してきた。
「通常、実店舗では顧客が“匿名化”する恐れがあります。その場で商品とレシートを渡して関係が終わることが珍しくありません。最初の実店舗を出店する際、このようなブラックホールに飲み込まれたくなかったのです。自社ECサイトなら、流入からチェックアウト、返品まで顧客の動きを追跡できる。実店舗でも基本に立ち返ろうと思いました」(Song氏)
そこで同社は、ロイヤリティプログラムを構築し、各顧客の全取引をオンライン・オフライン問わず一つのIDに統合した。Song氏は「オフライン取引であっても、約90%の顧客は“誰か”を認識できる状態」と話す。結果的に顧客に最適化されたコミュニケーションが実現でき、長期的な関係構築につながっている。
これが、パンデミックを乗り越える上でも役立った。当時のLove,Bonitoでは、オンライン・オフラインの売上がそれぞれ約50%ずつと、ちょうど良いバランスとなっていた。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、一気にバランスが崩れたという。そんな状況の中、一人ひとりの顧客にIDを振っていたことが功を奏した。
「顧客に直接連絡を取れる状態でした。『今はショッピングモールが閉まっているが、またLove,Bonitoに戻ってきてほしい』と、伝えられたのです。そのため、大きなダメージを受けずに成長を続けられました」(Song氏)
パンデミック後も、Love,Bonitoはオンラインだけの売り場に戻ることはなかった。Song氏によると、東南アジアではショッピングモール文化が強いという。顧客に寄り添ったブランドになる上で、オフライン進出は必然。実店舗でも独自路線の施策によって、魅力を発揮している。
「多くの女性客がパートナーと一緒に買い物をしに来ます。ところが、彼らは途中で飽きてしまう。そんなカップルのために、ショッピングモールと交渉して『パートナーベンチ』を設置しました。さらに、店内にもパートナーや家族がリラックスして過ごせるコミュニティスペースを設けています」(Song氏)
こうした施策が、TikTokでミーム化。「Love Bonito Boyfriend(Love,Bonitoの彼氏)」などと投稿され、思わぬ形でブランドの認知度と親近感を高める結果となった。これは、顧客の体験全体をデザインし、共感を呼ぶストーリーを生み出すことの重要性を示唆している。なかなか日本では見かけない取り組みではないだろうか。
@erika_alyana he carries all my shopping bags & even googles the other stores I wanna visit so we can go there 🥺
♬ this sound makes me feel so sickly single x - 🐐
Myntra、Love, Bonitoの取り組みは、日本国内でブランドを展開する企業にとっても、新鮮なヒントとなるはずだ。日本の企業にとって、従来のやり方を変えるタイミングが訪れている。