CS発足前に届いた顧客の声 対応の質を上げるきっかけに
──2018年の立ち上げ以降、多くの女性から支持を集めています。どのような想いでブランドを運営されているのですか。
岡田 「Her lip to」のテーマは「今着たい服」です。アパレルだけでなく、ランジェリーやビューティーなど多様な商品を取り揃えています。
当ブランド最大の強みともいえるのが、こだわり抜いた世界観とそれが反映された商品です。商品開発や施策の判断基準は、どうすればお客様が感動してくださるのか、良い意味で驚いてくださるのか。全チームが全力でお客様と向き合っています。
立ち上げ当初はEC販売のみでしたが、2022年に実店舗「House of Herme(ハウス オブ エルメ)」を、東京・表参道に出店しました。2025年2月には、愛知・名古屋に新たな直営店もオープンしています。また、実店舗の出店前から、定期的にポップアップショップを展開するなど、お客様とのリアルな交流も大切にしてきました。

──その中で、CS領域にとても力を入れていらっしゃいます。“コストセンター”と捉えられるケースも多いですが、どのような位置づけなのでしょうか。
岡田 非対面とはいえ、CSは重要な顧客接点です。単にお問い合わせに対応すれば良いわけではありません。“期待を超える体験の提供”が我々のミッションです。
私は約5年前に入社しました。今でこそ社員数は90人ほどいますが、当時は10人にも満たないメンバーでブランドを運営していました。そのため、お問い合わせへの返信が遅れてしまい、厳しいご意見をいただいた経験もあります。
リソースの拡充によって2020年にCSチームを発足してからは、スピードと質が改善されました。結果的に、今ではポジティブなご意見をいただくことが増えています。中には、長文で感謝の気持ちを送ってくださる方もいるほどです。日々、こうしたお客様の熱量を実感しています。
最近では海外からのお問い合わせも徐々に増えてきました。以前は海外のECチームが対応していましたが、現在は私たちCSチームが直接ご返信しています。日本のお客様と同じように、心を込めた対応をお届けしたいからです。
英語が堪能なメンバーがいるわけではないため、“人間らしさ”がきちんと伝わっているか不安に思うときもあります。それでも、お客様にとって価値のある対応とは何かを常に考えながら、できる限りのことをしたいのです。
──課題を解決する“以上”の価値を届ける。具体的には、どのようなコミュニケーションを取っているのですか。
岡田 当ブランドでは日曜日が新商品の発売日のため、土日にお問い合わせが増加する傾向があります。1週間に対応するお問い合わせ数は、平均で250〜350件ほどです。イベントが行われる際にはさらに増えます。それらに、マネジメントを行っている私を除いて5名体制で対応しなければなりません。
お客様の注文や配送に関するお困りごとは、迅速に解決する必要があります。一方で、新商品のサイズ感やコーディネートの相談も多くいただきます。ここはパーソナルな対応が求められるため、特に時間をかけて丁寧にご返信したい部分です。そのため、CSチームの中からウェブ接客の担当者を選出し、専任部隊を作って対応しています。
ウェブ接客の対応時には、あえて担当者の名前を出しています。専任スタッフとお客様との信頼関係を築けるからです。
──CSメンバーの“パーソナリティ”を出す、ということでしょうか。
岡田 そのとおりです。たとえば、CSメンバーが公式Instagramのライブ配信に登場することが増えました。CS部門は、お客様からすると普段顔を見られません。だからこそ、少しでもお客様に安心感を与えたいのです。
お問い合わせ対応の中で担当者の名前を出している分、ライブ配信中に「○○さんだ!」とコメントしてくださる方もいます。現在はリアルイベントにもCSメンバーが参加しており、お客様とより深く交流できる場が増えました。