テーマは「GAME CHANGER」 今年もAI活用が鍵を握る
NRFは、世界中の小売・ブランド・テクノロジー企業が集い、最新トレンドやビジネス戦略を共有する場です。2025年は175以上のセッションや様々な展示が行われ、約4万人が参加しました。

私も実際に本イベントに参加し、リテール業界の最前線で起きている変化を肌で感じてきました。特に印象的だったのは「AI」「D2C」「ライブコマース」「ソーシャルコマース」に関するトピックスが多く語られていた点です。小売・EC業界の進化が急速に進んでいると実感しました。
また、私が参加したセッションに共通していた内容があります。現在の小売業界が、極めて不確実性が高い状況に直面している、そして各社が解決策を求めているということです。
インフレや金利変動、地政学的リスク、労働市場の変動、消費者の購買行動の変化など、小売業界を取り巻く外部環境は目まぐるしく変化しています。セッションで議論されたのは、そんな不確実性によるネガティブな影響を最小化し、ポジティブな要素を最大限に活かす重要性です。そして、この変革を推進する中心的な役割を果たすのがAIだと強く感じました。こうした背景が、今年のNRFのテーマ「GAMECHANGER」につながっているのではないでしょうか。
オープニングキーノートでは、ウォルマートU.S.のCEOでありNRFの会長を務めるジョン・ファーナー氏が登壇。昨年のジェンスン・フアン氏に続いて、今年もNVIDIAからリテール&CPG部門 バイス・プレジデント ジェネラルマネージャー アジタ・マーティン氏を招き、AIを活用した小売の進化を伝えていました。
ほかにも、日本の小売企業やブランドが今後の戦略を考える上で役立つ数々のセッションが行われました。本記事では、皆さんが関心を持つであろう「小売とブランドの最新チャネル戦略」を軸にレポートします。
従来の小売・ブランドの役割分担は通用しなくなる?
従来は、ブランドが商品開発・ブランディング・価格戦略に注力し、小売が店舗体験の設計・商品ディスプレイ・従業員のトレーニングといった顧客接点を強化すると、役割分担が明確でした。しかし、近年はこの境界が曖昧になりつつあります。
小売はよりブランド化し、ブランドはより小売化する。このトレンドがNRFで強調されていました。特にD2C市場が成長したことで、メーカーなどが自ら販売チャネルをもって直接的に消費者とつながる動きが加速しています。
これらの変化により、ブランドと小売の関係性は複雑化し始めています。単なる商品供給・販売の枠を超えた新たなビジネスモデルの構築が求められているのです。では、これからのブランドと小売はどのような関係を築けば良いのでしょうか。