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AIによる顧客体験向上の事例が多数 NRF 2025レポート後編
前編では「小売とブランドの融合」をテーマに、D2C戦略の進化や小売事業者が独自のブランドを持つ動きについて考察しました。後編では、AIとリテールメディアに焦点を当てます。
まず取り上げたいのがAIの進化です。これは単なるトレンドではありません。パーソナライズドマーケティング、需要予測、在庫管理、カスタマーサービスの最適化など、小売の様々な領域で実用化が進んでいます。売上の拡大だけでなく、顧客体験のアップデートにもつながるでしょう。AIが私たちのビジネスをどう進化させるのか。NRF 2025で語られた事例とともに考えます。
AI×eコマースの可能性を語る際、特に注目されるのが「パーソナライゼーション」「サプライチェーンの最適化」「顧客対応の効率化」の三つの領域です。NRF 2025では、これらの分野におけるAIの活用事例が多数紹介されました。
“今”のニーズを的確に捉える レコメンドはどう進化したか
レコメンドといえば、従来は「この商品を購入した人はこれも購入しています」といった提案が主流でした。それが、AIによってより高度なデータ分析が可能となり、顧客一人ひとりに最適化された体験の提供が当たり前となりつつあります。顧客が求める商品を迅速かつ的確に提示できるようになりました。こうしたAI活用の成功事例として、NRF 2025で紹介されたのが次の事例です。
いかにスムーズにリピート購入できるか Domino's Pizzaの導線設計
Domino's Pizzaは、注文履歴やユーザーの嗜好データを活用し、AIが最適なピザを提案するシステムを導入しています。過去の注文パターンを分析。顧客が迷う前に好みに合ったピザをレコメンドすることで、注文プロセスを簡略化に成功している例です。
また、ワンクリックで過去の注文を再購入できる機能も提供しています。顧客がよりスムーズにリピート注文できる仕掛けの一つといえます。
米スーパーのSam's Clubに学ぶ日用品ならではのレコメンド術
ウォルマートの会員制スーパーマーケット・Sam's Clubは、顧客が頻繁に購入する商品を自動でレコメンドする「スマートオーダー」機能を強化しています。これは、購買履歴や購入頻度を分析し、最適なタイミングで必要な商品を提案するものです。スーパーマーケットで取り扱われる食品や消耗品など、リピート購入が多い商品カテゴリーでは特に高い効果を発揮します。
加えて、AIが各顧客の購入サイクルを学習し、無駄なく効率的な買い物ができるようサポートすることで、さらなるリピート率向上に挑戦しています。