最短でも年単位? データ活用の仕込み期間・進め方はどう見繕うべきか
データから顧客理解を深めるには、定量データと定性データを行き来するような考えも重要だ。前出の接客ログは、定量データから見えた示唆を答え合わせする際にも有効活用できる。近年はAIを使ったテキストマイニングの技術も向上し、膨大な定性データからOne to Oneのアプローチに適した文言やレコメンド内容を提案してくれるツール・機能が出てくる未来もそう遠くはないだろう。
ただし、データ分析は『始めたい』と思った瞬間から開始できるものではない。分析に必要なデータが蓄積され始めたところからが本番だ。そう考えると、少し先のスタンダードを見据え、早く動き始めるに越したことはない。
「データの量と質が及第点になり、かつ社内にデータ活用の文化が浸透するところまで踏まえると、どんなにスムーズに物事が運んでも1年ほどはかかるでしょう。たとえば店舗数や社員数が多く、リテラシーのばらつきがあるなど不安な場合は、指揮を執る本部の目に届く範囲の店舗や一定の役職以上など小規模な範囲から始め、全体に広めていく際の注意点の洗い出しや、マニュアルの整備をしつつ進めるのもお勧めです」
データが返品ポリシー改善の勇気をくれた パルのNPS分析アプデ例を紹介
定量・定性データとチャネルをまたいだデータ分析や、顧客理解を進める例として、山崎氏はアパレルメーカー 株式会社パルの事例を紹介した。
「同社は、CRM施策を実施するために『カスタマーリングス』を使っていましたが、『3COINS』のSNS分析を行うために追加で『見える化エンジン』の活用を開始しました。以前よりNPS(Net Promoter Score)の調査を実施していましたが、人力で集計を行っていたため、全体数値を見るだけに留まっており、売上を大きく伸ばす中で分析の高度化の必要性を感じたそうです。
SNS施策やEC展開による売上が好調な中で、より顧客の『生の声』を重視し、商品企画やリスクヘッジを行いたい。かつ顧客の正確な姿を捉えるために、店舗とECチャネルを横断的に見ていきたい。こうした考えからSNS分析に加え、NPS分析のアップデートを図り、見えた示唆から予約商品の返品ポリシーを改善するなどのアクションにつなげているといいます。売上やオペレーションの変更に関係するこうした改善も、データを基軸に考えられれば判断の精度を高められます」