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データ×ホスピタリティで体験向上 CRMの可能性に多くの人が気づいた2024年
コロナ禍の反動によって起きたリアル回帰の動きも定着し、店舗・ECチャネル双方で集めたデータをどう見える化し、活用していくかが問われた2024年。個人のスキルに頼り切らない接客の平準化や、愛されるブランド・店舗になるためにどう店舗接客・CSの応対品質を向上できるか、ホスピタリティだけではカバーできない部分を磨き込む手段として、「データ活用のOMO化が進んだ1年だったと思う」と山崎氏は振り返る。
「当社のクライアント企業からも、店舗接客時の顧客との会話内容、行動ログ、購買履歴やCSでの対応をまとめて閲覧できるデータハブとして『カスタマーリングス』を活用したい、といった要望が増えてきました。
特に店舗の売上比率が高い企業・ブランドは、EC売上を拡大する中でデータの見える化がもたらす事業メリットに気づいたのでしょう。店舗スタッフの記憶や店舗ごとに紙で共有されていた『見えないデータ』の可視化からデータ統合・分析が進めば、たとえば店舗接客時に検討していた商品に関するクーポンを個別に送ったり、顧客の好みに合った商品が入荷したらメールで通知が届くようになったりと、接客レベルをさらに上げられます」
「2025年の崖」という言葉のとおり、近年はあらゆる企業・ブランドがシステムの老朽化にともなう仕組みの見直し、変更を強いられている。これまで基幹システム起因で新しいツール導入が難しかった企業・ブランドも、「体験のアップデートに踏み切りやすいタイミングであることが見受けられる」と続ける山崎氏。現在進行系で相談・構築をしている案件もまだ多く、具体的な事例を紹介できるのはこれからという段階だが、データ活用の文化を全社に浸透させる上での注意点を教えてくれた。
「eコマースやマーケティングの知見がある方は、データを使って顧客の姿を想像し、アクションを起こすことに慣れているかもしれませんが、店舗スタッフには分析ツールの使い方やダッシュボードの見方、データの扱い方から教える必要があります。
本部がモニタリングすべき数値を設定して、店舗に『とりあえず見ておいて』と伝えるケースをよく見かけますが、これは非常にもったいないです。せっかく同じ目線で会話ができる環境を構築したわけですから、店舗側からもCRMのアイデアを出したり、アクションを起こしたりできるよう、データを扱える側からリテラシー向上に向けた働きかけを行いましょう」
もちろん、店舗スタッフの本業は店頭接客や運営であるため、業務の優先順位を変えるのは難しい。そんな中でデータ活用の文化を根づかせるには、簡単に見られる仕組みと「そのデータを使うと結果につながる」といった成功体験作りも欠かせない。
「『使えないデータだね』と思われてしまっては、利活用も進みません。『データを見れば答えが見えてくる』『思いがけない発見がある』と思えるような、実用性のあるダッシュボードを作り上げましょう。そのためには、専門部署だけで設計をするのではなく、現場の声も取り入れていく必要があります」