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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

EC化率上昇の鍵を握るBtoB-ECの変革に迫る

約5.6万SKUを扱うLIXILストア お手本ない中で進めたEC統合・販路整備の苦悩と発見に迫る

 2023年4月に、株式会社LIXILが既存のECサイト「LIXILオンラインストア」と「LIXILパーツショップ」を統合し、公式通販サイト「LIXILストア」をオープンした。2011年に建材および住宅設備機器を扱う企業5社が合併して生まれた同社は、幅広い商材と販路を有するいわゆる「BtoBtoC企業」だが、ECサイト統合は次世代を見据えた戦略の一つだという。同社は今、EC化による各事業部の理解促進と販路の整備にどう取り組んでいるのか。共通IDにひもづけた顧客行動・購買データの蓄積やコミュニケーションの集約、取扱商材の拡張など、現在進行系で取り組むこととその先の未来について、マーケティング部門 カスタマービジネス統括部 D2Cビジネス推進部 リーダーの西脇彩氏に聞いた。

合併→全社DX、CX・EX向上の流れで必然だったEC統合

 LIXILが2023年4月に正式オープンした公式通販サイト「LIXILストア」が好調だ。同サイトの立ち上げに携わり、現在は売上向上と商材拡張をミッションとするD2Cビジネス推進部でリーダーを務める西脇彩氏によると、2022年度に前年比+8%だったeコマース売上高が、2023年度には後述する浄水カートリッジの直販化も相まって前年比+30%にまで上昇。2024年度も、前年比+11~12%の推移を目指して取り組みを進めているという。

 LIXILストアが生まれた背景には、全社的に進めているDXが関係している。統合前のLIXILのEC販路には、消費者目線で見ても、運営に携わる当事者としても様々な課題を有していたと西脇氏は振り返る。

「LIXILは、2011年にトステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア、サンウエーブの5社が合併して設立された企業です。合併前は当然、企業ごとに独自の基幹システムを運用しており、ECサイトも運営している企業もありました。

 企業として一つになっても、しばらくは合併前の企業や商材ごとに固有のシステムが稼働しており、消費者目線では同じLIXILの商品を購入したくても、商材ごとにアクセスするサイトがバラバラで会員登録が必要という状況でした。運営側からしても、会員情報をバラバラにもっているため、顧客分析ができません。CX(顧客体験)もEX(従業員体験)も整っていない状況だったのです」

株式会社LIXIL マーケティング部門 カスタマービジネス統括部 D2Cビジネス推進部 リーダー 西脇彩氏
株式会社LIXIL マーケティング部門 カスタマービジネス統括部 D2Cビジネス推進部 リーダー 西脇彩氏

 DX推進を始める以前のLIXILは、事業の中枢を担う基幹システムの複雑化に起因する形で、注文データを処理する社員の負担も大きくなっていた。こうした状況を改善すべく、2016年度から全社を挙げた抜本的な改善に着手。西脇氏は、2018年に楽天(現・楽天グループ)から転職し、プロジェクトチームにアサインされた。

「住宅・建築の業界は裾野が広く、また歴史のある業界です。そのため、過去の慣習やルールなどが多く、電話やFAXなどでやり取りをする業務がまだ残っているなど、デジタル化やDXの広がりが比較的遅い業界となっています。そのような業界で、私は過去の経験を生かしつつ、貢献できればと考えました」

耐用年数の長い商材だからこそ、顧客把握を極めたい

 LIXILが描くEC戦略は、LIXILストアをオープンして終わりではない。同サイトオープン以前の2018年より運営されている、「My LIXIL」という共通IDを軸とした会員管理を実現すべく、「現時点ではまだ別サイトとして存在する各グループ会社のECサイトや、海外展開するブランドのサイト統合も視野に入れている」と説明する西脇氏。将来的な要件も見据えて選んだカートは、Adobe Commerceだ。

「LIXILが扱う住宅設備や建材は、家を建てた後、長年にわたって利用される商材です。購入いただいたお客様との信頼関係も、長いスパンで継続する必要があります。そのため、動向把握やタイミングに合わせた適切なメンテナンスなどのお知らせができるよう、共通IDを整備しました」

 共通IDで管理すれば、LIXILが提供する各商材やサービスの利用動向を横断的に把握できる。すると、自宅に導入した住宅設備が故障する前にメンテナンスや部品の交換を促したり、導入設備の品番を把握した上で適した部品を提示したりと、売り場の利便性向上だけでなく、適切なタイミングでのアドバイスも実現可能だ。

「継続的なコミュニケーションを図れば、長く商品を使ってもらえますし、万が一故障による買い替えが発生する場合も、ブランドスイッチを防げます。まだ実現できていない点も多いですが、ゆくゆくは商品マスタと連携して、こうしたサービス提供も行っていきたいと考えています」

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この記事の著者

岩崎史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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