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前回、「EC事業のKSF(重要成功要因)がリピートである」とお伝えしました。リピートを増やすために何よりも重要なのが、「強いファン」の創出です。新規開拓ばかりに自社のリソースを投入すると、大抵の場合は顧客獲得コストがその顧客がもたらす利益を上回り、結果的に収益性が下がります。一方、根強いファンが存在するブランドは、リピーターが多いです。顧客の継続率が高く、強固な収益基盤をもっているといえます。
そこで今回は、強いファンを創出するために必要なコンテンツとその届け方について、私が経験した具体例とともに解説します。
そもそもコンテンツのおもしろさは何で決まるのか
「コンテンツには本質的で合理的な価値と“おもしろさ”があるべき」という点は、どの事業にも共通しています。おもしろさとは「何らかの意外性」、つまり「なるほど、そうだったのか!」と思ってもらえることです。人はおもしろいことを誰かに話したがるため、口コミでも広まりやすくなります。難易度は高いものの、おもしろさを突き詰めるのは非常に重要です。
一方、BtoCとBtoBでは、何を優先して購入するかに決定的な違いがあります。法人は組織であり、営利団体がほとんどです。「利益にどれだけ貢献するか」という目的に対して、合理的な意思決定が求められます。しかし、個人は金銭的なメリットだけでなく、自身の感性や好みで商品やサービスを選びます。
つまり、BtoBでは合理的な価値や差別化(なぜ他社より優れているのか)が求められ、BtoCでは「いかに共感できるか」という情緒的価値の訴求が求められるのです。
以前私が取締役を務めていた土屋鞄製造所は、「日本で本革製品を作る」「日本の職人文化を守る」という想いやこだわりを積極的に発信しています。共感を得て強いファンが生まれている好例です。
また、私が過去に創業した中国・台湾茶葉のEC事業でも、「店長仕入れ日記」や「創業ストーリー」をコツコツと作り続けました。結果的に高いリピート率につながったのは、前回お伝えしたとおりです。
これらの事例では、一人ひとりの感性に訴える画像やコピーなど、クリエイティブを工夫した点も成功要因だと考えられます。
自社の価値を思い込みで決めつけない 最低10人にヒアリングを
コンテンツとは、自社の顧客や潜在層が目に触れる情報すべてを指します。オウンドメディア、YouTubeなどの動画、デジタル広告、オフライン広告(テレビや雑誌、新聞など)、ウェビナー・セミナーなどで伝える情報、広報PR施策によるメディア掲載などが代表的な例です。また、従業員が普段発している言葉や、営業時に活用する営業資料もコンテンツといえます。この中から、何をどう発信していくか。それを考え、実行していきましょう。
本当に良いコンテンツが生まれると、既存顧客同士や既存顧客と潜在層の間で「口コミ」が発生します。広告費をかけずとも、商品やサービスが広がっていくのです。コツをつかめば、口コミを意図的に創出することも可能となります。
では、顧客に響くコンテンツとは何か。その答えは、「自社が提供している最も重要な価値は何か」を徹底的に追求することで得られます。具体的には、次のような項目です。
- 顧客が本当に欲しいと思っている価値
- 顧客が自社商品・サービスを活用することで助かっていると感じていること
- 顧客の何に自社商品・サービスがどう貢献しているのか
ただし、何も情報がない中でこれらを追及しても、自社の思い込みで終わる恐れがあります。自社の重要顧客、もしくは重要顧客になり得る候補、最低10人(10社)にヒアリングしましょう。次ページで、具体的な事例とともに説明します。