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既存事業が成長する余地はまだある
私は、よくEC事業者のクライアントから次のような相談を受けます。
「これまでは順調に成長してきた売上が伸び悩んでいる」
「競合が多い」
「自社の潜在顧客のほとんどが顕在化した」
これに対して、私は「既存事業をずらしてみてはどうでしょう?」とよく提案します。完全な新規事業というと、少し構えてしまうかもしれません。既存事業を“ずらす”程度であれば、比較的難易度は低く、また成功確率もグンと上がります。
では、既存事業をずらすとは何か。典型的なパターンだと「商品・サービス軸をずらす」と「顧客層をずらす」の2つがあります。
商品軸をずらし続けて黒字化に成功
私は2000年に高級中国茶葉のEC事業を創業し、最終的に黒字化した上で、2004年にサイバーエージェントに売却しました。そのレベルにまで成長できた要因の一つは、間違いなく商品軸をずらし続けたことにあります。
当時、私が調べたところ、日本の家庭で消費される飲料はお酒・ジュースを除けば珈琲、紅茶、日本茶が大半でした(今でもそうでしょう)。これが、商品軸を他社とずらして、ほぼ競合がいない高級中国茶葉に着目した理由です。当時は珍しく、順調に売上と利益を伸ばせました。資金や人的リソース、ブランド力もない状況だったため、私は他社と戦わない“弱者の戦略”をとったのです。
しかし、ニッチ商品なだけに、3~4年もすれば売上の天井が見えることは予想できます。中国茶葉は数千種類もあり、実は非常に奥が深いのですが、それでも顧客を飽きさせない工夫が必要です。そこで、顧客に「まとめ買い」を促進するためにも、台湾茶、世界の健康茶(痩身なども含む)と、商品軸をずらして事業を成長させました。
純粋に香りや味、文化を楽しむ中国茶や台湾茶に対して、健康茶はダイエットや花粉症の改善など、目的や購入層が明確に違います。さらには、専用の茶器や茶菓子と、販売する商品をずらし続けることで、売上・利益の成長を実現できました。
よく考えると、顧客もずっとお茶ばかり飲んでいられないので、食べるものや飲食以外の商品もあったほうが、買い物がしやすいですよね。