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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECホットトピックス

福井で100年以上続く「増永眼鏡」がOMOに見出した可能性 中小メーカーに求められるアップデートとは

 福井県の名産品といえば、眼鏡だ。中でも、長い歴史をもつ1905年創業の増永眼鏡株式会社を知っているだろうか。確かな技術力で国内外にファンを抱える同社は、老舗でありながらEC運営やデジタル技術の活用、OMO推進に注力し、新たな顧客との出会いを創出している。何がその原動力なのか。営業部 デザイン室の深川真帆氏に聞いた。

「歴史」だけではブランドの良さが若年層に伝わらない

「当社は、良いめがねをつくるものとする。できれば利益を得たいが、やむを得なければ損をしてもよい。しかし常に良いめがねをつくることを念願する」

 この社是のもと、100年以上にわたって福井県の地場産業を支えている増永眼鏡。金型・治具づくりからプレス、研磨、表面処理など、全工程を自社で行う一貫生産を続けてきた。現在は、「タイムレスエレガンス」をコンセプトとする「MASUNAGA since 1905」、「KENZO」の創業者・高田賢三氏によるラグジュアリー・ライフスタイルブランド「K三」とコラボレーションした「MASUNAGA | K三」をはじめ、4ブランドを展開している。商品のほとんどは5万円から10万円と、決して安いとはいえない。それでも根強いファンが多く、顧客の7割がリピーターだ。

 そんな増永眼鏡が、2年ほど前から本格的なブランディングに乗り出している。2014年から運用しているMASUNAGA since 1905の公式Instagramに加えて、2022年11月には直営店「MASUNAGA1905」の自社ECサイト公式Instagramを開設。YouTubeで75万人以上のチャンネル登録者数(2024年6月時点)を抱えるヒューマンビートボクサー、SHOW-GO氏とのコラボレーションも果たした。2023年に増永眼鏡の公式YouTubeチャンネルで公開された動画は、100万回再生を超える人気ぶりだ。

 既に熱いファンから支持を得ている同社だが、なぜ今ブランディングに注力しているのだろうか。そのきっかけは、海外における知名度の高まりだった。

「元々、当社は一般的なフレームの眼鏡を中心に製造していましたが、2009年に既存シリーズのデザインを刷新し、新シリーズ『光輝』として発売しました。すると、パリの伝統的なセレクトショップ『コレット』でオーダーされたのです。徐々に海外で『MASUNAGA』の名が浸透したことから、コンセプトを作りこんだデザイン性の高い商品展開へ切り替えました。その後、ブランドイメージをしっかりと発信していく方向へ舵を切ったのです」(深川氏)

「光輝 104」
「光輝 104」(クリックすると拡大します)

 増永眼鏡は、自社ECサイトを立ち上げるまで、国内においてPR活動をほとんど行ってこなかった。「老舗だから良い商品をそろえているだろう」と認識するファンが多かったからだ。しかし、深川氏は「新たな顧客層へ訴求するには、歴史だけでは不十分」と話す。

「海外の顧客層は20代から30代がメインである一方、日本の顧客層は主に40代です。若年層からの認知度が低いことを、以前より自覚していました。価格が高いため『今は買えない』という人にも、まずはブランドの存在を知ってほしいです。そのために、年を重ねたとき当社の商品を手に取りたくなるような『憧れ』のイメージを発信しています」(深川氏)

 こうした取り組みにより、オンライン上では増永眼鏡に関する口コミが増えたという。X上には「元の眼鏡に戻れる気がしない」「最高のかけ心地と見え方」といった声が並ぶ。

実店舗や自社ECサイトの訪問者数が増加し、売上規模もこの2年で1.5倍になるなど、効果を実感しています」(深川氏)

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/14878 2024/06/19 07:00

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