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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

押さえておきたい!ECトレンド図鑑(AD)

省庁も課題とするAmazon対策 越境EC売上拡大を目指すなら知っておきたい六つのポイント

 インターネットの発展とともに、情報やものの動きにおける「国境」はほぼ存在しない状態となりました。日本でも、アパレルやコスメなどを海外ECサイトから購入したり、反対に海外から日本のコンテンツや製品が支持され購入されたりと、越境ECが活発化しています。本記事では、2007年からこの市場に携わり、現在日本越境EC協会(JACCA)の専務理事を務める川連一豊氏が「越境ECで成功するまでにぶつかる課題」を六つの観点から解説。特にこれから海外進出をもくろむ方、販売しているが思うような成果をあげられていない方は必見です。

越境ECはもはやただの「ブーム」ではない

 2008年頃から、何度かブームを迎えては課題にぶつかってきた越境ECも、山谷を乗り越えるうちに重要なインフラになってきました。特にグローバルで見た際に数字のインパクトは大きく、今後の予測を見ても非常に成長する領域だとされています。

 経済産業省が2013年に発表した『平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査) 報告書(PDF)』では、2020年の市場予測がこのようになされていました。

「越境EC市場規模のポテンシャルは、最大2兆3,181億円」

 ところが、2021年の数字を見ると実際には約7兆規模にまで成長しています。想定の約3倍となったのです。

越境EC市場は約10年前の想定以上のスピードで拡大している

経済産業省『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書(PDF)』を基に、日本越境EC協会(JACCA)が作図(※クリックすると拡大します)

 これは、日本・米国・中国だけに限った話ではありません。経済産業省『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』では、2019年の世界の越境EC市場規模について7,800億USドルと推計。その値は、2026年に4兆8,200億USドルにまで拡大すると予測されています。

世界の越境EC市場も拡大している
『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』を基に、日本越境EC協会(JACCA)が作図(※クリックすると拡大します)

 また、Report Oceanが2022年に発行したレポートでは、2022年から2030年までの世界の越境EC市場は年平均成長率26.2%を記録すると考えられていることからも、今後より国をまたいだEC取引は進んでいくでしょう。

 近年は、世界規模で小売分野のEC化が進んでいます。世界のBtoC-EC市場規模は2019年に3.35兆USドル、EC化率は13.6%となっていましたが、2024年にはそれぞれ6.39兆USドル、21.8%にまで上昇するといわれています。こうした動きからも、ECを前提とした商品販売の在り方が一層問われる時代になりつつあることがうかがえます。

言語・法律・物流課題 日本企業はどう向き合うべきか

 ここからは、2007年から越境ECに携わってきた私が、常々感じている越境ECの課題点や問題点をご紹介します。日本の企業が国際市場での競争力を高め、成功を収めるには、これらの課題を理解し、対策を講じることが重要です。

 今回は、六つの課題点とその解決方法をご提案します。日本の越境ECの現状を把握するため、自社がより良い成果を収めるためにも、ぜひ参考にしていただければと思います。

1. 言語と文化の壁

 まずご紹介するのは、言語と文化の違いについてです。海外に向けて販売をする際には、商品情報やカスタマーサポートを多言語で提供する必要があります。ターゲットとする市場によっては、英語だけでなく、中国語、スペイン語など、複数の言語への対応が求められます。

 昔はここが越境EC市場進出の大きなハードルとなっていましたが、言語の問題はDeepLやChatGPTなどのAIが進化し、かなりカバーできるようになってきました。活用する上でコツをつかむ必要はありますが、もうAIで十分対応可能な領域になりつつあるといえるでしょう。

 越境ECを実施しているとしみじみと感じるのが、文化的な違いです。各国の文化や消費者の好み、購買行動を理解した上で販売するように心がけましょう。たとえば、色の意味合いやサイズ感、祝祭日など、文化に根差した違いに適応する必要があります。ここは販売すればするほど、大きな差を感じるところです。

 日本のECサイトから商品を買う海外顧客は、日本文化が好きなケースも多いため、画像内のキャッチコピーは日本語のままでも問題ありません。ただし、商品説明やスペックは進出国の言語に対応する必要があります

 たとえば、フランスやドイツで販売する場合、英語のECサイトだけを用意してもやはり売れません。フランスのユーザー向けにはフランス語、ドイツのユーザー向けにはドイツ語で表示できるようにしましょう。これは欧州に限らず、他の国・地域でも同様です。

2. 法規制と関税の問題

 恐らく、初めて越境ECに取り組む上で一番悩むのは、法規制の複雑さです。各国の輸入規制、消費税、関税制度など、国際法の適用が複雑であり、これらを遵守する必要があります。

 ちなみに、日本に入ってくる商品の関税の決め方や、いつ関税が決められるのかなどは、財務省の関税担当者も予測ができず、判断を悩むほどです。新たに越境EC市場に進出するのであれば、なおさらここは情報収集をして、慎重に検討することをお勧めします。

 なお、商品の種類によっては、高額な関税が課されることがあります。たとえば、体温を測る測定機とアルコール噴霧器が一緒になった機械は、どのカテゴリーにあたるのかによって、関税がかなり変わります。販売価格に影響を及ぼす要素となるため、関税がいくらかかるのか事前に把握した上で販売を始めましょう

 ちなみに、米国は州によって関税が変わりますし、EU(欧州連合)ではVAT(付加価値税)が必須です。このあたりの手続きの煩雑さも、越境ECに取り組む上では大きな課題となります。

 特に、食品やお酒は要注意です。国によって考え方や法律が大きく違いますので、念には念を入れて確認しましょう。昨年、米国食品安全強化法(FSMA)のFSVP規則が突然変更されたこともありましたし、確認して出荷したにもかかわらず、船で商品を配送中に規制が変わってしまった事例も存在します。

 私のもとにもお酒、特に日本酒の越境ECを検討する企業から相談をいただきますが、お酒の輸出は簡単に考えてはいけません。国レベルでどんな話がされているのか、越境ECを始めてからも絶えず確認する必要があります。

3. 物流と配送の課題

 国際配送は高額なコストがかかるため、特に小規模なECサイトにとっては大きなコスト負担となります。最初のうちは、最も効率の良い1立方メートルの配送から進めることをお勧めします。

1立方メートルの図
運ぶ商品を1パレットにまとめて混載便で配送すると最も効率が良くなる(※クリックすると拡大します)

 配送会社選びも注意すべき点です。いつも頼んでいる配送業者が国際配送に対応している可能性もありますが、「実は国際配送はほぼ初めて」というケースも存在するので、慣れているところを選ぶようにしましょう。

 また、Amazonの各国のFBA倉庫に商品を入れる場合は、それぞれのレギュレーションをしっかりと把握しなければなりません。見積もりを取って「安い」だけを理由に決めるのはNGです。必ず取扱商品の実績を確認し、金額などのエビデンスを取った上で決断してください。

 顧客体験と密接に絡む配送日数も、配送会社と連携してリアルタイムで状況把握することが大切です。最近では地政学的な問題もあり、「1ヵ月たったのにまだ商品が相手国に入らない」といったことも多々あります。中国では注文から72時間以内に届ける必要がありますので、どのようなフローで商品を届けるかは、事前にしっかりと検討すべき事項です。

 越境ECでも考えなければならないのが、返品・交換の取り扱いです。品質保証ができている商品であっても、国際配送時や各国の倉庫の扱いによっては、壊れてしまうケースが多々あります。国際的な返品・交換プロセスは複雑でコストがかかるため、いかに効率的に処理するかも課題です。廃棄か寄付するフローを構築するケースがほとんどですが、日本国内の配送と異なる対応をする際には、社内的な調整も必要になります。

決済・マーケ・プライバシー保護 全方位の対応が必須に

4. 支払い方法の多様性

 越境ECは、ものを送る際の課題だけでなく、決済手段にも目を向けなければなりません。クレジットカードだけでなく、中国向けであればAlipayやWeChat Payなどのモバイル決済、といったように、地域特有の決済手段への対応が求められます。各国で好まれる支払方法を調べて対応しなければ、購入促進をしても成果につながりません。

 世界には多くの決済手段があります。為替も踏まえて選択する必要がありますが、支払や振込方法については、「Payoneer(ペイオニア)」や「Global-e(グローバルイー)」といったサービスもあるため、こういったサービスを利用するのであれば、あまり心配しなくても良いでしょう。

5. マーケティング戦略への適応

 越境ECでものを売るには、地域ごとのリスティング広告やディスプレイ広告、SNSの選択、インフルエンサーマーケティングの適応など、その国の顧客に合わせたマーケティング戦略が必要となります。

 越境ECを始めて驚いたこととしてよく挙げられるのが、「リスティング広告の単価の高さ」です。日本の単価を基準に考えるのは大きな間違いで、ざっくり見積もっても日本の2倍から3倍程度の費用が発生します。インフルエンサーへの依頼も、日本との費用感の差はもちろんのこと、実績も含めて慎重に検討したほうが良いでしょう。「インフルエンサーに頼めばうまくいく」というスタンスではいけません。

 ブランドの認知度向上は、当然ながら時間とコストがかかります。また、世界を相手にブランド認知を獲得するのは、容易ではありません。どのようにしてブランドを際立たせ、信頼を築くか、課題を明確にした上でしっかりと向き合っていきましょう。

 越境ECで成功している企業を見ると、企業名や商品名が日本語のままであるケースが多いように感じられます。「日本ブランド」を上手に活用するのも一つの手といえます。無名ブランドの商品は、国内EC以上に購入までたどり着いてもらうのが難しいです。ブランディングの課題とも、しっかりと向き合っていかなければなりません。

6. データプライバシーとセキュリティー

 越境ECに挑戦する際は、データ保護法で有名なGDPR(EU一般データ保護規則)など、各国のデータ保護法規に準拠する必要があります。また、顧客データの保護とセキュリティー対策は、信頼されるECサイト運営に不可欠な要素です。Amazonでも、国ごとのプライバシーポリシー入力が必要ですし、自社ECサイトを構築する際にも、各国の法律や規制に沿った情報を掲載したページやそれらに準拠したシステム構築が求められます。

「Amazon対策」と依存からの脱却が今後の課題

 これらの課題に対し、私はこれまでコンサルタントの立場から解決方法や対策を提示、実施していました。しかし、近年越境EC流通額が急増する中で、従来と明らかに異なる変化が見られるようになっています。

 財務省の関税担当者からは、「越境ECの流通額が増え過ぎて、対応が後手後手になっている」といった声を耳にしますし、越境ECのコンサルティングをする人々の間でも「業界全体でノウハウ提供や解決方法の提示、最新データを使った検討会などを行う必要があるのではないか」といった意見が出てきました。

 そんなタイミングで、私は日本越境EC協会(JACCA)を一緒に立ち上げた恩蔵優氏と出口允博氏に出会います。恩蔵氏は、ハワイから日本への商品輸出をはじめ、米国への輸出入に関するノウハウと実績を多数もっています。出口氏は中国や東南アジアに強く、日本→世界に向けた越境ECの話を中心に、議論を交わすようになりました。全員が長年越境ECの推進に関する課題を抱えていて、どうすべきか何度も考えた結果立ち上げたのが、同協会です。恩蔵氏が代表理事を務め、出口氏と私が専務理事に就任することになりました。

 財務省の関税担当者いわく、今のポイントは「Amazon対策」だそうです。私自身が企業の越境EC展開をお手伝いする中でも、Amazonの販売力のすさまじさは痛感しています。米国を中心に、カナダやメキシコといった北米、イギリスやドイツ、フランスなどの欧州でも商品が売れています。

 特に、自社で越境EC展開をするリソースや知識が限られている小~中規模の企業にとって、Amazonは重要な越境ECの窓口として機能します。Amazonは、越境EC展開を進める初期段階の企業が成長を加速させる上で、強力なプラットフォームであることは間違いありません。

 その一方で、Amazonに依存しすぎることによるリスクも自覚しなければなりません。「ネッシー」と呼ばれる監視プログラムの運用と、それによる制裁の疑惑がその一つです。

 今後、越境EC売上を上げたいのであれば、固有のプラットフォームに依存せず、多様な販売チャネルやマーケティング戦略をもつ重要性が高まっていくと考えられます。日本の企業が越境ECを通じて持続的な成長を遂げるには、固有のプラットフォームがもつメリットを最大限に活用しつつも、市場の変化に柔軟に対応できる戦略構築が欠かせません。

越境ECに関する学びの場を提供するJACCA

 日本越境EC協会(JACCA)は、こうした背景を踏まえた上で、日本企業が越境ECを通じて海外市場に進出するための支援をしています。越境ECに関する最新情報、ノウハウ、セミナー情報を提供するだけでなく、これらの知識を体系的に提供し、会員企業が直面する課題に対する解決策を提示したり、定期的に開催するセミナーやワークショップでトレンドや成功事例の共有したりといった活動も盛んです。これらは、企業が越境ECの戦略を練る上での貴重な学びの場となっているという声もいただいています。

 繰り返しになりますが、日本の越境EC市場は今後も大きな成長が期待されている一方で、まだ多くの課題や問題があるのも事実です。豊富なノウハウの提供やセミナー、ワークショップの開催を通じて、日本越境EC協会(JACCA)は日本企業がグローバル市場で成功を収めるための土台を築きます。市場の中でますます重要な存在となっていくよう活動してまいりますので、興味がある方はぜひ私たちにお声がけください。

越境EC進出・売上拡大の課題を抱える方をお助けします

 日本越境EC協会(JACCA)は、越境ECを推進する日本の企業や、こうした企業を支援する方々が集まる協会です。興味をお持ちの方は、ぜひイベント・セミナー情報お問い合わせフォームからご相談ください。

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提供:一般社団法人日本越境EC協会

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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