悩み相談をあえてAIに 小林製薬のCXコマース事例
岩崎氏は、CXコマースの特徴を踏まえ、共感によるポジティブな購入動機の醸成に成功した一例として、AIチャットボット型のウェブ接客ツール「命の母AIお悩み相談」を紹介した。これは、小林製薬が提供するサービスだ。女性の更年期障害や生理、PMSなどデリケートな悩みを聞き、寄り添うことに重点を置いた取り組みである。
電通グループは、お悩み診断などのコンテンツを提案する中で、小林製薬よりAI活用の相談を受けた。しかし、顧客に対して一方的にアドバイスや商材レコメンドを送付しても、提供価値として十分ではないと分析。そこで、改めて顧客の悩みの深さ、インサイトに着目したという。
「デリケートな悩みを吐き出せる場として、悩みの傾聴を重視することにしたのです。AIの特性上、何度同じ相談をしても、嫌な顔をしません。人よりAIのほうが気軽に相談できるのではないかと考えAIを使ったお悩みチャットボットを展開したところ、体験した顧客のEC購入ページ送客率が、体験していない顧客と比較して10倍以上になりました」(岩崎氏)
命の母には歴史があり、認知・信頼度もあった。その十分な実績に付加価値を提供。CXが顧客とブランドをつなぐ役割を果たした。
一気通貫でストーリーを演出する3つの方法
岩崎氏はCXコマースの演出について3つのポイントに言及する。1つ目は、出会いのインパクトだ。
「広告クリエイティブや体験会など、自分向けの商品と感じてもらえるような、商品との特別な出会いを演出します。私自身、好きになった商品は、最初の出会いを覚えています」(岩崎氏)
2つ目は世界観に引きずり込むこと。
「このブランドに任せれば、自分のしたいことが叶うと感じるような期待感、わくわくする購買体験を提供します」(岩崎氏)
3つ目は、周囲の人に語りたくなるネタの提供だ。岩崎氏は「その商品の気に入っているところ、独特な成分や製法など、語りたくなるポイントを提供する必要がある」と説明する。
CXコマース実現のためには、商品を認知した顧客のロイヤルカスタマー化に向け、実に多くの顧客接点を一気通貫で展開しなければならない。社内の部署を超えて、一貫したストーリーの演出が必要になる。岩崎氏はこの難しさに触れた上で、最後に電通グループが支援できることを紹介した。
「当グループは、本セッションで挙げたような課題に対応するため、『dentsu EC growth』を立ち上げました。CXコマースの考え方をベースに、立ち上げのコンサルティングからフルフィルメントの領域までフォローします。『売上の壁を突破したい』という事業者は、ぜひお問い合わせください」(岩崎氏)