「遅い・買えない・買いづらい」 軽微なパフォーマンス問題を丸投げしない
ECサイトのパフォーマンス問題は、IT部門からのアプローチだけでなく、EC運営側からも積極的に対処する必要がある。ところが、「ビジネスサイドではあまり認識されていないという課題がある」と田中氏は指摘する。
「プロモーションやCRMなどで、ECサイトへ顧客を誘導している事業者が多いでしょう。しかし、誘導した顧客に対し『快適にECサイトを利用できているはずだ』と思い込んでいないでしょうか。また、軽微な『遅い・買えない・買いづらい』といったパフォーマンス問題を、IT部門や外部ベンダーに丸投げしていないでしょうか」
問題が発生してから解決するまでの時間も、実は大きなビジネス損失になっている。IT部門が対応している間は、消費者がECサイトから離脱しモノが購入されない。つまり、その間は売上が発生しない。さらには、顧客がECサイトに大きなストレスを感じれば、それがブランド自体のイメージにも影響する。
「サイトパフォーマンスがどれだけ売上に影響を及ぼしているか、因果関係を把握するのは容易ではありません。検証にはエンジニアのスキルが必要です。どうしても、EC運営側では手が出しづらい領域といえます」
IT部門との共通言語を作る
課題を踏まえた上で、田中氏は次のように提案する。
「まずはECサイトのパフォーマンスを可視化して、EC運営側とIT部門との間で『共通言語』を作るところから始めましょう。EC運営側が特に優先して可視化したいKPIから、リアルタイム観測を始めるのが効果的です」
たとえば、「購入不成立になっている件数」「エラーの影響を受けたユーザー数」「それによる損失金額」といった数値の把握から始める。これらの指標がリアルタイムで可視化できれば、ECサイトを運営する上で、『早急な対処が必要な問題かどうか』がわかりやすくなるはずだ。New Relicのダッシュボードでは、これが実現できるという。
「ユーザーに甚大な影響をもたらす以前に問題の兆候をつかみ、開発と品質確保のバランスを定量的に判断できます。今対処すべき事項が何か、どのような影響を与えているのか。データを根拠に説明できるようになれば、問題解決に向けて全社を巻き込みやすくなるでしょう」