コロナ禍でデータ収集・活用がさらに加速
──お二人のSAPにおける担当領域を教えてください。
Rosenthal これまで、MAやパーソナライゼーションの分野に8年携わってきました。現在は、SAPの既存顧客、新規のエンタープライズの顧客向けに、SAP Emarsysを提供しています。担当する地域としては、日本を含むアジア太平洋地域です。
阿部 SAP ジャパンでカスタマーエクスペリエンス事業部の事業部長を務めています。SAPは幅広い業務アプリケーションを備えていますが、同事業部では、顧客に対面するフロントオフィスとしてのソリューションを受け持っています。
──SAP Emarsysは、どのようなツールなのでしょうか。詳しく教えてください。
Rosenthal SAP Emarsysは、CXを向上し顧客のエンゲージメントを高める機能を備えたプラットフォームです。具体的にできることは、大きく分けて次の5つです。
1つ目は、顧客のロイヤリティ向上への寄与。複数チャネルにまたがって、パーソナライズされたキャンペーンが作成できます。
2つ目は、セグメンテーションとパーソナライゼーションの実現です。顧客を属性や行動をもとにセグメント分けし、特定のグループに合ったコンテンツの表示などが可能です。
3つ目は、顧客ライフサイクル管理。カートが放棄されているときのリマインド、購入後のフォローなどを自動化します。
4つ目には、行動分析があります。トレンドの発見や深い顧客理解によって、各チャネルのどこに改善の余地があるのかを特定できます。
5つ目はオムニチャネルマーケティング機能です。各チャネルをシームレスにつなぐことで、一貫性があり、パーソナライズされた体験を複数のタッチポイントで提供できます。
──各ブランドにとって重要なCXですが、コロナ禍の前後で変化はあったのでしょうか。
阿部 日本の場合、オンラインのみで商品を販売している事業者は多くありません。特にコロナ禍前は、あくまでも実店舗での販売が中心でした。それが、コロナ禍で一気にeコマースの比重が高まりました。オンライン上でも顧客の行動をとらえ、インサイトを得る。そして、得たインサイトを活かす。こうした動きが、特にBtoCビジネスを運営する事業者の間で加速しています。
Rosenthal 別の角度で話すと、「企業に個人として認識してほしい」「プライバシーを尊重してほしい」という消費者の期待値は、コロナ禍の前後で変わっていません。EC事業者はこれに応える必要があります。
──では、最新のトレンドで注目すべき顧客の動きはありますか。
Rosenthal 海外と日本で共通しているトレンドに、「モバイルの活用」が挙げられます。モバイル上での優れた体験の提供に取り組む事業者が増えています。また、環境問題への関心が高まっていることも注目したい点です。顧客は、自分が購入する商品を販売している事業者が、環境に配慮しているかを気にかけています。