企業が見落とす顧客の離脱ポイント
深田氏は、A/Bテストを繰り返してきたからこそ「顧客は思いがけないところで離脱していることがわかる」と説明する。
ECサイトを運営していれば顧客の離脱はできるだけ減らしたいところだが、データだけでは離脱の理由は読み取りにくいだろう。しかし、施策を実行することで見えてくる顧客の反応がある。深田氏はその例として、生鮮食品を扱うECサイトを挙げた。
「本サイトでは、『ハンバーガーメニュー』のクリック率が平均数%程度と低く、ときには1%を切ることもありました。その理由を検証するため、アイコンの意味を説明する吹き出しを表示してみました。するとクリック数が増え、購入者数も増えたのです。つまり、『アイコンの意味が理解されていなかった可能性が高い』というわけです」
ECサイトでは珍しくないカゴ落ちも、同様の検証を重ねた結果、「ご不明な点はございますか?」という問いかけが効果的だったという。「商品がいつ届くのか」「送料はかかるのか」「会員登録は必要なのか」など、支払いの直前に疑問を持つ顧客もいる。そこでFAQページに移動して内容を確認し、戻ってくるケースは多くない。
「たとえばページの滞在時間が長いなど、『悩んでいる』と予想できる行動をとった顧客に、よくある質問をポップアップとして表示します。その場で疑問を解消してもらうことで、カゴ落ちの削減に成功しました」
またログインエラーも、離脱のきっかけとなる。それに対しても、パスワードを入力してエラーが表示された瞬間にポップアップで解決策を案内すれば、その場で解決できる。こうした顧客の些細なつまずきの解消が、CVRの向上をもたらす。
こうした事例から、ECサイトにおけるセルフサービスの前提はもう成立しないことがわかる。コンテンツを用意していれば、顧客が見てくれるわけではない。ここで再び深田氏は、いくつかの事例を紹介した。
「コーディネートの紹介をしているアパレルのECサイトもありますが、ページの下部にコンテンツを用意しても顧客に気づいてもらえません。そこで、『コーディネートを見てみる』というボタンをクリックすると自動的にスクロールして、コンテンツのある場所までスムーズに誘導する工夫がなされています」
「絞り込み検索も実はあまり使われていない機能です。ここでも、顧客が使っていない機能を提案して、存在をアピールすることができます」