大阪に本社を構え、関西圏でのセレクトショップ経営が強みの株式会社アーバンリサーチですが、SNSやECの台頭に伴い、新しい戦略に活路を見いだしつつあります。トレンドの移り変わりが激しいアパレル市場において、同社はどのように顧客の心をつかみ続けているのでしょうか。
この記事では、そんなアーバンリサーチが実店舗とECを融合させて展開する、顧客目線のデジタル戦略について解説します。
株式会社アーバンリサーチの企業情報・事業内容の概要
まずは、株式会社アーバンリサーチの基本情報を確認しましょう。
株式会社アーバンリサーチの企業情報
以下の表は、株式会社アーバンリサーチの企業情報をまとめたものです。
社名 | 株式会社アーバンリサーチ |
---|---|
本社所在地 | 大阪府大阪市西区京町堀1丁目6-4 アーバンリサーチビル 10F |
設立年月 | 1989年11月 |
代表者名 | 代表取締役 竹村幸造 |
株式公開 | 未上場 |
資本金 | 1,000万円 |
おもなグループ会社 |
株式会社 UR テラス URBAN RESEARCH TAIWAN LTD. URBAN RESEARCH SHANGHAI Co., ltd. |
株式会社アーバンリサーチの事業内容
アーバンリサーチは、メンズ・レディースウェアを手がけるアパレル企業です。関西を中心にセレクトショップを展開し、根強いファンを集めています。
また近年は自社で培ったノウハウをもとに、Webサイトや動画制作などのコンテンツ事業、デザイン事業、アプリやシステム開発といったテクノロジー事業にも参入しています。
株式会社アーバンリサーチの沿革
以下の表は、株式会社アーバンリサーチの沿革をまとめたものです。
年 | 沿革 |
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1974年 | 大阪府門真市にジーンズカジュアルショップ開業 |
1989年 | 前身である株式会社ジグ三信設立 |
1997年 | アメリカ村にURBAN RESEARCH初出店 |
2001年 | 株式会社アーバンリサーチに社名変更 |
2002年 |
関東に初出店 (URBAN RESEARCH 渋谷店) プレスルーム設立 |
2005年 | 東海地方に初出店 (URBAN RESEARCH 名古屋店) |
2008年 | 原宿に東京オフィス設立 |
2011年 |
URDC (物流) を大阪府箕面市に移転 台湾向けにONLINE STOREオープン 中国地方に初出店 (URBAN RESEARCH warehouse 三井アウトレットパーク倉敷店) |
2016年 |
海外初進出 台湾へURBAN RESEARCH OUTLET初出店 (林口店) バイイングブランドのみ取り扱うオンラインストアURBAN RESEARCH BUYERS SELECT設立 |
2018年 | メディアサイト『URBAN TUBE』ローンチ |
1974年にジーンズカジュアルショップとしてスタートした同社が「URBAN RESERCH」としてセレクトショップを立ち上げたのは、1997年のことでした。
90年代までは関西に限定した店舗展開でしたが、2002年の渋谷店オープンをきっかけに、全国的な展開が加速します。その後も2008年に東京オフィスを開設、2016年には初めての海外店舗のオープンを達成するなど、国内外で高く評価されるセレクトショップとして成長し続けてきました。
株式会社アーバンリサーチのデジタル戦略
株式会社アーバンリサーチは、アパレルのなかでも積極的なデジタル活用を推進している企業として注目を集めています。同社が取り組むオムニチャネル戦略と、EC活用について紹介します。
株式会社アーバンリサーチが目指すオムニチャネル戦略
株式会社アーバンリサーチは、これまで多くのファンを獲得し、全国的に展開を進めてきた実店舗と自社オンラインストアをつなぐ、独自のオムニチャネル戦略を推進しています。
リアル店舗型オンラインストアをコンセプトとするECオンリーのショップ「URBAN RESEARCH BUYERS SELECT(URBS)」は、そんな同社のオムニチャネル戦略を支えるプラットフォームとして機能しています。
同サービスはバイヤーと表参道ヒルズ店スタッフが運営しており、実際の店舗と変わらない、質の高い商品ラインナップが特徴です。
チャット機能を使えば店舗スタッフとリアルタイムでコミュニケーションができ、顧客ニーズに即した最適な提案を受けられるなど、実店舗さながらの体験も提供しています。商品在庫も表参道ヒルズ店と一元化することで、在庫状況をいち早く反映できる点も強みです。
また、オンラインで買ったものを店舗で受け取れる店舗取り置きサービスや、店舗スタッフに商品やコーディネートの相談ができるLINE接客サービスなど、実店舗とオンラインをつなぐ仕組みも多数整備されています。
独自開発したバーチャルフィッティング端末では、カメラの前に顧客が立つだけで、自動で体のサイズを測定し、各商品の試着をバーチャルで行えます。ECとも連動しているため、気に入れば液晶画面からそのまま購入できるなど、店舗とECの両方の接点が増加しているのが特徴です。
このように同社ではオンライン・オフラインを問わずデジタルサービスを拡充し、良質な顧客体験を提供しています。
株式会社アーバンリサーチが実現した「顧客に寄り添うEC」
実店舗とECの両立においては、実店舗機能を充実させるだけでなく、EC機能の拡充も不可欠です。株式会社アーバンリサーチでは、「顧客に寄り添うEC」をコンセプトとした、次世代のECサービスの提供に取り組んでいます。
同社がまず実施したのが、2019年のレビュー・口コミ・Q&Aエンジンの導入です。
「顧客同士が情報共有できる仕組みの強化が大切である」と判断した同社では、口コミやレビューを評価者の体系や年齢、性別などで検索できる仕組みを整備し、有力な口コミ情報を届けることに成功しています。
また、2020年にはEC商品検索・サイト内検索エンジンを導入しました。目立つところに検索枠や虫メガネマークを配置する、商品ページの開き方を新しくする、などのUI改善を行った結果、サイト内回遊率と検索後のコンバージョン率が約3倍に増加しています。
アパレル企業向けの開発経験が豊富で問題解決能力に優れた外部のベンダーにシステム開発を依頼することで、自社のニーズにあったEC環境の構築に成功しました。
株式会社アーバンリサーチの近年の動向
続いて、株式会社アーバンリサーチのここ数年の動向について、気になるニュースをピックアップして解説します。
フリマアプリでセール・アウトレット販売サービスを開始
株式会社アーバンリサーチは、2022年5月からフリマアプリ「楽天ラクマ」でセール品やアウトレット品を販売するサービスを開始しました。
アパレル企業を悩ませる問題として、シーズンを過ぎた商品の販売や、販売のための流通コストが挙げられます。
一方、フリマアプリを通じた販売活動は、二次流通や応援消費を軸にした循環型社会へ貢献する意味合いも持ちます。
デジタル活用によって売り手と買い手がマッチングされることは、アパレル全体としての課題解消に寄与するだけでなく、在庫の循環とサーキュレーション市場の活性化にもつながるため、今後の展開が期待されます。
アーバンリサーチが東京支社を移転・2拠点化。動画専用ブースを擁するスタジオも新設
株式会社アーバンリサーチは、2021年9月に東京支社の拠点を2ヵ所に分けて移転させました。首都圏にオフィス機能を設けつつ、ECやSNS用の動画を撮影する専用ブースを新設することで、作業効率化を図る狙いです。
具体的には、オフィス機能を持つ「アーバンリサーチ トーキョースタジオ」を品川に、プレスルームを備える「アーバンリサーチ プレスルーム」を表参道に開設しています。
インフルエンサーや芸能人が集まり、文化の中心地である東京からのコンテンツ発信は、同社に強力なブランド認知とプロモーション効果をもたらすことでしょう。
新業態のコンビニエンスストア「アーバン・ファミマ!!︎」がオープン
2020年2月、株式会社アーバンリサーチは再開発が進む虎ノ門ヒルズエリアに、ライフスタイル提案を重視した新業態店舗「アーバン・ファミマ!!」をオープンしました。
コンビニエンスストア「ファミリーマート」とのコラボレーションによって誕生した同店舗は、通常のコンビニコーナーやイートインコーナーのほか、アーバンリサーチならではのセレクトや陳列が特徴的なアパレルエリアも備えており、両社の魅力が体現されています。
ワンランク上の日常を提供するコンビニエンスストアとして、新たな価値創出を目指す取り組みであり、今後の展開に注目が集まります。
株式会社アーバンリサーチの気になるトピックス
そのほか、株式会社アーバンリサーチの気になるトピックスについて、以下で簡単にまとめています。
2023年11月2日:アーバンリサーチとフューチャーアーキテクト、基幹システム刷新プロジェクトを本格スタート
アーバンリサーチは、基幹システム刷新とオムニチャネル戦略推進のため、フューチャーアーキテクトとともに同社のアパレル基幹プラットフォーム「FutureApparel」とオムニチャネル戦略支援サービス「OmnibusCore」を導入するプロジェクトを本格的にスタート。
2023年8月21日:アーバンリサーチがFireworkを導入 CVRが202%向上・購入単価の増加などの成果も
アーバンリサーチは、ライブコマース・プラットフォームとして統合型動画ソリューション「Firework」を導入。2021年4月から実施しているライブコマースや、顧客ジャーニーの向上実現のために採択し、2023年4月〜6月の間に、202%のCVR向上と購入単価の増加という成果を得ている。
2023年4月19日:アーバンリサーチの公式オンラインショッピングサイトが「ZETA HASHTAG」導入
アーバンリサーチが運営する「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」に、ZETAが提供するハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」が導入。自動生成されたハッシュタグが商品詳細ページに表示されるようになっている。
2023年2月8日:アーバンリサーチの公式サイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」にて後払い決済サービス「Smartpay」が利用可能に
アーバンリサーチとSmartpayは、公式ファッション通販「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の支払い方法としてSmartpay が利用可能になったことを発表した。
2022年10月28日:選んで自分も未来も嬉しい「おおさか脱炭素ポイント+」“CO2CO2 (コツコツ) 減らして、コツコツ増やそ!”
環境配慮消費行動の促進に向けて、生産・流通・使用過程でのCO2排出が少ない商品を購入した方に脱炭素ポイントを付与する大阪府の検証事業にアーバンリサーチも参加を表明。
2022年9月6日:台湾向け総合ECサイトシステム「w2 Cloud」にて台湾アーバンリサーチECサイトをリニューアル
w2ソリューション株式会社は、株式会社台湾アーバンリサーチが運営するECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE TAIWAN」のサイトリニューアルに台湾向け総合ECサイトシステム「w2 Cloud」が採用・導入されたことを発表。
2022年6月30日:2022年10月 アーバンリサーチの「JAPAN MADE PROJECT “OSAKA”」が始動します
株式会社アーバンリサーチが地域共創を目指し取り組むローカルコミュニティプロジェクト「JAPAN MADE PROJECT」。2022年10月、7つめの地域として、JAPAN MADE PROJECT “OSAKA(大阪)”の企画がスタート。
2022年05月20日:株式会社アーバンリサーチが古着回収と販売の「古着バトン」を2022年5月20日(金)より開始。衣料品の廃棄問題を顧客へ呼びかけ、回収キットを販売。
アーバンリサーチは、2022年5月20日(金)より古着回収と販売を行う取り組み「古着バトン」を開始。
2022年5月16日:ファッションEC公式サイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」にてペイディの利用が可能に
アーバンリサーチは、公式ファッション通販「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の支払い方法として、株式会社Paidyが運営する「ペイディ」が利用できるようになったことを発表。
2022年4月22日:(株)URBAN RESEARCHから インフルエンサーブランド “Couleur Meler(クルールメリー)”をローンチいたします!
ブランド名はフランス語で、”色が混ざり合う”という意味の「Couleur Meler」。色(個性)を持ったインフルエンサーがディレクションするオリジナルアイテムを展開。
まとめ
この記事では、株式会社アーバンリサーチのオムニチャネル戦略や、同社のEC活用がどのように進められてきたかについて解説しました。
独自のECプラットフォーム立ち上げには多くの時間と費用がかかるものですが、同社はシステム開発を担当するベンダーとのコミュニケーションを重視したことや、顧客ファーストの仕組みづくりを推進したことで、デジタル戦略を成功に導いています。
デジタル活用を進めつつ、既存店舗の魅力も失わないブランド戦略にも注力する同社の高い柔軟性と骨太なコンセプトのあり方には、参考にすべき点が多くあるといえるでしょう。