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2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

おさえておきたいEC・通販先進企業

カメラ事業が好調なシュッピンが抱えるECの課題と改善施策

 カメラ販売ECなどを手がけるシュッピンは、ECを使ったマーケット開拓に成功している企業の一つですが、必ずしもその全てが上手くいっているとは限りません。EC領域はトレンドの変化や技術革新が著しく、同社においても課題としている部分は複数あります。シュッピンが抱えているEC領域の課題や、解決に向けた各施策について解説します。

 カメラ販売や時計販売などのECサイト運営を手がけるシュッピン株式会社は、安心・安全な取引ができる販売店として確かなブランド力を誇ります。マーケットにおいては優位なシェアを築いている一方、トレンドの移り変わりが激しいEC領域では常に課題を抱えているとのことです。

 この記事では、そんなシュッピン株式会社が直面しているECの課題や、課題解決に向けて同社が展開する改善施策について、詳しく解説します。

シュッピン株式会社の企業情報・事業内容の概要

 まずは、シュッピン株式会社の基本的な企業情報について、確認しておきましょう。

シュッピン株式会社の企業情報

 以下はシュッピン株式会社の基本情報をまとめたものです。

社名 シュッピン株式会社
本社所在地 東京都新宿区西新宿1丁目14番11号 Daiwa西新宿ビル3階
設立年月 2005年8月4日
代表者名 代表取締役社長CEO 小野尚彦
株式公開 東証プライム上場
資本金 5億3,500万円
おもなグループ会社 なし

シュッピン株式会社の事業内容

 シュッピン株式会社は、新品・中古品を問わず各商品に特化した専門ECサイトと実店舗を複数運営する会社です。カメラ専門店として安心のサービスと信頼性を提供する「MapCamera」の運営、海外の機械式高級時計を中心に扱う腕時計専門店「GMT」、ロードバイク専門ショップ「CROWN GEARS」など、単価の高い商品を中心とした販売を行ってきました。

 ECサイトでは実現しづらいとされていますが、顧客への安心と安全の提供をさまざまなアプローチから実践し、価格以上の満足度につなげることで、ラグジュアリー商品もネットで購入してもらえるよう促しているのが特徴です。

シュッピン株式会社の沿革

 以下の表は、シュッピン株式会社の沿革をまとめたものです。

年月 沿革
1994年8月 株式会社マップグループにおいて、専門店屋号「Map Camera」としてカメラ事業開始
2005年8月 会社設立。12月に株式会社マップグループからカメラ事業EC部門を同社に営業譲渡
2006年6月 専門店屋号「GMT」として時計事業開始
2008年4月 専門店屋号「KINGDOM NOTE」として筆記具事業開始
2008年11月 専門店屋号「map sports」として自転車事業開始(2013年に「CROWN GEARS」へ屋号を変更)
2016年3月 グループ分けした顧客のニーズに合わせた案内を行う「グループターゲット」開始
2016年10月 顧客ごとのニーズに合わせた最新情報を届ける「パーソナルリクエスト」開始
2017年8月 「Map Camera」が北米などへの越境ECを開始
2018年2月 カメラ・腕時計・筆記具・ロードバイクに特化した情報配信アプリをリリース
2018年3月 顧客ごとに合わせたトップページパーソナライズ化「パーソナルレコメンド」開始
2019年5月 「GMT」が「Chrono24」に出店、越境ECを開始
2020年6月 「AI顔認証によるオンライン本人確認サービス」開始
2021年3月 適正な買い取り・販売価格を自動アシストする「AIMD」リリース

 1994年に事業をスタートし、2005年に分離するように立ち上がったシュッピン株式会社は、MapCameraを中心としたカメラ専門店事業に続いて、2006年に腕時計専門店も立ち上げています。2008年には事業をさらに多角化し、高級筆記具専門店、自転車専門店を次々とオープンするなど、広い領域のBtoC事業を担う会社へと成長しました。

 また、同社は豊富なラインナップの専門店を運営するだけでなく、専門店のサービス品質をテクノロジーの力で高めることにより、他社との差別化を図ってきました。顧客のニーズをグループ分けして訴求する「グループターゲット」や、顧客の個別のニーズに合わせて情報を発信する「パーソナルリクエスト」など、次々とデータドリブンな仕組みを取り入れています。

 優れた商品ラインナップやブランド力は、国内だけでなく海外市場でも存在感を発揮します。2017年に北米地域で、2019年にはドイツに本部を置くグローバルプラットフォームの「Chrono24」に出店し、越境ECをスタートさせました。

シュッピン株式会社がさらなる成長に向けて取り組んでいるEC施策

 シュッピン株式会社は需要に柔軟に応えるサービス展開と積極的なテクノロジー活用を進めていますが、チャレンジが必要な課題はまだ残ります。同社が現状抱えている課題と、課題解決に向けて進めているEC施策について解説します。

シュッピン株式会社が抱える課題

 シュッピン株式会社は、同社が解決すべき課題として以下のようなトピックスを挙げています。

  • 各事業における専門性の向上
  • ECサイトの信用力(安心・安全)・利便性の向上
  • ブランド認知度の向上、新規Web会員数、アクセス・PV数の増加

 同社が取り扱うカメラや腕時計、自転車といった商品は、単価が高いだけでなくいずれも取り扱いに専門的な知識が求められるため、顧客がお店に対して求める水準も必然的に高くなるものです。

 取り扱い領域や店の規模を大きくするだけでなく、それらの商品を高い水準で扱える専門家の存在が必要であり、それは顧客が安心して買い物ができる環境作りに直結します。各事業の専門性をさらに高めることで、より魅力的な店舗づくりを進めることが第一の課題です。

 商品ラインナップや知識だけでなく、販売をする場にも改善の余地が残されています。対面取引と同様の安全性や信頼性をECにおいても担保できなければ、デジタル化が進む現代のマーケットで存在感を発揮することは難しいでしょう。

 また、安心かつ便利に使えることもECに求められている要件です。サイバー攻撃や不正取引にも対処できるような環境を充実させ、何度でも利用したくなるサービスを提供しなければなりません。

 一人でも多くのユーザーにサービスを利用してもらうためには、会社や各サービスの認知度向上も欠かせない取り組みです。同社では専門店ごとに別個の屋号を設けていますが、それぞれの知名度を一層高めることで、多くのWeb会員の獲得や各サイトへの訪問者数の増加を目指します。

シュッピン株式会社が取り組む具体的なEC施策

 上述の課題を解決するべく、シュッピン株式会社ではEC関連の改善施策へ積極的に取り組んできました。ECの活用が同社事業において重要な役割を果たしている以上、サービスの改善は課題解決において不可欠だからです。

 近年の注目すべき施策としては、以下が挙げられます。

  • EC管理システム「WORLD SWITCH」の導入
  • サーバー管理ソリューション「PATROLCLARICE」の実装

 「WORLD SWITCH」は、国内だけでなく国外向けのEC管理を効率化するためのプラットフォームです。国外でも需要のある商材を扱うシュッピンは、グローバル展開を推進するため同サービスの導入に踏み切りました。

 「WORLD SWITCH」の導入によって、一回の商品登録作業で全てのモールへの出品を完了でき、複数の海外モール間の在庫管理や受注業務をまとめて対応可能になるなど、バックオフィス業務の効率化が進みます。同サービスをシュッピンの各ECサイトに実装し、高い利便性と顧客満足度の実現に取り組みました。

 また、近年増加するサイバー攻撃やサービス拡大による負荷増大から生じる障害発生にも迅速に対応すべく、サーバー管理体制の強化も推進しています。新たに導入した「PATROLCLARICE」は、国内外問わずユーザーが安心安全に取引できるよう、社内システムの一元管理を可能にしています。

 社外からシステムを監視できる体制が整ったことで、障害検知スピードが速くなり、ブランド力を損なうリスクの小さい、安全なサービス提供を進められるようになりました。

シュッピン株式会社の最近の動き

 システム周りの刷新に加え、シュッピン株式会社は次々と新しいサービスの活用を進めています。具体的な施策について解説します。

海外向け購入サポートサービス「Buyee」を導入

 2022年11月、シュッピン株式会社は海外向け購入サポートサービス「Buyee」を導入しました。自社サイトにタグを設置するだけで運用ができる利便性は、高く評価されています。

 同サービスの導入により、シュッピンが展開する各ECサイトには海外ユーザー向けの専用カートが自動で表示されるようになり、購入手続きをより簡単に行えるようになったとのことです。越境EC市場におけるシェア拡大が一層期待できるでしょう。

中古カメラの売買価格改定にAIを採用

 数年前よりシュッピン株式会社は、中古カメラの売買価格設定に「AIMD」と呼ばれるAIツールを導入し、事業成長に役立てています。

 同AIツールが活躍しているのは、売買価格改定業務の領域です。これまで同社の価格改定業務においては、担当者が直接市場動向や過去の同社での販売データ、そして自らの経験則などに基づき買い取り価格と販売価格を設定しなおしていましたが、商品点数が多いなか、その全てを人の手で行うのには大きな負荷がかかっていました。

 そこで、業務負担削減とよりタイムリーな価格変更を実現するため導入されたのが、AIMDです。結果、システム導入によって販売価格の改定回数は従来の約6倍に増加するとともに、マーケティングにも良い影響を与えています。

 商品の価格改定が起きた際、その商品を「欲しいリスト」に入れている顧客へメール通知をする施策も実施できるようになりました。価格改定の回数が増えれば、その分同社の販売促進も加速することとなり、一石二鳥の効果をもたらしています。

LINE通知機能を新たに実装し、パーソナライズ化したおすすめ情報を発信

 シュッピン株式会社では、2022年よりLINE通知機能を使ったパーソナライズ情報の発信をスタートしています。

 「欲しいリスト」に入れている商品の価格が下がったときや「マイアイテム商品」の買い取り価格が上昇したとき、レビューが「欲しいリスト」に入れた商品へ投稿されたときなどに通知が行われ、メールで発信していた頃よりも高い開封率を達成できているとのことです。

シュッピン株式会社の気になるトピックス

 そのほか、シュッピン株式会社の気になるトピックスをまとめています。

2023年8月7日:中古カメラの販売・買取価格をAIが自動設定する【AIMD フェーズ2】を導入しました

 シュッピン株式会社が運営する日本最大級のカメラ専門店「Map Camera」は、中古カメラの販売・買い取り価格をAIが自動設定する「AIMD」において、従来よりも価格決定の要素を増やし、価格変更回数を従来比120%に強化した【AIMD フェーズ2】を新たに導入した。

2023年3月24日:eBay Japan Awards 2022で『Map Camera』が最優秀賞のSeller of the Yearを受賞、『Map Camera』『GMT』が2年連続でカテゴリー賞を受賞し三冠達成!

 eBay Japan Awards 2022において、「Map Camera」が最優秀賞であるSeller of the Yearを受賞した。カメラ専門店「Map Camera」は2017年8月、時計専門店「GMT」は2020年7月 からeBayへ出店している。

2023年2月15日:レディースブランド サロン「BRILLER(ブリエ)」のスマートフォンサイトの検索機能を大幅にアップデートしました

 シュッピン株式会社が運営しているレディースブランド サロン「BRILLER(ブリエ)」のスマートフォンサイトの検索機能を大幅にアップデートした。

2022年10月26日:レディース腕時計専門店「BRILLER」リニューアルオープン! ブランドバッグのフロアを大幅に広げ、ブランドジュエリーの取り扱いを開始

 シュッピン株式会社が運営しているレディースブランド サロン「BRILLER(ブリエ)」のフロアを1Fに拡張し、ECと店舗のハイブリッドな展開でリニューアルオープンする。

2022年9月6日:一般社団法人 障がい者自立推進機構とオフィシャルパートナー契約を結びました

 2022年7月に一般社団法人 障がい者自立推進機構とオフィシャルパートナー契約を結び、「パラリンアート」の活動に参画した。

まとめ

 この記事では、カメラや腕時計などの専門店を展開するシュッピン株式会社について解説しました。同社は以前から多くのデジタル活用を進めており、それこそが多くのシェアを獲得する要因となってきた一方、依然として取り組むべき課題が残されています。

 近年は越境ECにも注力し、地域にとらわれない需要を満たすべく世界に向けて自社サービスの提供を進めており、それに合わせてバックオフィス業務の効率化や、顧客体験の向上に向けたツール導入などを次々と進めているのが現状です。

 競争優位にある企業がさらに優位性を確固たるものにするためにもデジタル化が有益であるということがよく分かるケースといえるでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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