コロナ禍で利用者増のペイパル グローバルな資金移動を安全・円滑に
アメリカ・サンノゼに本社を置き、世界中に約3,500万の加盟店を含む約4.3億人以上のアクティブユーザーを擁する決済システム「ペイパル」。展開国は200超、取り扱い通貨は100を超え、世界規模で親しまれるデジタルウォレットと言える。日本でも約10年前から展開を開始し、アクティブアカウント数は840万を突破。同システムを提供するペイパルで大手新規加盟店の獲得営業を担当する大津氏は、この状況を「コロナ禍の影響で増えたEC利用がきっかけになっている」と説明する。
ペイパルは、消費者と加盟店の両方がペイパルのアカウントを持ち、それぞれのアカウント間で資金を安全・安心に移動するツーサイドネットワーク方式を採っている。「とくにグローバルな資金移動を容易かつ迅速に行えるよう、多くのリソースとテクノロジーを費やしてきた」と語る大津氏。グローバルにサービス展開をする事業者を中心に、Qoo10、ヤマダ電機、ディスクユニオン、ライオン、CAMPFIRE、BASEなど、さまざまな業種・業態が採択している点も特徴だ。
原田氏がChief Executive Officerを務めるLingble Pte.Ltd.は、グローバルECプラットフォーム「Lingble」を提供するシンガポール発の事業者だが、元は2009年に日本製のデニムを世界に販売するところからビジネスを開始している。
「岡山産のデニムを取り扱うセレクトショップ『Denimio』は、運営を続けるうちに月間30万人を超えるファンができ、100ヵ国以上に出荷を行うまでになっています。
越境ECでの販売は容易ではなく、本当に多くの苦難や失敗を経験してきました。しかし、こうしたチャレンジを知ったパリコレに登場するブランドなどから次第に相談を受けるようになったのです。そこで、蓄積したノウハウを反映した当社のシステムを提供したところ、『世界中に決済もカスタマーサポートも提供できるようになった』と非常に喜んでいただけました。この経験が、現在の事業の起点となっています」(Lingble 原田氏)
Lingbleのスローガンは、「Journey further, together.」。原田氏は、この言葉を「『クライアントとともにより遠くに行こう』という意味」だと説明する。
「よく登山にたとえて説明しますが、ツールさえあれば頂上にたどり着けるわけではなく、そこにはさまざまな困難が存在します。ヒマラヤでは、経験豊富なシェルパ(ガイド)が登山を成功に導くために帯同するほどです。
グローバルの市場でさまざまな経験を積んできた当社も、シェルパのようにクライアントと伴走し、一緒に未開の地へ突き進むことができればと考えています。ただプラットフォームを提供するだけではなく、経験に伴走する『エクスペリエンスガイド』というコンセプトを体現するためにも『Journey further, together.』というスローガンを掲げました。現在は25ヵ国に点在する従業員が、システムや法律、輸送、決済など全面的にクライアントのサポートを行っています」(Lingble 原田氏)
ブランディング/マーケティングやコミュニケーションプランニングを手掛けるエヌプラス中村氏は、2社の事業内容を踏まえた上で「越境EC、グローバルECを展開する上では、『商品をどう販売するか』『ブランドをどう伝えるか』といったことに目が向きがちだが、購入前後のカスタマーサポートや購入時の決済体験の重要度も非常に高い。こうした点も考慮して事業設計をする必要がある」と語った。