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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

季刊ECzine vol.22特集「Above and Beyond expectations!!~期待以上の体験を提供するテクノロジーとブランド~」

楽しみながら顧客の期待に応え続ける 「北欧、暮らしの道具店」流 浸りたい世界観のつくりかた

 オリジナル商品で高める提供価値。強固な基盤づくりとともにチャネル開拓も積極的に。 ※本記事は、2022年9月25日刊行の『季刊ECzine vol.22』に掲載したものです。

 月間200万MAUを誇るライフカルチャー・プラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコム。商品を仕入れて販売するだけでなく、ライフスタイル提案型のECサイトとして成長を遂げ、近年は自社アプリのリリースやPodcast、YouTubeドラマ、映画など新たなチャネル展開にも積極的だ。2007年より同プラットフォームの展開を開始し、顧客と深い関係を築く先駆者と言える同社は、いったいどのような考えかたで顧客接点やビジネスを広げているのか。代表取締役の青木耕平さんに話を聞いた。

株式会社クラシコム 代表取締役 青木耕平さん

隙間時間を埋めて距離を縮める 常に半歩先の提案を

 今でこそ、ブランドや商品のストーリーを語り、ものを売る手法が定着しつつあるが、「北欧、暮らしの道具店」がオープンした2007年はまだまだインターネット広告全盛期と言える時代。黎明期のクラシコムも広告を主軸に集客や新規顧客獲得を行っていた時期があったが、コスト・運用負荷の観点から合理的でないと考え、2012年にはすでにコンテンツ軸で訴求する現在のスタイルにシフトしたと言う。

「当時はEC事業者とお客様における購入前の接点がほぼ広告のみであり、お客様との交流も『購入後に生まれた関係を長く継続する』、CRMの発想が主軸でした。しかし、スマートフォンの普及やSNSの発展により、今は購入前から関係を築ける時代です。『購入』を起点に知り合うのではなく、『役に立つ』『楽しめる』コンテンツから先に関係をつくり、『買いたい』という欲求が生まれた際に購入をしていただく。このほうがお客様にとっても理にかなっている上に無理がないと考え、現在のコミュニケーションに行き着きました」

 「フィットする暮らし、つくろう。」をミッションに掲げるクラシコムでは、自分らしく居心地が良いと感じられる生活を顧客に見つけてもらうために、さまざまなアプローチを行っている。こうした行動の裏に存在するのは、「『北欧、暮らしの道具店』を、広い意味ではエンターテインメント産業だととらえている」という青木さんの考えだ。

「当社はいわゆる生活必需品ではなく、自分らしい人生や満足のいく生活を送るための商品を販売しています。そのため、商品そのものの機能性を伝えるよりも、自分に合うものを選んで生活を豊かにしていただけるような提案を行い、コンテンツそのものを楽しんでもらう。こうしたアプローチを意識しています」

 自社プラットフォームやSNSでの発信のみならず、長尺・短尺の動画コンテンツ制作、Podcast配信、Spotifyでのプレイリスト公開など映像、音声プラットフォームの活用にも積極的なクラシコム。着々とコンテンツの幅を広げているが、これは「生活のすべての時間に寄り添えるように」と考えた結果だと言う。

「従来型のコミュニケーションから、よりお客様と深くつながるにはどうしたら良いのか。課題と向き合った結果、動画や音声が有効ではないかと考えました。新たなお客様の出会いにももちろん期待していますが、これらはどちらかと言うと既存のお客様に『より世界観に浸りたい』『もっと仲良くなりたい』と思ってもらいたいと思って展開しています」

 企業・ブランドと顧客が良好な関係を築くには、相手の求めることを察知した上でその半歩先を行く提案をする心持ちが欠かせない。さらには、さまざまな接点を駆使して自社を立体的に知ってもらう機会を設け、驚きや発見を絶やさぬようにするなど、継続性も問われると言える。

「同じような発信が続けば、今は『北欧、暮らしの道具店』のコンテンツに満足しているお客様もいずれ飽きてしまうかもしれません。絶えず楽しんでもらうためにさまざまな提案を行い、反響のあるものは残して、ないものはやめてまた新しいことにチャレンジする。行動すれば何かしらのフィードバックや発見があるので、学びを得て前に進む……この繰り返しです。

 当社は、『バズりたい』『SEO順位を良くしたい』といったゴールから物事に着手することはしません。『フィットする暮らし、つくろう。』というミッションを基に自社の存在意義を考え、やりたいこととお客様が求めることが合致しそうとなれば、実行に移す。そうすれば仮にうまくいかなくても、その後に続く気づきが必ずあると考えています」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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