店長自らの接客を続けながら、『卸売』で売上を伸ばす
前述のとおり、井藤さんはパン屋になる前は設計の仕事をしていたが、ネットに強いわけではない。それでも、『おちゃのこネット』のスマホ対応、テンプレートの更新など、新しい技術はどんどん取り入れていく。
「新しいテンプレート、いいですよ。多少のHTMLは必要になってくるんですが、たとえば3列を1列にしたいと思うとすぐにできる。まだ使っていない人は、使ってみたらいいのにと思います。もちろん『もっとこうなったらいいな』も出てくるので、有志が集まったネットショップ運営実践会のページで、『拝啓おちゃのこネットさま』というコンテンツを作って、アピールしています(笑)」
モールからも出店の誘いはあるが、「(ネットショップ運営は)1人でやっているので」と今のところは考えていないという。
「先輩のネットショップさんから、『いつまでもそのやりかただと、大きくできないぞ』とアドバイスをいただいたこともあります。従業員を守るために、売上を伸ばしていかなければならないというのもあるのですが、僕はこれからも、1人ひとりのお客様に自分で対応していきたい。動画もブログも、僕を押しだしてやっていますから、お客様は僕に対して問い合わせをしてくださると思うんです。それに対して、僕以外の人間が『ちょっとわからないので、店長に聞いてきます』という回答をしたら、やっぱりがっかりさせてしまうじゃないですか」
とはいえ、現状に満足しているわけではない。今の接客を続けながら、ショップを大きくしていく施策はすでに動いている。
「次の展開として、『卸売』に取り組んでいます。お客様の中には『ネットだけじゃなく、近くのお店で買いたい。私がスーパーに掛けあってくるから!』という方もいらっしゃって、実際に東京、神奈川、静岡、愛知、富山、福井、大阪、福岡のスーパーさんなどに卸しています。こちらから営業に行くと、価格の話になってしまうことも多いので、営業はしません。これまで卸売につながったように熱烈なファンのお客様のご協力があって、先方から依頼が来るような形で進めていきたいと考えています」
井藤さんの持つ誠実さと情熱とがにじみ出た、トントンハウス。安さで勝負しないのはもちろん、売上や効率だけを追い求めない、サイトの運営そのものに喜びを感じているショップにとっては、参考になるポイントがいくつもあったはず。そうしたショップのためにも、トントンハウスの今後に注目したい。