自社のアイデンティティを表現するため自社ECをリニューアル
2001年からネットショップを開店し、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーの部門賞も多数受賞してきた、老舗のインポートブランドネット通販「モダンブルー」。このたび、自社ECサイト強化のため、構築パッケージを変えリニューアル。また、新たな一元管理ツールを導入することで楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングなど複数モール運営の効率化をはかる。
多店舗展開を行う老舗ネットショップが、自社ECサイト強化のためのシステムリニューアル、運営効率化のためにサービス導入するという流れは、今後相次いで起こりそうだ。EC開始から15年目での新たなシステム投資の決断と、その先に目指すものとは? 株式会社モダンブルー代表取締役 加賀学さんにお話をうかがった。
――大きな時代の変化に備えてのサービス導入、システムリニューアルということですが、いつ頃からお考えだったのでしょうか。
構想を始めたのは10年以上前からです。外部の支援事業者さんを選定し、取り組んでは失敗し、といったことを繰り返していました。そんな中、現状のサイトで依頼しているシステムベンダーさんに出会い、ランニングコストが安いことに加え、「在庫が連動できる」のが大きなポイントだと考え、取り組みをスタートしました。
しかしながら、ECサイトというのは最終的に、「お客様からご覧いただいた際に、見やすく買いやすいサイトであるかどうか」が商売としては非常に重要なのですが、システムがそこまで追いついてこなかった。そこで、再びリニューアルを決意しました。
今度こそという気持ちで何社さんかのシステムベンダーさんにお会いして、今回お願いする、アイティフォーさんだったら安心してお任せできると思い、決断した次第です。
――支援事業者を選定するにあたり、同業の方と情報交換されたりしましたか?
同業他社とは、あまりしていないですね。何かの二番煎じではなく、オリジナルを追究してユニークなものを作りたいと考えていたので。もちろん、ネット上での評判を調べたりはしましたけれど、基本的には、社内でシステム関連の仕事を担当するメンバー4人と、リレーションをとりながら選定していきました。
――リニューアル後は、どのように変わるのでしょうか。
「お客様からご覧いただいた際に、見やすく買いやすいサイトであるかどうか」というお話しをしましたが、それを体現するECサイトにしたいなと考えています。数回購入するうちに、「モダンブルー以外では買いたくない」といった印象を持ってもらえるようなサイト、そして、品揃えを実現したいと考えています。
具体的には、お客様が「ここにこんなボタンがあったらいいな」という場所に、きちんとそのボタンがあるとか。言いかたを変えると、お客様が次に求めるだろう情報に最短距離で到達できることが重要だと思います。
――自社ECとモールの役割の違いとは?
モールではどうしても、そのモール自体の色や顧客層が前面に出てくるし、コストもかかる。モダンブルーのアイデンティティ、世界観、美意識など、お店の特色をストレートに表現したいなら、やはり自分たちで作らなくてはなりません。そうなると、自社ECサイトの強化になってくる。
そもそも、我々が扱っているヨーロッパのブランドは、それぞれの美意識、歴史、カルチャーを持っています。単に即物的に商品だけを輸入して販売するのではなく、ブランドが持つそういった背景も同時に輸入して、紹介するのが我々の仕事です。そこまでやっているから、この価格でご提供しているということを、しっかりと伝える義務もある。
口で言うのは簡単ですが、本当に手間のかかることなので、どこまで実現できるかはやってみないとわかりませんけれど。
――サイトリニューアルに加えて、新しい一元管理ツールの導入で、運営にかかわる人的リソースを45%削減するとか。現状でも、少数精鋭で運営されているそうですね。
今は、レギュラースタッフが20人ぐらいです。伝統的に小売業は、労働集約型の産業だと言われてきました。つまり、収益構造の中で人件費の占める割合が非常に高いわけです。しかし、21世紀型の会社を作っていくならば、従来型の構造を一度壊して、eコマースの特徴を最大限に活かす体制を作らなければと考えました。
また、小売業の中でも、とくにファッション業界は、ひと昔前までは大手百貨店さんでさえバーコードを持たない商品タグだったわけです。さまざまなモノが、アナログ的に社内に散乱している状態が、この業界の特徴でもあったのでしょう。しかしeコマースは、すべてのデータがデジタル化されています。それはシステムと親和性が高いですし、ビッグデータが操れるようになり、人工知能が発達した時代には、その特徴を最大に発揮できるのではないでしょうか。
作業的な色の濃い仕事はシステム化することによってスピードと正確さを上げ、本来人間がやるべき仕事とは何かを考える必要があるでしょう。