アスクル株式会社は、オフィス用品をメインで取り扱う通販サイト「アスクル(ASKUL)」を運営している会社です。「発注翌日の配達」を意味する「明日来る」が社名の由来となっています。
その名の通り、発注から品物が届くまでの流れがスピーディーであり、多くの法人や個人に利用されています。日本ネット経済新聞が発表した2021年版「ネット通販売上高ランキング」では、アマゾンに次ぐ2位でした。
本記事では、そんなアスクル株式会社の基本的な企業情報や事業内容、強み、最近の動向などを紹介します。
アスクル株式会社の企業情報・事業内容の概要
アスクル株式会社について理解を深めるために、まずは基本的な企業情報や事業内容、会社の沿革をおさえておきましょう。
社名 | アスクル株式会社 |
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本社所在地 | 東京都江東区豊洲3-2-3 豊洲キュービックガーデン |
設立年月日 | 1963年11月 (プラス工業株式会社が前身) |
代表者名 | 代表取締役社長 CEO 吉岡晃 |
株式公開 | 東証プライム市場上場 |
資本金 | 211億8,900万円(2021年5月20日現在) |
おもなグループ会社 | ASKUL LOGIST株式会社 株式会社アルファパーチェス ソロエル株式会社 株式会社チャーム 嬬恋銘水株式会社 ビジネスマート株式会社 |
アスクル株式会社は50年以上にわたって事業を展開しており、東京、埼玉、神奈川、宮城、愛知、大阪、福岡などに物流センターを構え、スピーディーに配達が行えるように仕組みを整えています。
アスクル株式会社の事業内容
アスクル株式会社のおもな事業内容を大別すると、「中小事業所向けサービス」「大企業向けサービス」「大企業グループ向けサービス」「個人向けサービス」の4つになります。
中小事業所向けサービス
- アスクルカタログ
- アスクル 衛生・介護用品カタログ
- アスクル 医療機関向けカタログ
- アスクルWebサイト
大企業向けサービス
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SOLOEL ARENA(ソロエル アリーナ)
大企業グループ向けサービス
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SOLOEL(ソロエル)
個人向けサービス
- LOHACO(ロハコ)
- ロハコドラッグ
アスクル株式会社の沿革
アスクルの誕生からこれまでの流れを沿革としてまとめると、次のとおりです。
年月 | 沿革 |
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1993年3月 | アスクルの事業を開始 (プラス株式会社アスクル事業部としてスタート) |
1997年3月 | インターネット受注開始 |
1997年5月 | アスクル株式会社として営業開始 埼玉県入間郡に所沢物流センター開設 |
1998年3月 | インターネット受注分のみ当日配達開始(東京23区限定) |
2000年11月 | JASDAQ市場に上場 |
2002年4月 | 輸入品業務や庫内業務の合理化を目的として、アスクルDCMセンター開設 |
2003年9月 | 法人向けインターネット一括購買システム 新「アスクルアリーナ」サービス開始 |
2004年4月 | 東京証券取引所市場第一部(現・プライム市場)に上場 |
2005年5月 | エージェント(販売店)であるビジネスマート株式会社の発行済み全株式を取得 |
2009年11月 | 個人向けネット通販事業強化のためアスマル株式会社設立 |
2012年10月 | 一般消費者向け(BtoC)インターネット通販サービス「LOHACO」提供開始 |
2013年12月 | 医薬品専門店の「ロハコドラッグ」をLOHACO内にオープン |
2015年6月 | 直販ビジネス拡大に向け、ネスレ日本と物流領域における業務提携に基本合意 |
2015年9月 | 自転車での配送サービスを提供する株式会社エコ配と資本・業務提携 |
2017年5月 | ペット用品eコマース大手、株式会社チャームを完全子会社化 |
2019年4月 | 「ASKUL」サービス(BtoB)で一般用医薬品の販売開始 |
2020年1月 | CDP「気候変動Aリスト(最高評価)」企業に国内初EC事業者として選定される |
2020年12月 | 持続的成長に向け新たにパーパス(存在意義)、バリューズ(価値観)、サステナビリティ基本方針を策定 マテリアリティ(重要課題)を特定 |
2022年1月 | Zホールディングス傘下のヤフー株式会社、株式会社出前館と食料品や日用品のクイックコマースを本格展開 |
このように、アスクル株式会社はインターネット通販事業を軸足として、多品目の商材を取り扱っています。
一方で、気候変動や持続可能性といった社会的な課題にも積極的に取り組んでおり、多くの企業と連携をしながら時代に合わせた活動を推進している企業といえるでしょう。
アスクル株式会社の強みや特徴
ここでは、おもなビジネスモデルと強み、展開しているサービスの特徴を解説します。
おもなビジネスモデルと強み
アスクル株式会社では、「オフィスで必要な1本の鉛筆を明日必ず届けること」をサービスの原点としています。店舗に直接足を運ぶ以外にオフィス用品の購入手段がなかった不便さを解消するために、同社は1993年から中小規模の事業所に大規模事業所並みのサービスを提供する事業を開始しました。
また、従来の多段階流通経路を合理化すべく、独自システム「アスクルモデル」を生み出した点も特徴といえるでしょう。シンプルな流通構造を通じて、消費者に低コストかつ均質なサービスを提供することにつなげています。
さらに、独自のエージェント制度の導入により対応業務や機能を分担し、流通システムの簡素化を実現させました。消費者と直接ふれあう立場にあるエージェントと良好な関係を築きつつ、新規顧客の開拓や債権管理、代金の回収以外の業務は同社が担う形をとっています。
このように、アスクル株式会社では価値の高いサービスを提供し続けるために流通をリデザインするとともに、IT化による業務効率化を進めています。消費者の声をデータベース化することで、サービスの質の向上に努めているのです。
展開しているサービスの特徴
中小事業所向けサービス「ASKUL」
毎年アスクルカタログを発行しており、文具、事務用品、OA/PC用品、生活用品、オフィス家具、一般医療消耗品、工具、理化学用品など、約3万9,000に及ぶアイテムを掲載しています。医療や介護関連用品のデリバリーサービスも行っており、「アスクル 衛生・介護用品カタログ」や「アスクル 医療機関向けカタログ」を発行中です。
また、アスクル通販サイトでは20年以上にわたって消費者ニーズに合わせた商材を販売し続けています。
大企業向けサービス「SOLOEL ARENA」
SOLOEL ARENAは、間接材の一括購入サービスです。各拠点や工場、支店が個別に注文したり、担当者が各拠点の注文を一元的に管理したりできる仕様となっているのが特徴といえます。
大企業グループ向けサービス「SOLOEL」
SOLOELでは、購買システム・購買業務代行・データサービス(単純比較)の3つのサービスを提供しており、購買業務の最適化や効率化を図ることができます。
個人向けサービス「LOHACO」
個人向けサービスのLOHACOは、暮らしに必要な日用品を購入できるショッピングサイトであり、手軽にスピーディーな買い物ができます。
アスクル株式会社の最近の動き
アスクル株式会社では、BtoB向けに一般用医薬品の販売を開始したり、持続的な成長に向けた取り組みを行ったりしています。 ここでは、直近5年ほどの動きや新サービスの展開などを紹介します。
BtoBサービスで一般用医薬品の販売を開始
2019年4月2日に、ASKULとSOLOEL ARENAで一般用医薬品約2,000種類の販売を開始しました。胃腸薬や目薬、漢方薬など、職場にあると便利なアイテムがそろっています。 消費者の要望に合わせて商品を取りそろえることで、さらに利便性の高いサービスを実現しているのです。
新しい「ASKUL WAY」を策定
アスクル株式会社では、2020年12月に「ASKUL WAY」という方針を定めています。これは「パーパス(存在意義)」と「バリューズ(価値観)」、「DNA」で構成されており、果たすべき社会的役割を定義づけるものです。
そのほか、サステナビリティ基本方針やマテリアリティの策定を行うなど、持続可能な社会実現のための取り組みや重要課題を意識している企業といえるでしょう。
クイックコマース「Yahoo!マート by ASKUL」の本格展開
2022年1月26日、アスクル株式会社はZホールディングス株式会社傘下のヤフー株式会社、株式会社出前館と連携し、食料品や日用品のクイックコマース(即配サービス)「Yahoo!マート by ASKUL」を展開することを発表しています。2022年度中に都内23区全エリアで数十店舗規模の出店を目指しており、2023年度以降のエリア拡大も検討中です。
目を通しておきたいアスクルのトピックス
2024年4月24日:アスクル、BtoBのビッグデータをオープン化 「ASKUL ECマーケティングラボ」を始動
アスクルは、従来のBtoC事業に加えてBtoB事業にも領域を拡大し、ビッグデータ活用によるメーカーとのさらなるマーケティングの共創を目指す「ASKUL ECマーケティングラボ」を始動した。
2023年9月21日:アスクル、2023年10月末より注文金額基準を変更 まとめ注文推進で物流現場の負担軽減へ
アスクルは、事業所向け(BtoB)サービス「ASKUL」「ソロエルアリーナ」の配送サービスを変更し、同社が基本配送料を負担する注文金額基準を従来の「税込1,000円以上」から「税込2,000円以上」に変更。利用者が負担する場合の配送料金の変更も実施した。
2023年8月31日:アスクル・花王・コクヨ、発注量の平準化に向けた実証実験を共同で実施 輸送台数205台削減などの成果も
アスクルは、花王・コクヨとともに「発注量の平準化に関する実証実験」を実施したと発表。本実証実験は、アスクルが2019年に掲げた「ホワイト物流」推進運動の自主宣言の取り組みの一つとなっており、同社からサプライヤーへの商品発注量を平準化し、物量の波動を吸収することで、輸送車両台数とCO2排出量の削減を目指す。
2022年12月14日:「アスクル資源循環プラットフォーム」発アスクル新PBシリーズ「Matakul」誕生
アスクルは、事業所向け(BtoB)通販サービス「ASKUL」「ソロエルアリーナ」において、「アスクル資源循環プラットフォーム」の取組みから生まれたPBシリーズ「Matakul(マタクル)」を発売した。
2022年10月31日:アスクルがソフトバンクと協業し、中小企業のDX推進を“お困りごと相談”からトータルサポートする新事業「ビズらく」を開始
アスクルは、ソフトバンク協力のもと、2022年10月31日から、企業が抱える業務に関する困りごとをデジタルの力で解決する新事業「ビズらく」を開始する。
2022年10月21日:「アスクル商品環境基準」を策定し、商品ごとの環境配慮レベルを独自にスコア化し公表開始
アスクルは、「アスクル商品環境基準」を策定し、事業所向け(BtoB)通販サービス「ASKUL」 「ソロエルアリーナ」、一般消費者向け(BtoC)通販サービス「LOHACO」(ロハコ)において、販売しているオリジナル商品の環境配慮レベルを独自にスコア化し公表する。
2022年8月19日:最短15分で食料品などを宅配する「Yahoo!マート by ASKUL」、クイックコマース事業者として来店型店舗運営を開始
ヤフー、アスクルおよび出前館は、食料品や日用品などを最短15分で届けるクイックコマース「Yahoo!マート by ASKUL」の拠点を活用し、ユーザーが直接買い物できる来店型店舗の運営を開始した。
2022年6月22日:アスクル、AVC日高にて国内EC業界最大規模のAMR(自律走行型協働搬送ロボット)が本格稼働
アスクルは、物流センターASKUL Value Center日高にラピュタロボティクスの自律走行型協働搬送ロボット「ラピュタ PAAMR(Autonomous Mobile Robot)」を導入し、本格稼働を開始した。
2022年6月6日:LOHACO、オートロック式集合住宅向けに本日受注分より置き場所指定配送を開始
アスクルが運営する一般消費者向け(BtoC)インターネット通販サービス「LOHACO」は、オートロック式集合住宅向けに置き場所指定配送を開始した。
2022年5月17日:アスクル豊洲本社ビルで再生可能エネルギーの全面導入が開始 グループ全体の再生可能エネルギー使用率65%を達成
アスクルは再生可能エネルギーの導入を進めてきたが、今回、本社・物流センター・子会社を含めたグループ全体における電力使用量の65%が再生可能エネルギーとなったことを発表した。
2022年4月28日:「LOHACO EC マーケティングラボ」、第9期119社の参加企業と始動
アスクルは、「LOHACO ECマーケティングラボ」の第9期活動開始を宣言するキックオフミーティングをオンラインで開催し、参加企業に向けて今期の活動内容を発表した。
2022年4月18日:音声プラットフォーム「Voicy」にて、LOHACO公式「ネット通販★中の人ラジオ」を配信開始!
アスクルが運営するLOHACOは、音声プラットフォーム「Voicy」にて公式チャンネル「ネット通販★中の人ラジオ」を開設し、音声コンテンツの配信を開始した。
2022年3月22日:アスクル、顧客満足マネジメントシステムの国際規格「ISO10002」への適合を宣言
アスクルは、お客様の声への取り組みとして、顧客満足マネジメントシステムの国際規格「ISO10002」への適合を宣言した。
2022年1月19日:アスクル、事業所向けに「清掃依頼サービス」の取り扱いを開始
アスクルは、事業所向け(BtoB)通販サービス「ASKUL」において、全国エリアを対象にユアマイスターが提供する「清掃依頼サービス」の取り扱いを開始した。
まとめ
オフィス用品の販売をメインの事業としているアスクル株式会社は、中小企業だけでなく大企業や個人向けのサービスも展開しています。近年では一般用医薬品の取り扱いや、食料品や日用品の即配サービスを始めるなど、新たな事業展開の動きも見られます。
消費者の声を大事にし、日々の業務や暮らしに密着したサービスを展開しているからこそ、商品の品揃えやサービスの利便性の向上に結びついているといえるでしょう。