小売ビジネスのこれからは? キーワードは「店舗回帰」と「フェス感覚」
こうした事例を踏まえ、深田氏は大西氏にこう問いかける。
「デジタルが使えることが当たり前の時代ではない。これがまだ各社の実情ではないでしょうか。店舗スタッフを巻き込み、オペレーションを変えるなど、乗り越えるべきハードルはたくさんあります。意識変革や改革を促進するにはどういった工夫が必要でしょうか?」(深田氏)
これに対し大西氏は、「デジタル対応がどう顧客のメリットになるかを知ってもらうことが必要」だと説明。コストがかかり、新たな手順を覚える必要があったとしても、「自社の体験をより便利にするために欠かせない取り組みだと知ってもらうことが大切」だと続けた。
そして、大西氏から今後の小売ビジネスにおける注目ポイントが語られた。
「店舗への需要回帰は今後必ず訪れます。しかし、これまで同様の体験を提供するのではなく、商品との出会いや実際に触れて試せる、ブランドへの学びを与えるといったオンライン、オフライン双方からのアプローチをする必要があります」(大西氏)
加えて、これからの売場に求められるのは「フェス感覚」であると補足する大西氏。企業やブランドが単体で実施するライブ配信だけでなく、商業施設によるショッピングライブや新たな買い物導線の構築、長時間の生中継などで楽しさを演出し、目で見て楽しみたい人は直接足を運ぶといった選択肢の多様化もさることながら、メタバースやNFTなど最新テクノロジーの活用にも注目だと言う。
「今は『わくわくするショッピング』を演出する場作りが必要です。東京ガールズコレクションがオンラインでも盛り上がりを見せていますが、どうしたらこのような体験が作れるのか、その場をより楽しいものにできるのか、私も考えていきたいと思っています」(大西氏)
最後に、こうしたポイントを踏まえて深田氏から商品の良さをより的確に伝え、自社ECの充実化やOMO推進を実現する手段として「Sprocket」のサービスが紹介された。同サービスでは、リアルタイムパーソナライゼーションとABテスト、行動分析をかけ合わせて、SEOやWeb広告、SNS/メルマガ、リターゲティング広告などといった従来型の「集客」「追客」からさらに一歩進んだ「接客」をWeb上で実現する術を備えている。動画を使った新規ユーザーへの接客アプローチで、カート投入率を111.4%に改善した事例も紹介された。
深田氏は「マルチステップでていねいに行うWeb接客など、Sprocketには『おもてなし』をする上で必要な機能が揃っている」と語った上で、リソースの確保が難しいEC事業者に対しては改善の提案など、継続的な伴走体制があることにも言及。「これまでの知見から、店舗スタッフのような人間理解や顧客がつまずくポイントのモデル化を行い、ブランドの体験、良さを理解してもらうにはどうすべきか、最適解の提案を今後も行っていく」と意気込みを語り、セッションを締めくくった。