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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

運営堂がゆくEC業界対談

ShopifyありきのEC構築は失敗のもと!?  よくある失敗事例をコマースメディア井澤さんに聞く


 運営堂の森野さんが日々の情報収集で気になったことをインタビューしていきます。今回はコマースメディアの井澤さんにShopifyでの失敗事例についてお聞きしました。流行っているから、聞いたことがあるからといって構築してしまうと大失敗することもあるそうです。

Shopifyの知名度は上がったけれど…… 便利なものも使い手次第

森野(運営堂) ちょうど1年ぐらい前に、Shopifyの強みがどこにあるのかというインタビューをさせていただきました。その後、あっという間に広がってShopifyのニュースを見ない日もなくなりましたし、EC業界ではShopifyでの構築がどんどん増えています。しかし、広がったがゆえに、トラブルやうまくいかない事例も増えていますよね。今日はこのあたりのお聞きできればと思っています。

井澤(コマースメディア) 弊社がShopifyを使い始めたのは2016年ぐらいで、その当時はShopifyを知っている人が少なかったため、そもそもShopifyとは何かを教えることから始まっていました。当時と比較すると大きく変わりましたね。

コマースメディア株式会社 代表取締役/Shopifyエバンジェリスト 井澤孝宏さん
コマースメディア株式会社 代表取締役/Shopifyエバンジェリスト 井澤孝宏さん

森野 ここまで広がってくると、「よくわからないけれど、ShopifyでECサイトを作れば売れそうだから」というパターンが増えていそうです。「とりあえずShopifyでやりたい」といった問い合わせは増えていますか?

井澤 最近はShopifyありきの依頼が増えていますね。何となくよさそうだから、よく聞くからという理由が主なもので、弊社にいただくお問い合わせの7,8割はこれにあたります。

森野 7,8割とはかなり多いですね! この理由で作りたい人が増えているということは、制作会社さんはウハウハというか、とりあえず作ってしまえば売上が増えていきますよね。でも、これって……。

井澤 良くないですよね。ECサイトの構築は作る前の要件定義がとても重要だと思っていまして、リプレースの時はさらに重要というか、要件定義をしないとほぼ事故になります。

森野 ほぼ事故になるというのはわかりますね。前の仕組みと同じことができるわけでもないですし、外部の連携ツールや社内の基幹システムとつながるかもわからないので、その確認をしないと120%うまくいかない感じです。

井澤 リプレースの理由で一番多いのは、今のプラットフォームの機能に満足していないから良くしたいというものなんですが、何となくリプレースというのも増えてきています。有名な経済紙で取り上げられたというのもありますし、誰もが知っているような企業でのShopifyの成功事例を経営者が見て、Shopifyにしろとお達しを出すとかです。現場はそんな必要性は感じていないけれども、やらざるを得ないみたいな流れですね。

森野 よくあるというか、ありすぎるというか……。現場の人は本当に動きたくないでしょうね。

井澤 このプロジェクトだと成功確率はものすごく低いので、作る前に「失敗しますよ」とちゃんと説明すると9割がたのお客様でストップしますね。「ありがとうございます。私から社長に説明します」という流れです。ストップする明確な理由を提供するのも我々の仕事だと思っています。

森野 後になってみんなが困るのであれば、自社の利益よりも止めるほうが優先ですよね。これ以外で私の周りで多いのは、代理店がShopifyをすすめているけど、実は代理店もそこから発注される制作会社さんもあまり詳しくなくてトラブルになるパターンです。

井澤 代理店様から弊社にかかわってほしいという御要望は多いですね。Shopifyを導入するので一緒に提案してほしいというものです。同じくここでも「ちょっと待ってください」と。Shopifyが良いかどうかの判断はECの知見がないとできませんよね? ECに詳しくなくて、これが良さそうだからやっておけば良いんでしょうというのが本当に多くなっていると感じています。

森野 同じような流れで、「補助金が出るからそれでECをやりましょう。Shopifyにしましょう」というパターンも増えてきましたよね。

井澤 弊社にいただくお問い合わせの中でも10%ほどは補助金関連なのですが、目的と手段が反対になってしまっているのがほとんどです。数年前はIT補助金のベンダー登録はしていましたが、やってみたところ、補助金があるからECサイトを作りたいというものばかりでした。売上を上げたいとか、新しい事業に投資をしたいからシステム開発するとか、前向きなチャレンジに補助があるというのが本来あるべき姿なのですが……。補助がなかったらやらないのですか?と思ってしまいますよね。

森野 補助金が欲しくてECサイトを作りたいだけなのであれば、それで満足なのかもしれませんけど、何のためにやっているのかと考えたくなりますよね。

井澤 その続きもありまして、補助金で作ったECサイトが結局のところ売れないとか、ここの機能をもっとこうしたいという要望が、最初に作った企業様ではなくて弊社に来るといったのが増えましたね。

運営堂・森野誠之さん
運営堂 森野誠之さん

森野 う~ん、なんだかんだでECサイトを作ったらそこで売りたいんですね。であれば、最初からその目的で始めればいいものを……。それにしても、他の人がShopifyで作ったものを直すことはできるのでしょうか?

井澤 そこはこれまでの経験から、「こういうパターンでつくったよね」という傾向がわかるため対応は可能です。直すよりもテーマごと入れ替えてしまったほうが早いこともありますけどね。

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この記事の著者

森野 誠之(モリノ セイジ)

運営堂代表。Web制作の営業など数社を経て2006年に独立後、名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。現在はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析を活用したサイト・広告改善支援を中心にWeb制作会社と提携し、分析から制作まで一貫してのサービスも開始。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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