ECは情報収集の場、お気に入り登録はメモ代わり クロスユースする顧客の実態
ここでスピーカーが阪氏から宮下氏に変わり、文脈がつながった体験提供を実現するための「知る」重要性について紹介がされた。
OMOを実現するには、「取得した顧客データをN=1の解像度で見る必要がある」と宮下氏は強調。「オンライン・オフラインで横断的な価値を表現するには、人軸でデータを蓄積することが不可欠。そうすることで、初めて顧客を理解できる」と続ける。
ここで宮下氏は、あるアプリを使う顧客へのアンケートをもとに、オンライン・オフラインのデータを統合することの意義を解説した。オンライン上で行った同アンケートで「店舗に行くきっかけ(理由)」と「店舗に行く際、もしくは店内で知りたい情報」について聞いたところ、前者は「ウェブサイトで見た商品の実物を見るため」がトップとなった。なお、後者は「(ウェブ上で)お気に入り登録したアイテムの情報」という結果になっていると言う。
あくまでひとつのアンケートから導き出された結果だが、オンライン・オフライン双方のチャネルを有する企業で購入検討する顧客は、ウェブ(EC)を店舗に足を運ぶ前の情報収集手段として活用し、メモ代わりにお気に入り登録している様子がうかがえる。
さらに別のブランドでは、会員登録をしているユーザーを対象にEC・アプリの利用データと店舗のPOSデータを定量的に分析したところ、「店舗で商品購入・会員登録した顧客の約70%が当月中にECに来訪」「EC購入者の約30%が当月中に店舗でも購入」していることが明らかとなっている。つまり、自社の会員になってくれているロイヤリティが高い顧客は各チャネルをクロスユースしており、EC・アプリの存在が店舗の売上にも寄与していることが見えてきたのだ。すると、これらのチャネルをどう使い分けるべきか、オンライン・オフラインそれぞれでどのような商品をアピールしていくかといった、より顧客の実態に合った施策検討が必要となる。
「N=1の解像度で見なければ、こうした示唆を得ることはできません」(宮下氏)