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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECアナリスト・本谷知彦が解説 越境ECの今と未来

越境ECが日本企業にとって重要な本当の理由 個人消費が伸び悩む中で打つべき対策とは

 インバウンド需要の回復や円安などにより、海外顧客へのアプローチを本格化している企業も多いのではないでしょうか。株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦氏が、あらゆるデータを活用して越境ECの今と未来を考える本連載。第1回は、日本市場の現状とともに、各社にとって越境ECがどのような可能性をもつのか紐解きます。

越境ECの現在地は「啓発期」

 現在、訪日外国人数がV字回復しています。これには、円安も大きく影響していると見られており、今後もしばらくの間は、今の状況が続くでしょう。このトレンドは、越境ECにとって追い風です。そこで、越境ECの現在地を確認してみたいと思います。

 次の図は、米国の調査会社・ガートナー社が提唱したハイプ・サイクルという、新しいテクノロジーやビジネスがどう歩んでいくか、その過程を表したものです。ハイプ・サイクルは、期待度の高まりと時間の経過の2軸で表現されており、多くのトレンドがこの曲線に沿うとされています。

ハイプ・サイクルに基づく越境ECの現在地 出典:筆者作成
ハイプ・サイクルに基づく越境ECの現在地 出典:筆者作成

 越境ECが日本で注目されはじめたのは、訪日中国人による爆買いが話題となった2015年頃だと私は見ています。以降、多くの企業が越境ECを実施しましたが(過度な期待のピーク期)、成功に至らなかった事例も多くあり、トレンドは鎮静化したように見受けられました(幻滅期)。

 そして、コロナ禍を経て改めて越境ECに注目が集まり、最近はその支援企業による中身の濃い情報発信が増えてきている印象を受けます。ハイプ・サイクルにしたがえば、現在越境ECは緩やかな上昇機運に乗っている状態であり、これから先、安定期に向かうものと予想できます。

円安と訪日外国人増加だけが越境ECに注目する理由なのか

 近年、越境ECへの注目が増している背景には、歴史的な円安、それにともなう訪日外国人の増加が挙げられます。インバウンドビジネスを展開する企業にとっては、嬉しい限りです。そして、その流れは越境ECに対する関心や期待へとつながっています。訪日時に気に入った商品を、帰国後に越境ECで購入してもらうといったように、帰国後の消費者ニーズの受け皿になってほしいと願う企業は多いのではないでしょうか。

 しかし、私は少し立ち止まって客観的な状況を理解する必要があると思っています。円安と訪日外国人の増加が、越境ECの追い風になっていることは間違いありません。ただし、もし為替が円高に転じたとしたらどうでしょうか。そして、それによって訪日外国人が急に減少したら、企業は越境ECへの関心を失っても良いのでしょうか。

 私は、こうした外的要因に左右されることなく、越境ECが恒久的な施策になってほしいと願っています。次のページでは、なぜ日本企業にとって越境ECは重要なのか、データを交えながら説明します。

次のページ
国内市場のみに新商品を投入しても「ゼロサムゲーム」?

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この記事の著者

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦(モトタニ トモヒコ)

シンクタンク大和総研にてITの主任研究員、金融システム系コンサルタント等を経て、2013年より国内外の産業調査・コンサルティング業務にシニアコンサルタントとして従事。2017年担当部長兼チーフコンサルタントに就任。EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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