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イメージぴったりの画像を作る生成AI 人のクリエイティビティは不要なのか
2023年秋の定点観測でも触れられた、動画・クリエイティブ領域での生成AI活用。約1年経ち、当時と比べると「制作現場に登場するケースは格段に増えている」と久保田氏は語る。
「特に背景静止画への活用は顕著です。たとえば、あるシチュエーションを表現した背景を合成したい場合、従来はストックフォトから理想に近い素材を探していましたが、今は生成AIを使えばイメージにぴったりな背景が作り出せます。
これまでは『テーブルの上にマグカップとお皿が1枚置いてあって……』といった細かなシチュエーションに完全に合致した素材がなければ自ら撮影するか、ありもので妥協しなければなりませんでした。しかし適切な指示さえ与えれば、生成AIは自分の頭の中で描いた絵を忠実に再現してくれます。工数を抑えつつ、クオリティーを担保する良い手段として今後さらに広がっていくのではないでしょうか」
しかし、クリエイティブ領域の生成AI活用は、AIが「どこから学習しているのか」を正しく把握しておく必要がある。特に広告の場合は商用利用となるため、著作権侵害とならないよう、より一層注意を払わなければならない。予算がないからといって、無料で画像生成できるツールやサービスを利用するのはご法度だ。
「Adobeが提供する『Adobe Firefly』のように、トレーニングのソース元や利用範囲について明確に言及されているツール・サービスを利用するのが良いでしょう。また、一般的に『利用しても大丈夫』といわれていても、本当に自分の求める用途で利用可能なものなのか、リスクがどこに存在するのか確認する癖をつけるのも大切です」
動画を含む広告運用の中でも、特にコピー(テキスト)への生成AI活用は浸透しつつあり、「かつていわれていたような『100本ノック』をしなくても、今はChatGPTがあらゆる切り口のコピーを出してくれる上、AIが作ったコピーのほうが良い成果を発揮するケースも増えている」と続ける久保田氏。AIはデータを基に判断していると踏まえれば、多くのケーススタディをもつAIのほうが人間よりも優勢になるのは想像に容易いが、今後広告クリエイティブの世界もどんどん機械化されていくのだろうか。
「たとえば、テキスト広告は素材が『文字』のみで、並びによって受ける印象こそ変わるものの、AIに代替してもアウトプットそのものに差異がありません。むしろ、勝ちパターンをデータとして蓄積するAIのほうが優位です。
しかし、画像や動画は指示に対して的確な表現をするだけで成立せず、トンマナなど要素が多く存在します。そのため、まだ『生成AIで作られた素材は違和感を覚える』『どことなく不気味さがある』といった意見が多いと考えられます。このあたりがどう進化していくかによって、今後の動きも変わるでしょう」