「自分の会社をもっと自慢したい」 なぜそう思えるのか
2024年4月で創業100周年を迎えた木村石鹸工業。2013年に4代目を継いだ木村祥一郎氏は『くらし 気持ち ピカピカ ちいさな会社のおおらかな経営』(主婦の友社/木村祥一郎 著)の冒頭で、当時をこう振り返っている。
1年後もわからない状況で、10年も先のことなんてわかるわけがない。自分は10年この会社を継続できるのか、考えるだけで不安になりました。(中略)
あれから11年、無事に100周年を迎えることができ、僕は正直、心からほっとしています。(P.2)
木村氏が同社の経営を続ける上で、特に大切にしているのが「人」だ。たとえば、採用では経歴や能力以上に「性格のよさ」を重要な判断基準としている。実際、化粧品開発者の求人に対して、元々自動車会社の工場で働いていた人を「いい人だから」という理由で採用。結果的に、社内のコミュニケーションがより活発になっていると言う。
その背景として、木村氏は「『company』も『会社』も、その根底には『仲間』がある(P.56)」と語っている。こうしたコミュニティ重視の考え方が、今の木村石鹸工業らしさを形作っているのかもしれない。
「ありのまま」の価値を評価するには
「人ありき」で独自の採用基準をもつ木村石鹸工業だが、給与体系や人事評価も特徴的だ。社員一人ひとりが、自分の給与を自ら提案する「自己申告型給与制度」を導入している。この制度上、各社員は給与額を上げるために、今後の新たな取り組みや役割を能動的に生み出さなければならない。
ところが、中には役割も給与も「現状維持でいい」と考える社員もいる。では、彼らは新たな価値を提供できていないのだろうか。この問いに対して、木村氏は「being(ありのまま)の価値」を取り上げ、自身の考えを共有する。
彼自身が何か新しい取り組みをしていなかったとしても、彼の存在が、その場の人たちの安心感につながっているのであれば、新人が入ったり、人が増えたりしたときに、必然的に彼の価値は高まっていると言えるのではないでしょうか。(中略)
「beingの価値」をないがしろにしていると、それは少しずつ歪みとなり、周りの人たちのパフォーマンス(「doingの価値」)を下げてしまうことになるんじゃないかと思うのです。(P.63)
そのほか、本書では木村氏が「くらし 気持ち ピカピカ」を体現する仕事論を紹介している。顧客や取引先だけでなく、社員にとっても嬉しい会社の条件とは何か。その答えが見つかるのではないだろうか。