ぶつかった「送料」の壁 道外の需要に応えるアップデートとは
──ベル食品は、北海道内の小売店などを通じたオリジナル商品の販売、自社工場での受託製造を主要事業とする一方で、自社ECサイトの運営も行っています。いつ、どのような背景でEC事業を始めたのでしょうか。
ジンたれ君 当社の主力商品である「成吉思汗たれ」は、旅行で訪れた人にお土産として購入されることも多いです。進学や就職で北海道を出た人が、里帰りのついでに買って帰る、もしくは実家から送ってもらうケースも少なくありません。こうした北海道外の需要にも応えるため、当社は2000年にEC機能を備えたホームページをオープンしました。2013年には楽天市場とAmazon、2015年にはYahoo!ショッピングでの販売も開始しています。
私は2022年6月に入社し、現在EC運営と広報を担当しています。以前は化粧品や健康食品をECサイトで販売する北海道の企業で、7年にわたって責任者を務めていました。また、その後も同じく道内の大手小売で、2年間DX推進に携わりました。これまでの経験を生かして、ベル食品のEC事業を成長させるのがミッションの一つです。
──入社後、EC事業のアップデートを行ってきたそうですが、特に苦労した点を教えてください。
ジンたれ君 北海道でEC事業を展開する際に、必ずといって良いほどぶつかる壁が「送料」です。仮に自社で東京都まで配送する場合、1,000円以上かかります。購入金額に対して送料が高いと、お客様はわざわざ自社ECサイトで購入するメリットを感じられません。
また、リソースが少ないのも中小企業ならではの課題です。私が入社した当時、EC経由で注文が入った日は、本社から離れた倉庫に在庫を取りに行き、ほかの業務と並行して梱包・出荷作業を行っていました。そのような状況では、今後EC事業が拡大し注文数が何倍にも増えたときに、対応しきれなくなるのは明らかでした。
そこで、私が真っ先に着手したのが受注と物流体制の整備です。委託先やツールの選定、社内への説明を進め、ようやく2023年4月にEC販売用の在庫管理を関東の物流企業に外部委託することができました。
同時に、受注と在庫の一元管理ツールを導入し自社ECサイト・ECモールと連携するなど、発送の自動化も実現しました。そのかいあって、今では沖縄県を除き送料を全国一律800円に抑えつつ、注文が多い日でも社内のリソースをほとんど使わずに発送できています。
──さらに、2023年9月に自社ECサイトをShopifyに移行し、大幅リニューアルしています。どのような機能が追加されたのでしょうか。
ジンたれ君 新たな自社ECサイトは、レビュー機能の実装、コーポレートサイトとの商品情報の統合などにより、お客様の利便性向上を図っています。リニューアル後、EC全体で売上が120~130%程度伸びました。
今後は、コーポレートサイトに掲載しているレシピ情報も自社ECへ移行する予定です。商品とレシピの情報連携をスムーズにして、自社ECサイトの回遊性やSEO効果の向上を目指します。そのほか、大量購入する人や飲食店向けのBtoB専用サイトとの統合なども検討中です。売上アップとともに、社内の情報管理やEC運用の効率化を実現したいと考えています。
現時点で年間EC売上は1,200万円程度、EC化率は1%にも満たないですが、私は当社のEC事業にまだまだ伸びしろがあると確信しています。元々、社員全員がEC事業のポテンシャルを感じていたものの、ノウハウとリソースがなく手つかずの状態でした。しかし、現在は事業拡大に向けた体制が整いつつあります。まずはEC化率1%をクリアし、5%、10%と徐々にステップアップできる体制を作るのが当面の目標です。