自身も学びながらECリニューアルを実現 新たな組織作りも
2013年に広告代理店からマドラスに入社し、原宿に構えた新業態の実店舗運営や広告宣伝を手掛けていた岩田さん。「新しいことに取り組みたいという自身の意向と、企業としてやるべきことを考えた結果、ECに活路を見出した」と言うが、2021年1月にリニューアルした現自社ECサイトを形にするまでも、さまざまな壁にぶつかったと振り返る。
「私自身がECに携わるようになったきっかけは、2017年にさかのぼります。経営陣から『実店舗とECの在庫連携を行うように』と指示を受け、社員と一緒にさまざまなECベンダーへヒアリングをしました。
実は、マドラスの自社ECサイトはこれまで、数年に一度リプレイスをするという混乱を極めていました。次こそは腰を据えた仕組みを導入しようと思い、2019年にあるモールの仕組みを活用して在庫の一元化を行ったのですが、私がECを十分に理解しておらず目的が曖昧なまま進めてしまい、実店舗とEC会員のデータ統合ができないといった、今となっては初歩的なミスを犯してしまったのです」
他社がどのようにEC運営を行っているのか知らず、自社内でひたすら目の前の課題と向き合い続けた岩田さんは打開策を探るため、2019年4月にECエバンジェリストの川添隆さんのところへと足を運ぶ。そして、同年6月に開催された交流と学びのイベント「ZOE祭 2019」で意見交換をする中で、ヒントを得たと言う。
「当時の経営課題と、自身が抱える課題をある方に相談したところ、『何をやりたいかが明確でないと何もできないよ』と言われたのです。そして、実店舗を持つ企業がこれからの時代に目指すべき道筋や、やるべきことについても教わりました。私はオムニチャネルの概念すらきちんと理解していない、そして、これからECを推進するには組織含めて変えていかなくてはならない、ということにも気づかされました」
2019年12月、ECサイトリニューアルに本格的に着手すると同時に、岩田さんは組織体制にも手を加えた。従来のEC担当者に加え、実店舗スタッフ3名を新たにEC課に招集。実店舗とEC双方を理解する人材を増やすことを目論んだが、「実店舗から異動させる」という人事についても、賛否があったそうだ。
「これからの時代は、ECも店舗のひとつとして運営する必要がある。そう考え、実店舗での販売経験を持つ人材に異動してもらおうとしましたが、調整には苦労しました。また、ECリニューアルに取り組むにあたり、『今後はさまざまな組織の動きを把握する必要がある』『他部署とのコミュニケーションが重要である』と既存メンバーにも伝えましたが、これまで自身の業務に集中して取り組み、独自路線を進んでいたこともあり、すぐにスタンスを変えることは難しかったようです」
他部署との関係構築を図るために、岩田さんは「組織変革以降、実店舗スタッフとEC担当者で定期的にミーティングする機会を設けた」と語る。
「実店舗とECの情報共有なしに良い売場作りはできません。私たちのビジネスはお客様あってこそのものですから、自分たちの都合で仕事を進めるのではなく、『お客様がどう感じるか』『お客様にとってどう見えるか』という議論を進める必要があります。同じ方向を向いてシナジーを生むには、EC担当者も実店舗で何が売れているかきちんと把握すべきですし、実店舗スタッフもECでこれから何を実現しようとしているのか理解しなくてはなりません。忍耐が必要ではありますが、これからも諦めずに伝え続け、全員に当事者意識を根づかせていく必要があると考えています」