「Z世代のZOZOテク社員が語る 中国EC最新トレンド」と題して、これまで4回に分けて、中国のECトレンドをお話してきました。今回はまず、中国ECの傾向とトレンドワード・売りかたについておさらいするところから始めます。
中国ECの傾向
- 中国に根づいた文化をサービスとして展開
- 最前線のテクノロジーを活用
- ひとつのサービスの中ですべてを完結
中国ECにおけるトレンドワード・売りかた
- ソーシャルコマース
- ライブコマース
- 共同購入
最終回となる当記事では、これまでお伝えした中国ECの動向を踏まえた日本のECの変化と、今後の展望を中国のトレンドに沿って解説いたします。
日本にも広がるソーシャルコマース プラットフォーム構築が鍵に
1. ソーシャルコマース
第2回でもお伝えした、中国ECにおけるトレンドのひとつと言えるソーシャルコマースプラットフォーム。日本においても、SNSのようなソーシャル要素とECが結びついているサービスは、すでにいくつか展開されています。
その中でもとくに有名なのが、「ショッピングSNS」と呼ばれる投稿型ソーシャルサービス「楽天ROOM」です。楽天ROOMでは、楽天市場で購入した商品の写真を撮影して投稿したり、気になるユーザーをフォローしたりすることができます。また、投稿型SNSとECが連動しているため、フォローした他ユーザーの投稿からそのまま商品を購入できる点も特徴です。
同サービスでは、自身の投稿経由で商品が購入されると、ユーザーランクに応じた楽天ポイントが付与される仕組みとなっています。第2回の記事内で説明した「RED」同様、ユーザーランクの可視化とランクごとに付与されるボーナス率の違いを明記することで、投稿のモチベーションを上げています。
楽天ROOM ボーナスポイントの仕組み(2021年3月時点)
- 楽天アフィリエイトから付与される通常報酬:2~8%
- ROOMから付与されるランクボーナスポイント:Sランク3%、Aランク2%、Bランク1%、以下0%
1.と2.に応じたポイント付与を実施することで、ユーザーのランクアップに対する意欲を高め投稿を促進している(参照:楽天ROOM「ROOMランク」)。
なお、スニーカーが好きなユーザー同士で交流を深めることができるEC「SNKRDUNK(スニーカーダンク)」も、ソーシャルコマースプラットフォームのひとつです。スニーカーを主に取り扱う同サービスでは、商品の購入はもちろん、自身のアカウントから写真や雑談を投稿することもできます。商品詳細ページでは、その商品に紐づく他ユーザーの投稿が閲覧できるため、スニーカーファン同士でコメントを送り合いながら、興味ある商品に関する情報を得ることができる点も特徴です。
また、同サービスでは出品者と購入者の間に運営会社が入ることで精密な商品鑑定が行われ、本物と認められた商品のみが出品される仕組みも備わっています。これにより、ユーザーは安心して商品購入ができるのです。
このように、日本でも近年ソーシャルコマースプラットフォームと言えるサービスが徐々に浸透していますが、認知から購入までひとつのアプリ内で完結できるサービスは、まだまだ少ないのが現状です。日本でソーシャルコマースの普及がなかなか進まない背景には、ECプラットフォームとSNS双方のサービス提供に踏み出せる企業がそもそも少ないことも挙げられます。
中国のソーシャルコマースは、習慣や文化に合わせた独自の発展を遂げています。そのため、日本で同じようなサービスを成立させるのは難しさもあるのでしょう。しかし、シェアによって認知の輪を広げたり、他人とコミュニケーションしながら楽しく買い物ができたりといった「買い物のおもしろさ」を創出できるのが、ソーシャルコマースの特徴です。サービスの根幹を見つめ、すでに日本で成立しているサービスなども調べた上で、自国のユーザーが求める形で再現する視点も必要と言えます。