前回の記事では、EC先進国である中国の最新EC事情についてお話ししました。中でも「ソーシャルコマースプラットフォーム」といった、ユーザー間でのシェア・交流・クチコミをメインとしたECアプリが数多く存在することは大きな特徴と言えます。これらの流行背景には中国のライフスタイルや文化が大きく関係しており、テクノロジー・機能・ユーザー体験の面でも、今後さらなる進化を遂げると予想されます。
今回は、ソーシャルコマースプラットフォームによりフォーカスし、流行の背景やZ世代に人気な主要アプリの特徴についてご紹介します。日本ではあまり見ることのない購買の仕組みやユニークな機能も多いため、新しい発見につながるはずです。
そもそもソーシャルコマースプラットフォームって何だろう?
ソーシャルコマースプラットフォームとは、ソーシャルメディアのプラットフォーム上でショッピングができる機能を指します。従来は、ソーシャルメディアで友人やインフルエンサーの投稿や、一般ユーザーのクチコミなどを確認し、気になった商品があれば一度離脱し、ECサイトを開いて検索・購入という流れを踏む必要がありました。しかし、ソーシャルコマースプラットフォームでは、クチコミや投稿を見たその場で購入希望の商品を選択し、そのまま決済まで行うことができます。
ソーシャルコマースプラットフォームは、認知から購入までの流れを従来よりもシームレスにしています。ユーザー・ブランドともにメリットが多く、中国では若い世代をはじめとして利用者が増えています。
なお、中国のソーシャルコマースプラットフォームにおける取引額は、2020年で4兆元(日本円で約63兆円)を超えると言われており、前年比増加率は80%と劇的な成長を遂げています。2020年上半期においては、ECにおける購入の35%がソーシャルコマースプラットフォーム経由となっており、近年台頭したプラットフォームにもかかわらず大きな割合を占めています。2020年は、新型コロナウイルス感染症流行の影響でEC購入がより一般的になったことが後押しとなり、7.5億人の消費者へソーシャルコマースを用いたサービスの提供が行われるのではとの見込みが出ています。
中国におけるソーシャルコマースプラットフォームの種類は、「内容型」「共同購入型」「会員型」「コミュニティ型」の大きく4つにわけることができます。図表は4つすべてを含む数値となりますが、今回の記事では主に内容型のプラットフォームについて解説を行います。
中国でここまでソーシャルコマースプラットフォームが大衆化した背景は、いったい何なのでしょうか。この問いに対する答えは、中国に根づく「人軸で商品を認知し、興味を持つ」という文化が大きく関係していると言えます。