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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

季刊ECzine vol.16特集「Future in EC Success~LTV向上を叶える顧客始点とCX~」

体験創造で接客の価値を生む 実店舗のデジタル活用で親密に ワコール流・顧客とのつながりかた

 女性の「美」「快適」「健康」に寄り添うワコール。デジタルの力で顧客と新たなつながりを生む。 ※本記事は、2021年3月25日刊行の『季刊ECzine vol.16』に掲載したものです。

 1946年に創業し、女性向けインナーウエアを中心に事業展開する株式会社ワコール。近年は研究から販売に至るまでのバリューチェーンを顧客起点で見直し、事業改革に積極的に取り組んでいる。中でも注目を集めるのは、実店舗でデジタル技術を活用した革新的な接客サービスだ。3Dボディスキャナーによる採寸とAI(人工知能)による接客を組み合わせた「3D smart & try」や、アバターを活用したリモート型カウンセリングシステム「Ava.COUNSELING(アバカウンセリング)パルレ」を開発した経緯や同社のOMO戦略、今後のビジネスの展望について、同社取締役 常務執行役員 総合企画室長の加茂下さんに話を聞いた。

株式会社ワコール 取締役 常務執行役員 総合企画室長 加茂下泰生さん

顧客のためらうポイントをデジタルの力で解消

 ワコールでは、コロナ禍以前よりデジタルを活用した店頭サービスの展開を開始している。先陣を切ったのは、2019年5月より導入を開始している「3D smart & try」だ。同サービスでは、3Dボディスキャナーを用いて全身の計測をセルフサービスで利用することができる。同社が独自開発したスキャナーがわずか5秒で体の周径や体積を計測し、顧客の体型の特徴を判定。計測データは店頭に設置されたタブレットで確認でき、データを基にAIキャラクターの「フレルちゃん」が最適な商品提案を行うほか、プロのビューティーアドバイザー(販売員)によるカウンセリングを受けることも可能となっている。計測自体は無料で実施、計測データが記載されたシートをプリントアウトして持ち帰り、後日ECや再来店して購入する際の参考とすることもできる。現在、同サービスは東京、大阪にあるフラッグシップショップ2店舗をはじめとする全国15店舗で導入されている(2021年1月末時点)。

 さらに2020年10月には、ビューティーアドバイザーのカウンセリングを非対面で実現する「Ava.COUNSELINGパルレ」を導入。同サービスは、HEROES株式会社のアバターコミュニケーション技術「Ava Talk」を活用し、リモートで対応するビューティーアドバイザーの表情や動きを読み取ったアバターが、インナーウエア選びのカウンセリングを実施するもの。モニター越しではあるものの、リアルタイムでの会話を実現し、ロボットなどでは困難な柔軟性のある接客を実現している。同サービスは、東急プラザ表参道原宿店に現在導入されており、今後も反響を見ながら対応店舗を増やしていく予定だ。

 近年、チャットやビデオツールを用いてECへ接客サービスを拡充する動きが増えている。しかし、ワコールの取り組みはいずれも実店舗におけるデジタル活用に重きを置いており、他社と比べても特徴的だ。こうしたサービス誕生の背景には、インナーウエアを扱う企業ならではの接客販売における課題があったと加茂下さんは言う。

「お客様の中には、ビューティーアドバイザーに体を見られたり触れられたりすることに抵抗があると店頭での採寸をためらう方もいらっしゃいます。採寸したら商品を購入しなくてはならない、プレッシャーを感じるという声があることも事実です。一方で、私たちはお客様の体に合ったインナーウエアを身につけていただきたい、お客様に最適な商品をできるだけストレスなく選んでいただきたいと考えています。そこで3D smart & tryの開発がスタートしました。Ava.COUNSELINGパルレに関しても出発点は同様です。体の悩みについてはセンシティブな内容もあり、ビューティーアドバイザーと対面で会話をすること自体にストレスを感じる方もいらっしゃいます。そこで、気軽にご相談いただける手段としてアバターを導入してみようとなりました」

 3D smart & tryは2017年11月より開発に着手し、リリースまでは約1年半。Ava.COUNSELINGパルレは2019年秋より構想を開始し、約1年の開発期間を経て導入に至っている。各デジタル技術が向上し、サービスとして提供できる段階となったこと、デジタルコミュニケーションが人々の生活に根づきつつあることも実現に至った大きな理由ではあるが、同社のサービスの始点はあくまでも顧客にある。顧客のニーズや課題を把握した上できちんとそれらと向き合い、ソリューションとして実現している点が特徴だ。

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この記事の著者

松岡 亜希(マツオカ アキ)

フリーランスのライター&エディター。出版社勤務を経て独立。雑誌、書籍、Webサイト、企業広報などさまざまな分野で活動中。● http://pubapart.com/

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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