コロナ禍でも好調なウォルマート AIで実現できること
新型コロナウイルス感染症の流行により、消費者の購買行動は大きく変化した。街に出かけて買い物をするという行動が「当たり前」ではなくなり、大幅な売上・利益減でダメージを受けている実店舗も多い。一方で、外出自粛によってオンラインで買い物をする消費者が増えたことにより、成長を遂げるEC事業者も存在している。
そんな中、多数の大型店舗を運営しながら順調に売上・利益を伸ばし続けているのが、アメリカの小売最大手企業ウォルマートだ。2020年8月~10月期の決算では売上高5%増。純利益に至っては56%増となった。
「その大きな要因となったのが、オンラインの注文を実店舗で受け取ることができるピックアップサービスや当日宅配サービス『Walmart+』などの、オムニチャネル戦略です。それらを支えるテクノロジーのひとつとして、ウォルマートではAIを積極的に現場に導入しています」(平原氏)
実際に、2021年1月に開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES 2021」では、同社CEOのダグ・マクミロンCEO氏がAI、ロボット、5Gなどのテクノロジーを活用したビジネス変革の重要性について言及している。
なお、AIという言葉の定義は、研究者によって若干見解が異なるケースがあるため、平原氏は次のように整理した。
「当セッションでは、東京大学 松尾豊教授の定義を引用して、AIとは『人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術』とします。また、私がお話するビジネスの現場で利用されるAIについては、『データを統計的に解析して、そこから何かを予測したり、分類したり、実行したりできるソフトウェアのようなもの』と考えてください」(平原氏)
AIは、収集したデータから予測や分類のルールを自己学習して、ルールを自ら作り出すことができる。人間の脳よりも圧倒的に多くの情報を処理し、関連づけを行うため、今まで人間が気づくことができなかった傾向や特徴を導き出すことが可能だ。
「たとえば小売事業なら、過去の実店舗売上データ、顧客購買単価データなどから来月の来客数と売上を予測する、商品のカタログから商品マスタに登録する情報のみを抜き出したり分類したりするといったことができます」(平原氏)