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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2021 Winter レポート(AD)

顧客体験向上と業務自動化・最適化を両立 世界の先進事例に学ぶAI活用の真価

 さまざまなサービスやシステムでAIの活用が急速に進んでいる。ECビジネスにおいてもその流れは同様で、顧客、商品、売上などの各種データをAIで分析し、需要予測や顧客体験の向上、売上拡大などに役立てることが期待されている。2021年1月28日・29日に開催された「ECzine Day 2021 Winter」では、「macnica.ai」のブランドでAI事業を展開するマクニカのグループ企業 マクニカネットワークスの平原郁馬氏が、小売・EC業界における海外のAI活用先進事例を紹介。あわせて、これからのEC事業者に求められるAIへの取り組みかたについて解説した。

コロナ禍でも好調なウォルマート AIで実現できること

マクニカネットワークス株式会社 AIビジネス部 平原郁馬氏

 新型コロナウイルス感染症の流行により、消費者の購買行動は大きく変化した。街に出かけて買い物をするという行動が「当たり前」ではなくなり、大幅な売上・利益減でダメージを受けている実店舗も多い。一方で、外出自粛によってオンラインで買い物をする消費者が増えたことにより、成長を遂げるEC事業者も存在している。

 そんな中、多数の大型店舗を運営しながら順調に売上・利益を伸ばし続けているのが、アメリカの小売最大手企業ウォルマートだ。2020年8月~10月期の決算では売上高5%増。純利益に至っては56%増となった。

「その大きな要因となったのが、オンラインの注文を実店舗で受け取ることができるピックアップサービスや当日宅配サービス『Walmart+』などの、オムニチャネル戦略です。それらを支えるテクノロジーのひとつとして、ウォルマートではAIを積極的に現場に導入しています」(平原氏)

 実際に、2021年1月に開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES 2021」では、同社CEOのダグ・マクミロンCEO氏がAI、ロボット、5Gなどのテクノロジーを活用したビジネス変革の重要性について言及している。

 なお、AIという言葉の定義は、研究者によって若干見解が異なるケースがあるため、平原氏は次のように整理した。

「当セッションでは、東京大学 松尾豊教授の定義を引用して、AIとは『人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術』とします。また、私がお話するビジネスの現場で利用されるAIについては、『データを統計的に解析して、そこから何かを予測したり、分類したり、実行したりできるソフトウェアのようなもの』と考えてください」(平原氏)

 AIは、収集したデータから予測や分類のルールを自己学習して、ルールを自ら作り出すことができる。人間の脳よりも圧倒的に多くの情報を処理し、関連づけを行うため、今まで人間が気づくことができなかった傾向や特徴を導き出すことが可能だ。

「たとえば小売事業なら、過去の実店舗売上データ、顧客購買単価データなどから来月の来客数と売上を予測する、商品のカタログから商品マスタに登録する情報のみを抜き出したり分類したりするといったことができます」(平原氏)

AI活用で顧客体験を向上 小売・EC業界における先進事例を紹介

 小売・EC業界において、先進的な企業はAIをどのように活用しているのか。平原氏は、AIの活用により顧客体験の向上を実現している代表的な事例を紹介した。

閲覧者に合わせた商品ページを自動生成

 中国EC最大手企業では、閲覧者ごとに「もっとも購入される可能性が高い商品ページ」をAIで自動生成する仕組みを実現している。

 まず、ウェブサイトを訪問したユーザーをAIが年齢・性別・アクセス地域などで自動的にグループ分けし、グループごとに最も統計的に効果の高いカスタム商品ページを自動作成して表示。そして、「商品を購入」「他のページに移動」「離脱」などのユーザーの行動データを収集するとともに、その行動に至った要因を解析して導き出す。さらに、その結果をAIにフィードバックし、より購買確率の高いページを生成できるように改良していく。

ギフトを贈る相手へのメッセージをAIが作成

 中国のある大手ECでは、ギフト商品を購入した贈り主が、贈り先の情報として年齢、性別、性格、ギフトを贈る理由などを入力すると、AIが統計的にもっとも満足度の高いメッセージを自動作成し、ギフト商品とともに贈り先に届けるというサービスを提供している。メッセージ受領後に満足度調査も実施しており、アンケート結果はデータ化してAIへフィードバックされる。

 贈り先はもちろん、贈り主にとっても簡単な情報の入力だけでギフトとしての価値が上がることから、双方にとって満足度の高いサービスとなっている。

リアルタイムで在庫データを収集して顧客に通知

 アメリカの小売最大手企業では、カメラを搭載したロボットが商品棚の状況をリアルタイムで監視・撮影。撮影画像をAIが解析し、陳列商品の残在庫(欠品情報)を自動算出する。結果は顧客のアプリにも即時反映されるので、顧客はどの商品がどこにあるのかに加えて、欠品状況も把握できる。さらに同社は、リアルタイムの在庫データを需要予測AIにも共有することで、効率的なサプライチェーンを実現している。

顧客の好みを踏まえた高度な接客を実現

 イギリスのある有名ブランドでは、顧客ごとの嗜好を反映したプロフィールに基づく質の高い接客により、ロイヤリティを向上している。

 仕組みとしては、ECと実店舗での顧客の購買傾向データ(閲覧・購買履歴など)を収集し、蓄積されたデータからAIが顧客の嗜好などを分析して、固有のプロフィールを作成。実店舗スタッフは、AIが作成したプロフィールをタブレットで参照して接客にあたる。これにより、顧客1人ひとりの嗜好を事前に把握した上で、的確な商品提案を行うことができる。接客の結果もデータとして記録し、AIにフィードバックすることで、さらなる接客品質の向上につなげている。

AI活用が加速する未来に向けて企業が今取り組むべきこと

 平原氏が紹介した事例は、欧米や中国の大手企業による先進的な取り組みだが、「AIの民主化」が進む中、日本でもAI活用に取り組み始める企業が増えつつある。また、AIがさらに浸透していくことで、小売・ECビジネスは大きく変化すると言う。AIによって変わる「5年後の未来」として、平原氏は次の3点を挙げた。

  • 顧客とのインタラクションが劇的に変わる
  • 今までの業務が劇的に高度になる
  • 人手で行っていたことを機械が行い、業務が自動化される

 先の事例を鑑みれば、いずれも腑に落ちる変化と言えるだろう。

「たとえば、先ほどご紹介した事例のように『顧客ごとの嗜好を反映したプロフィール』を作成することは、これまで物理的に不可能ではないものの、人手で行うには膨大なコストと時間が必要であり、現実的ではありませんでした。それがAIを活用することで、膨大なデータの分析からプロフィール作成まで自動化できるようになり、今までよりも高度なレベルの接客が実現したわけです。さまざまな業務でこうした変化が起こり、その流れは加速していきます」(平原氏)

 ごく近い未来の変化に備えて、小売・EC事業者にはどのような取り組みが求められるのか。平原氏が「絶対に行う必要があること」として強調するのは、まず「データ戦略を立てること」だ。

「どのようなデータから、何を導き出し、活用するのか。そのための元データは、どのように継続的に取得するのか。データをどのように分析し、結果を導き出すのか。AIの活用を始めるにあたって、これらの戦略を立てることは必須の要件です」(平原氏)

 そして、「AIを少しずつ試し、経験を蓄積すること」も重要だと言う。

「AIの活用にも経験が必要です。少しずつ試して経験を蓄積し、社内のAIリテラシーを高めてください。利益率向上やロイヤリティ向上といった目指すべきビジネスインパクトの創出に向けて、しっかりとデータ戦略を立てるところから始め、データを収集・整備し、少しずつ現場にAIを取り入れていきましょう」(平原氏)

課題に合わせたソリューションを提示 伴走型パートナーとしてAI活用を支援する

 AI領域における統合ブランド「macnica.ai」を展開するマクニカは、2019年にデータサイエンティストコミュニティを活用しながらAIサービス開発を行うCrowdANALYTIX社の株式を取得し、関係会社化した。同社の代表的なソリューションのひとつに、AIによる商品登録業務の自動化がある。

 100万点にのぼる商品を取り扱い、商品マスタへの登録作業に膨大な工数を要していたアメリカの大手小売企業の課題を解消するために、CrowdANALYTIXではデータアセットを構築し、商品情報受領後の商品の分類、読み取り、情報の正規化・入力といった一連の作業をAIで自動化するソリューションを開発。仕組みとしては、AIが商品画像と商品テキスト(説明文)それぞれから自社の商品マスタに登録したい情報を自動的に選択・抽出して分類し、登録まで行うというものだ。

「このAIはさまざまなカテゴリの商材に適用されていますが、たとえばファッションカテゴリの商品であれば、商品画像からは襟や袖の形状、柄などの情報を識別・判定して取得。ブランド名や素材、サイズ、洗い方などの細かい情報は、メーカーから送られてくる商品テキストから自動的に抽出して登録する仕様となっています」(平原氏)

 マクニカでは、このソリューション「CrowdANALYTIX for Product Master Database」を日本の企業向けにも提供している。平原氏は「ただし、これはあくまでもCrowdANALYTIXのAIを活用したフルカスタマイズソリューションの一例」と強調した上で、最後にこのように語りセッションを締めくくった。

「マクニカのAI事業のコンセプトは、『伴走型パートナー』です。我々は世界50ヵ国・2万5,000人のデータサイエンティストコミュニティと連携しながら、各社の経営課題解決に向けたソリューションの開発やサービス提供を行っています。データの調査からプロジェクトの企画、仮説検証、実装、運用まで、すべてのプロセスを一貫して支援いたします。プロジェクトの企画段階から実装・運用まで、ワンストップで提供できることがマクニカの強みです。経営課題へのAI活用にお困りであれば、ぜひお問い合わせいただければと思います」

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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