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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2020 Autumn レポート(AD)

店舗DXのトレンドから探る「CXの新しいかたち」 電通アイソバーが語る未来の顧客体験とは

 いまや、あらゆる業種の企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)。とくに小売事業では、店舗でのデジタル活用が喫緊の課題となっている。より良い顧客体験を提供するために、店舗において求められるDXとはどのようなものか。実際に何から手をつければ良いのか。2020年10月6日に開催された「ECzine Day 2020 Autumn」にて、CXデザインファームとして企業課題の解決を支援してきた電通アイソバーの口脇啓司氏と門別 諭氏が、店舗DXの指針や最新事例、具体的な取り組み方などについて説明した。

コロナ禍を背景に加速する店舗のデジタル活用

電通アイソバー株式会社 プラットフォームコンサルティング部 エグゼクティブ プランニング ディレクター 口脇啓司氏

 ここ数年で広く浸透してきたデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、とくに今年は店舗ビジネスを展開する企業にとって、その重要性が増していると言う。これは「コロナ禍による影響が大きい」と口脇氏は語る。

「外出制限や感染対策への意識向上から、たとえば『人との接触を避けたい』など、消費者の価値観・行動が大きく変化しました。また、コロナ禍の影響で多くの企業は業績が低下しており、いまだに改善傾向が見られない状況です」

 こうした現状の課題に対して、「大きくふたつのテーマで店舗DXに取り組むことが求められる」と口脇氏は指摘する。

 ひとつは、「DXによる店舗運用の効率化」だ。これは主に企業ニーズに対応するものであり、デジタルによるオペレーション改善やコストダウンを目指す。もうひとつは、「デジタルによる店舗体験」。こちらは主に顧客ニーズに応えるもので、デジタルによる既存ビジネスの収益性向上を目指す取り組みとなる。

「DXの実現には4つのステージがあり、デジタルによるオペレーション改善はステージ1、既存ビジネスの収益性向上はステージ2に相当します。その先が本来のDXとも言えるより高度なステージで、ステージ3は『近接ビジネス創出によるマネタイズ』、ステージ4は『デジタルによる自社ビジネスの抜本的な改革』となります」(口脇氏)

 ステージ1・2は「デジタイゼーション」、ステージ3・4は「デジタライゼーション」と呼ばれる。店舗DXとしてデジタイゼーションに取り組むことで、現在抱えている店舗の課題解決だけでなく、本来のDXであるイノベーティブなビジネス変革へと進む足掛かりにもなる。

 続いて口脇氏は、日本における店舗DXのトレンドとして、次のような事例を紹介した。

バーチャル店舗

 インテリア・家具業界や不動産業界ではすでに多く導入されており、実際の店舗画像を3D化して自宅で店舗内を歩いて見てまわるようなウォークスルー感に加え、気になる商品の詳細確認やECと連携してその場で購入することも実現。非接触な環境で実店舗に近い店舗体験を提供している。 

オンライン接客

 TSIホールディングスグループのボディケアコスメショップ「Laline(ラリン)」では、テキストメッセージやチャット、ビデオを使い、店舗の販売員がリアルタイムでオンライン接客するサービスを提供。従来は店舗でしか享受できなかった質の高い接客を、ECサイトの顧客(オンラインユーザー)が受けられるようになっている。

店舗内行動計測

 来店数や滞在時間、時間帯別の混み具合、店舗内の行動などのデータを計測し、店舗オペレーションの効率化やマーケティング活動に活用。店舗でも、ECサイトと同様に顧客行動を数値化しKPIで管理して、接客の質の向上や効率的な人員配置、在庫量の最適化や商品陳列の改善などを可能としている。

体験型ショップ

 2020年8月に、体験型ショップ「b8ta(ベータ)」が日本に上陸。タブレット端末と商品がセットで棚に置かれ、来店者は実際に商品を触りながらタブレットで詳細情報などを閲覧できる。購入も可能だが、あくまでも商品を「体験」することを主体とした店舗。来店者の行動データは細かく計測され、マーケティング施策や商品開発などに活用される。

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店舗DXで実現する新たな顧客体験 「CXの新しいかたち」とは

 DX以前にオムニチャネルを推進し、オンライン(EC)と店舗のシステム統合を進めてきた企業も多い。コロナ禍の現在においては、もはやオムニチャネルは「やったほうが良い施策」ではなく、「必ずやるべき施策」と認識すべきだと口脇氏は言う(参考:アフターコロナにおけるオムニチャネル戦略の進め方)。

「オムニチャネル施策として、チャネル間のシステム統合で在庫データや顧客データの一元化、会員サービスの共通化などを実現した上で、店舗DXではさらに一歩進んで『サービス自体の融合』が求められます」

 店舗とECには、それぞれの強みがある。たとえば店舗なら「人による接客」「その場で疑問点を解決」、ECなら「デジタルの数値把握」「24時間365日使える利便性」「非接触での購買完結」などが挙げられる。サービスの融合とは、こうしたそれぞれのチャネルの強みをテクノロジーの力で融合することを意味している。

 また、チャネルをクロスしたサービスの融合により、店舗における顧客体験(CX)の設計も大きく変わってくる。これまでのオムニチャネルにおいては、チャネル間の隔たりをなくして共通のサービスを提供しながらも、認知・検討・購入・ロイヤル化といったカスタマージャーニーを、オンラインユーザーとオフラインユーザーで分けて設計することが可能だった。

「店舗DXでは、とくに検討フェーズの体験は融合し、もはやオンラインとオフラインのどちらのチャネルなのかユーザー自身も認識できないような体験になり、これまでになかったジャーニーを辿ることになります。『CXの新しいかたち』とは、顧客のニーズに寄り添うソリューションを提供することで『新たなカスタマージャーニー』を描き、デジタルによる新たな店舗体験を創出することと言えます」(口脇氏)

 こうしたサービスの融合や新たな顧客体験の創出を実現するために、電通アイソバーではさまざまな店舗DXソリューションを提供している。

「店舗DXのふたつのテーマである『デジタルによる店舗体験』と『店舗DXによる効率化』、それぞれのニーズをカバーするソリューションを用意しています。前者ではバーチャル店舗やVRコマース、後者では店舗内行動計測や接客タブレット、また、両方のニーズに対応したソリューションとしてオンライン接客ツールがあります」(口脇氏)

 オンライン接客ツールは、非接触で人による接客を受けられるという点では顧客ニーズの店舗体験に、オフラインのリソースをオンラインで活用できるという点では、企業ニーズの効率化にそれぞれ対応できるソリューションと言える。

 さらに、電通アイソバーではこれらの店舗DXソリューションを支える基盤となるコマースプラットフォームやデータプラットフォームも併せて提供している。

 電通アイソバーでは、企業に最適な店舗DXを支援するためにCX戦略の策定からカスタマージャーニー設計、クリエイティブによるモチベーション創出、ソリューション導入や戦略に沿った運用支援までワンストップで店舗DXを支援している。「すべてをデジタル化するのではなく、『人とデジタルの融合によって生み出される新たな店舗体験の創出』が今取り組むべきDXである」と口脇氏はまとめ、自身のパートを締めくくった。

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「店舗 with オンライン」から始める店舗DX スムーズに推進するコツを伝授

 店舗DXの必要性や、目指すべき方向性は理解できても、具体的に何から始めればよいのかわからないと言う方も少なくないだろう。あまりデジタル活用に取り組んでこなかった企業にとって、いきなり店舗にてDXを始めるというのは少々敷居が高い。最初の取りかかりとして手をつけるべきは何か。これについては、門別氏が説明した。

電通アイソバー株式会社 ビジネスデベロップメント部 門別諭氏

「デジタルを利用した顧客体験として『すでにオンラインで提供できている体験』を、いかに店舗に持ってくるかというところを考えるのが近道です。いわば『店舗 with オンライン』のようなかたちでDXを導入できるところから取り組み始めれば、比較的難易度は低いと言えます」(門別氏)

 たとえば、店頭で商品を購入した顧客から、そのまま商品を持ち帰るのではなく「配送したい」というリクエストを受けることもある。ギフトなので相手に直送したい場合もあれば、次の予定があるので商品を持ち歩きたくないなど、さまざまなシチュエーションが考えられるだろう。

「もちろん従来の店頭接客でも、その場でお客様に配送伝票を書いてもらって対応することはできます。しかし、そのお客様がオンラインストアの会員で、店舗側でもその顧客情報をシームレスに利用できれば、伝票記入の必要もありません。また、オンラインストアの在庫管理・配送システムを利用できれば、店頭在庫ではなく倉庫の在庫を直接発送することも可能で、より効率的でスピーディーな対応が実現できます」(門別氏)

 オンラインストアと店舗で求められる機能には共通するものも多い。異なるのはそのシチュエーションだ。とくに店頭のシチュエーションには、顧客がPCやスマホに向かってショッピングするオンラインストアとは異なり、検討すべきさまざまな要件がある。それらのシチュエーションに合わせたDXソリューションを選択、導入していくことで、店舗DXをスムーズに推進できると言う。

 とは言え、タブレットを活用した接客支援、デジタルサイネージによる商品提案から購買への誘導など、店舗DXソリューションの種類は多岐にわたる。システムの観点で見ると、顧客体験を提供するフロントエンドを順次追加・カスタマイズしていくということは、その都度、コマースのバックエンドと連携させるための作り込みが必要になり、それには多くのコストや手間を要してしまう。

 こうした課題の解決策として昨今注目されているのが、顧客の体験に合わせて接客、購買の提供を実現する「ヘッドレスコマース」と呼ばれるアーキテクチャだ。電通アイソバーでは、CMSのAcquiaおよびECプラットフォームのShopifyを連携させた「Headless(ヘッドレス)ソリューション」を提供している。これにより、フロントエンド(顧客体験)の設計や追加・連携を、より柔軟かつスムーズに行えるようになると言う。

 「Headlessソリューションを活用して、店頭での簡易なDX導入から始めながら、徐々にDXを適用するシチュエーションを拡張し、柔軟に連携していくことによって、より良い顧客体験を実現できます」(門別氏)

 門別氏は最後に次のように語り、セッションを締めくくった。

「いかに優れた顧客体験を設計しても、その体験を実際に作り出すことができなければ意味がありません。CXデザインファームとして顧客体験の設計はもちろん、それを具現化するためのさまざまなDXソリューションの導入やその前提となる柔軟なプラットフォーム構築、そして顧客体験の実現まで一貫して伴走支援できることが、われわれ電通アイソバーの強みです」

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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