ヤフーとアスクルに何が起きたのか? ヤフーの歴史を振り返る
通販子会社であるアスクルの社長らの再任を拒否したことで話題を集めているヤフーはそもそも、米国企業のYahooとソフトバンクが共同で設立した会社だ。誕生は1996年。マイクロソフト(米)が「ウインドウズ95」を発売した翌年のことである。
当時のソフトバンクは、パソコン用パッケージソフトの販売が主力。携帯電話事業どころか固定電話事業も手がける前のことだった。
ヤフーは会社設立後すぐに、ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」の運営を開始。持株会社ソフトバンクグループ(SBG)の誕生を契機に、同グループ内における「インターネット事業(その後「ヤフー事業」に名称変更)を担当。安定的にキャッシュを稼ぎ出す子会社として、幾度となく新規事業へ巨額投資を続ける親会社を支えてきた、というのが大まかな経緯だ。
SBG内における優等生ともいうべき存在のヤフーは今、大きな転換期を迎えている、といっていいだろう。
まずは、大株主の構成である。アルタバに商号を変更していた米Yahooは2018年、所有していたヤフーの全株式(約36%)を売却。会社スタート時からの大株主との資本関係は消滅したのである。米Yahooには年間100億円前後のロイヤリティ、それに株式配当金を支払ってきた。
SBG内における立場も大きく変化するのは必至の情勢だ。ひと言でいえば、世界的な投資事業に集中するSBG(孫正義会長兼社長)からの自立、いわば親離れである。
これまではグループ内における役割・責務を確実にこなす孝行息子だったが、今後はグループを牽引する重責を担う。携帯電話事業のソフトバンクとともに、これまで以上に業務拡大を推進し、グループ全体を支える必要に迫られるということである。
M&A(企業買収・合併)や国際化、スポーツ事業、資金調達など、常に独力で進めている“楽天化”ともいえるだろう。
いずれも失敗に終わっているが、大手テレビ局TBSの株式買収に直接乗り出した楽天に対し、テレビ朝日の買収を目論んだのはヤフーの親会社(現SBG)だった。
海外展開はSBGに任せてきたヤフーとは対照的に、楽天の売上高海外比率はすでに、2割を超えている。
親離れの準備ということだろう。ヤフーは独自で資金調達をするようになっている。会社設立以来ほぼ無借金状態が続いていたが、17年以降、社債の発行もあって「有利子負債」という科目を決算書に計上するようなったのだ。 借入金や社債を含め有利子負債計上額は2,152億円(19年3月末現在)。主な借入先は三井住友銀行(197億円)、みずほ銀行(106億円)である。
ヤフーは19年10月に持株会社のZホールディングス(HD)を立ち上げ、ジャパンネット銀行などを統括するために設立する金融関連会社とともに、持株会社にぶら下がる形になる。持株会社体制に移行することで、より迅速な事業戦略の推進を実現し、事業成長を加速させようというわけだ。
ヤフーは何で稼いでいるのか。ビジネスモデルや現状を改めて確認しておこう。