『季刊ECzine』トークセミナー:「システム設計、EC担当者がおさえておくべき勘所」
今回のトークセミナーのテーマは、「システム設計、EC担当者がおさえておくべき勘所」。日本のオムニチャネルの代名詞とも言える逸見光次郎さんだが、カメラのキタムラなどで業務フローを踏まえ、ECを含めたシステムを刷新した経験を持つ。
特別ゲストとしてお招きしたCommerble代表・橋本圭一さんは、PaaS(パース:Platform as a Service)という技術を用い、ECサイト構築の常識と言われている「3年でリプレース」ではなく、継続的進化を可能とするプラットフォームを提供。GitHubに「自社ECの仕様を学ぼう」を公開し、その知識を業界に共有しようとしている。
セミナーはまず、超文系!という逸見さんが、システムに強くなるまでの経緯を説明するところから始まった。
逸見さんがオムニチャネルなシステムを自分で設計できるワケ
逸見(オムニチャネルコンサルタント) 私はカメラのキタムラにいた時に、会長の北村さんからずっと「君はシステムがわかる営業なんだよね?」と念を押されていましたが、バリバリの文系で、営業・物売サイドの人間です。 ただ、ECをやる時には後ろのシステム、商品マスターがわからないと、ECでの物の売りかたがわからないし、お客さまにどの情報を開示するのか、基幹データベースから何を引っ張ってこなければいけないのか、といったことがわかりません。それがわかる人間ではあります。
なぜ、バリバリ文系・物売りの私がシステムがわかるようになったのか。簡単に経歴を説明しますと、2社めのソフトバンクで、セブンイレブンで本の受け取りができるネットサービスを作りました。実は、ソフトバンク入社時はExcelすら使えない状態だったんです。恐いもので、人は必要に迫られると何でも作れるようになります。当時はECパッケージも何もない時代でしたが、3ヵ月でサイトオープンにこぎつけ、裏側ではセブン‐イレブンの会計システムとすべて接続し、物流は本の卸のトーハンが毎朝雑誌を運んでいる便に乗せ、モールはYahoo!ショッピングに接続しました。
その後、4社めでイオンに入りネットスーパーを立ち上げています。私は業務フローが大好きなのですが、当時のイトーヨーカドーの津田沼店がネットスーパーの作業所を見せてくれました。○時にバッチを締め、○件オーダーが入り、○人でピッキングする。それを業務フローに書き起こし、要件定義しています。 当時利用していたパッケージのままではバッチ処理が1日1回でしたが、ネットスーパーは1日5回締める必要があるので、それをすべて作り直しています。いちばんの特徴は、生鮮系、肉、魚は、朝に入るまで値段が決まらず、ネットである商品が大量に売れたら発注しないと実際の店舗の棚がカラになってしまうといったように、常に動いていること。また、夜間にそれを会計計上して、担当者に売上をつけ、評価に反映する仕組みも必要でした。こういったことを社内でヒアリングし、自分でシステム図を書きました。
5社めのキタムラでは、一部新品と中古のマスターの連携、自社サイトとモールをの在庫連携をしています。プログラミングなど実際の開発作業は外部委託しましたが、SEは内部で育て、ECの営業部隊と社内のSEで要件定義をしてもらいました。ちなみに要件定義は、2,300項目作り、最終的に800項目に絞り込んでいます。キタムラ時代のシステム関連での思い出は、アプリの申請です。審査がどうにも通らないので、直接Appleの担当者に連絡しました。帰国子女の妻にメールを見てもらって、「アメリカ人にこんなにつらつら書いてもダメ。ひとことにしなきゃ」というアドバイスをもらい、そのとおりにしたら一発で通ったんですよね。
システムが得意なわけではないけれど、自分がシステム図を書かないと、最終的に商品が売れないのでやっているわけです。
編集部 話の腰を折るようですが、逸見さんはいわゆるEC担当者が行う販促活動として、バナーを作ったり、メルマガを書いたりもされたんですか?
逸見(オムニチャネルコンサルタント) セブンネットショッピングの時には毎週メルマガを書いていましたし、Photoshopも知らないのにバナーも作っています。分析データの抽出が間に合わない時には、自分でSQLも書きました。 出版社にわたすデータを、「SEが足りないからお前が作れ」と鈴木さんに言われて死ぬかと思いました(笑)。最初にシステムに携わった経験が、重すぎたんですね。