なによりの武器は、いつでもブレることのないデイトナのマインド
川添(V) 前編では、前職との文化の違いや、シナリオの具体的な運用方法についてお話しいただきました。後編では、ブランドの根底にあるビジョンやカルチャーなどについて、お聞きしたいと思います。
カルチャーを可視化するうえで、クリエイティブ(ブランド発信のあらゆるビジュアル、制作物)は重要なツールになりますが、店舗などで配布されている「フリークストアのシーズンカタログ」のクオリティは、いつもすごいなと感じていました。雑誌並みのクオリティかつ、コーディネート自体も独自性があって、ついつい家にキープしておきたくなります。しかもそれらをすべて内製していると聞いた時には、さらに驚きました。クリエイティブに重点を置く考え方や文化は、以前からあったのですか?
小林(F) 元々、社長の鹿島が自分でお店を始めたのがフリークスストアの始まりです。そのため、販促などもひとりでやっていたのですが、その頃から「フリークスペーパー」というカタログを作成していました。その文化が継承されていったので、カタログを内製するというのは自然な流れだったようです。
カタログにも、デイトナのカルチャーや思いがにじみ出ていると思います。内製することの良さは、そこにあるのではないでしょうか。クリエイティブは企画、構成、撮影もすべて自分たちで行っています。
川添(V) アパレル業界は、マーケティングやクリエイティブは後回しになりがちだと感じます。商品企画の段階から、販売、販促、プロモーション、コミュニケーション(EC、SNSを含む)を一体として計画したり、どのタイミングでどんなクリエイティブを提示していくかを考えている国内アパレル企業は少ないでしょう。先ほどお話しされたカルチャーをクリエイティブとして表現していくというこのようなコンテンツの考え方は、最初からスタッフの皆さんの意識にあったのでしょうか。
小林(F) 作って終わりというデザイナーの方もいるかと思うのですが、デイトナのクリエイティブチームは、しっかり顧客視点を持っています。弊社の場合は鹿島の哲学として、「販促は読んで字のごとく」というところから始まっているので、よりよく見せるというのは当然です。そのうえで、自分たちが売りたいのものは何なのか。どういうお客様に、こうリーチしたいから、こういう成果物になる、というところまで考えて作っていく。そういったマインドを持ったメンバーがいることは、私たちの大きな武器です。
川添(V) 鹿島社長の考え方は、まさにマーケティング思考ですが、根っからの商売人という方が合っているかもしれませんね。私が惹かれるタイプの方です(笑)。社内では元々そういう顧客視点と商売人気質の両方を持った方が多いのでしょうか。それとも徐々に醸成されていったのでしょうか。
小林(F) 後者でしょうね。それがまさに、カルチャーなのではないかと思います。ですが、弊社はビジョンやミッションに共感して入社している人が多いので、同じようなマインドを持った人間が集まってきている、というのはあるかもしれません。
私たちのビジョンは、「熱狂的に生きて世界中を幸せにします」。ミッションは、「価値ある物語を、熱意を持って共に創り、1人ひとりを最高の笑顔にします」。どんなときでもここがブレることはありませんし、私たちは常にこれを追い求めています。スタッフ全員、爪の先までこのスピリットが入っていると思いますよ。
川添(V) ちなみに、今は独立された「TOKYO BASE」のSTUDIOUSもフリークストアから立ち上がっているんですよね。鹿島社長の哲学が受け継がれているなと感じる部分はありますか?
小林(F) そうですね。デイトナには、ファッション的な独自のカルチャーと、鹿島の起業家としてのマインド、つまりファッション観と仕事観のふたつの軸があります。TOKYO BASEさんには、仕事観の部分が特に色濃く出ているような印象を受けます。