事例2:コスメEC「DAZZSHOP」における新商品へのクロスセル
スマホユーザー・リピーターが大半を占めるコスメのECサイト「DAZZSHOP」。トップページのバナーから新商品キャンペーンへの誘導を試みていたが、まったく成果が上がらなかった。バナーのクリック率は低く、対策としてクリエイティブの改善に取り組んでいた。
ところがデジタル行動観察を行ってみると、課題は他にあることがわかった。ほとんどのユーザーは一度トップページに来ていたが、即座に左上のメニューボタンをタップし、いつも購入する商品ページへ移動していた。トップページの滞在時間が短いため、バナーに気づかれていなかったのだ。そこで、商品詳細の下やカートページの入口など、ユーザーのいつもの動線の中にバナーを散りばめたところ、新商品の売上は1週間で140%に伸びた。
この事例における本当の課題は「クリエイティブをどう変えるか」ではなく、「いつもの行動のなかでどう訴求するか」だったのだが、従来の定量分析では気づくことができなかっただろうと生田さんは語る。
「バナーを散りばめるという施策は、それだけだと安直に聞こえるかもしれませんが、効果は数字で現れています。これがデジタル行動観察の大きな力だと思っています」
紹介事例のようなリピート促進・活性化やクロスセル戦略以外にも、離反・解約の防止や新規顧客の獲得、MAのステップメールのシナリオ作りなど、デジタル行動観察が活用できる場面は多いと強調した。
デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」で新しいデータ活用を
最後に、実際の画面を見ながら、デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」を紹介してくれた。特徴は、大きく以下4つ。
- 2年の長期に渡ってユーザーの一連の行動を追うことができる
- PC・スマホのほかネイティブアプリの行動も計測でき、ユーザー一人ひとりがどう動いているのかトータルで捉えられる
- 顧客属性やID、特定の商品の購入など、見たい切り口で自由に顧客のセグメントと絞り込みができる
- 発見したインサイトを定量的に裏付けできる
活用の際は、対象となるすべてのユーザーの行動をチェックする必要はなく、10~20人を見れば傾向をつかむことができ、それに対してボリューム検証を行えばよいことも付け加えた。
結びとして、下記のように本日のメッセージをまとめ、講演を締めくくった。
「今までのデータ活用は、集計して定量的に分析するのが王道でしたが、結局のところ顧客が何を考えているかわからず、行き当たりばったりになったりして、うまく活用できていませんでした。それに対し、一人ひとりの行動に分解し、観察しましょうというのが我々の主張です。それにより、実際に何が起きているのかを把握でき、的確な打ち手が打てるようになってコストも下がっていく。これが新しい時代のデータ活用ではないかと思っています」(了)