顧客一人ひとりの行動を「見える化」する「デジタル行動観察」
デジタル行動観察とは、顧客の行動ログ(主にウェブサイト上でのアクセスログ)と、属性や購入履歴などの情報をあわせて見ることで、顧客一人ひとりの行動を「見える化」することだ。
これまでもリアルの世界では、グループインタビューやデプスインタビュー、リアルユーザーによる行動観察調査などを通し、顧客行動を見える化する試みが行われていた。ただし、従来の手法は費用も時間もかかり、なかなか実施できないのが難点だったが、デジタル行動観察は調査準備などの手間や専門スキルが不要で、手軽に行うことができる。各種施策を実行する前の現状把握と企画立案のために活用すれば、施策の精度が向上し、必要のない分析工数やコストを低減できるのがメリットだと説明した。
続けて生田氏は、デジタル行動観察を用いた2つの成功事例を紹介した。
事例1:カラーコンタクトECにおける顧客の活性化
大手メーカーの進出などにより、昨対比マイナスが続いていたとあるカラーコンタクトのECサイト。顧客情報を分析すると、約8割を占めるリピーターの多くが、毎回同じ商品を購入していた。そこで、「3箱以上で送料無料のまとめ買いキャンペーン」施策を行ったが、ほとんど利用されず、施策は失敗に終わった。
その後、デジタル行動観察を行ってみると、想定とはまったく違う顧客ニーズが見えてきた。多くのユーザーは、他商品の詳細情報や口コミを検討したあとで、いつもと同じ商品を購入していた。一度カートに入れながら、結局キャンセルするという行動も見られた。つまり、リピーターは毎回同じものを買いたいのではなく、他商品にも興味はあるが決めきれない、という状況だったのだ。
なぜ決めきれないのか、という点も行動観察から見えてきた。複数の商品ページを見ていたユーザーは、ほぼ例外なく口コミも見ており、その結果として購入をやめていた。問題は口コミの質にあったのだ。同サイトでは口コミにポイントインセンティブをつけていたため投稿数は多かったが、参考にならないコメントや画像も多かった。そこで、口コミ規約を改定し、投稿内容をすべてチェックして信用性の高い口コミだけを残すようにした結果、他商品も購入されるようになっていった。
またリピート顧客であっても、ウェブサイト名を覚えておらず、リスティング広告から流入するケースが多いこともわかった。リスティング広告の順位が落ちると途端に休眠顧客になってしまうというのは、ECとしては避けたい、不安定な状況だ。対策として、ウェブ以外の施策も実施。これらの施策により売上は反転し、昨対比でプラスに転じることができたという。
「デジタル行動観察が、高度に数字を分析してさまざまな切り口見つけていく従来のデータ分析とは異なり、かつ、効果があることがおわかりいただける事例だと思います。どのようなお客様が、どのようにサイトを利用しているのか『観察』すると、定量分析では見えなかったさまざまなことが見えてくるのです」