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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2017 KANSAI&Autumnレポート (AD)

なぜ定量分析だけでは失敗するのか 新しいデータ活用「デジタル行動観察」が施策の精度を上げる

 デジタルマーケティングのコンサルティング事業とソフトウェア開発を手がけるビービット。今年4月にリリースした、デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」はすでに80社を超える導入実績を持つ。「ECzine Day 2017 Autumn」に登壇した同社のソフトウェアサービス コンサルタント 生田啓氏は、ユーザグラムのコンセプトである、一人ひとりの行動データから顧客体験の改善につなげる方法について、成功事例を交えて語ってくれた。

なぜ、施策は失敗するのか 事例に学ぶ現状のデータ分析の課題

 はじめに生田氏は、現状のデータ活用における課題について、事例を交えながら解説を行った。

株式会社ビービット ソフトウェアサービス コンサルタント 生田啓氏

 1つ目に挙げたのは、リピート購入を促す施策がうまくいかなかったECサイトの事例だ。ロイヤルティの高い顧客を増やそうと、顧客データを定量的に分析したところ、5回の購入で継続利用率が高まるという相関関係が見られた。そこで、4回購入しているユーザーに対し、5回目購入時の送料無料キャンペーンを実施。結果として5回目購入は増えたものの、その多くが継続利用にはつながらなかった。生田氏は問題点をこう指摘する。

 「5回という数字は相関関係であって因果関係ではありません。とにかく5回買っていただければいいわけではなく、本当は『なぜ5回買ってくださったお客様は、その後も継続してくださるのか』という顧客理解が必要でした」

 2つ目に挙げたのは、中古ブランド品を扱うECサイトの事例だ。売上の大半を支えるヘビーユーザーの使い勝手を向上するため、検索機能の強化が企画されていた。サイトの全体的な傾向として、検索機能がよく使われていたので、ヘビーユーザーも活用していると思い込んでいたという。

 しかし、実際のユーザー行動を観察してみると、検索機能をよく使うのはライトユーザーのほうで、ヘビーユーザーはほとんど使っていないことがわかった。ヘビーユーザーは新着商品を知らせるメルマガをチェックし、好きなブランド品が入荷すればすぐに購入していた。つまり、ヘビーユーザーに有効なのは検索機能の強化ではなく、好きなブランドに合わせたメール配信など、まったく別の施策だったのだ。

2つの失敗事例、共通点は定量データだけに基づいた分析を行ったこと

 この2つの例のように、「定量的なデータの扱いだけでお客様がどう使っているのか、何が起きているかを見ていくのは非常に難しい」と生田氏は述べる。これまでデータ活用といえば、集計して定量的に分析することだったが、本当の顧客の状況がわからなければどんなデータにも意味がない。顧客一人ひとりの行動が生々しくわかる形でデータを使っていくことが重要であり、そのための定性手法「デジタル行動観察」こそが、データ活用の課題へのアンサーとなる、と語った。

顧客一人ひとりの行動を「見える化」する「デジタル行動観察」

 デジタル行動観察とは、顧客の行動ログ(主にウェブサイト上でのアクセスログ)と、属性や購入履歴などの情報をあわせて見ることで、顧客一人ひとりの行動を「見える化」することだ。

「デジタル行動観察」は顧客の行動ログと顧客情報をかけ合わせて行う

 これまでもリアルの世界では、グループインタビューやデプスインタビュー、リアルユーザーによる行動観察調査などを通し、顧客行動を見える化する試みが行われていた。ただし、従来の手法は費用も時間もかかり、なかなか実施できないのが難点だったが、デジタル行動観察は調査準備などの手間や専門スキルが不要で、手軽に行うことができる。各種施策を実行する前の現状把握と企画立案のために活用すれば、施策の精度が向上し、必要のない分析工数やコストを低減できるのがメリットだと説明した。

 続けて生田氏は、デジタル行動観察を用いた2つの成功事例を紹介した。

事例1:カラーコンタクトECにおける顧客の活性化

 大手メーカーの進出などにより、昨対比マイナスが続いていたとあるカラーコンタクトのECサイト。顧客情報を分析すると、約8割を占めるリピーターの多くが、毎回同じ商品を購入していた。そこで、「3箱以上で送料無料のまとめ買いキャンペーン」施策を行ったが、ほとんど利用されず、施策は失敗に終わった。

 その後、デジタル行動観察を行ってみると、想定とはまったく違う顧客ニーズが見えてきた。多くのユーザーは、他商品の詳細情報や口コミを検討したあとで、いつもと同じ商品を購入していた。一度カートに入れながら、結局キャンセルするという行動も見られた。つまり、リピーターは毎回同じものを買いたいのではなく、他商品にも興味はあるが決めきれない、という状況だったのだ。

 なぜ決めきれないのか、という点も行動観察から見えてきた。複数の商品ページを見ていたユーザーは、ほぼ例外なく口コミも見ており、その結果として購入をやめていた。問題は口コミの質にあったのだ。同サイトでは口コミにポイントインセンティブをつけていたため投稿数は多かったが、参考にならないコメントや画像も多かった。そこで、口コミ規約を改定し、投稿内容をすべてチェックして信用性の高い口コミだけを残すようにした結果、他商品も購入されるようになっていった。

 またリピート顧客であっても、ウェブサイト名を覚えておらず、リスティング広告から流入するケースが多いこともわかった。リスティング広告の順位が落ちると途端に休眠顧客になってしまうというのは、ECとしては避けたい、不安定な状況だ。対策として、ウェブ以外の施策も実施。これらの施策により売上は反転し、昨対比でプラスに転じることができたという。

「デジタル行動観察」は顧客の行動ログと顧客情報をかけ合わせて行う

「デジタル行動観察が、高度に数字を分析してさまざまな切り口見つけていく従来のデータ分析とは異なり、かつ、効果があることがおわかりいただける事例だと思います。どのようなお客様が、どのようにサイトを利用しているのか『観察』すると、定量分析では見えなかったさまざまなことが見えてくるのです」

事例2:コスメEC「DAZZSHOP」における新商品へのクロスセル

 スマホユーザー・リピーターが大半を占めるコスメのECサイト「DAZZSHOP」。トップページのバナーから新商品キャンペーンへの誘導を試みていたが、まったく成果が上がらなかった。バナーのクリック率は低く、対策としてクリエイティブの改善に取り組んでいた。

 ところがデジタル行動観察を行ってみると、課題は他にあることがわかった。ほとんどのユーザーは一度トップページに来ていたが、即座に左上のメニューボタンをタップし、いつも購入する商品ページへ移動していた。トップページの滞在時間が短いため、バナーに気づかれていなかったのだ。そこで、商品詳細の下やカートページの入口など、ユーザーのいつもの動線の中にバナーを散りばめたところ、新商品の売上は1週間で140%に伸びた。

 この事例における本当の課題は「クリエイティブをどう変えるか」ではなく、「いつもの行動のなかでどう訴求するか」だったのだが、従来の定量分析では気づくことができなかっただろうと生田さんは語る。

デジタル行動観察で導かれた、一見安直に見えた施策が売上を拡大

 「バナーを散りばめるという施策は、それだけだと安直に聞こえるかもしれませんが、効果は数字で現れています。これがデジタル行動観察の大きな力だと思っています」

 紹介事例のようなリピート促進・活性化やクロスセル戦略以外にも、離反・解約の防止や新規顧客の獲得、MAのステップメールのシナリオ作りなど、デジタル行動観察が活用できる場面は多いと強調した。

デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」で新しいデータ活用を

 最後に、実際の画面を見ながら、デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」を紹介してくれた。特徴は、大きく以下4つ。

  1. 2年の長期に渡ってユーザーの一連の行動を追うことができる
  2. PC・スマホのほかネイティブアプリの行動も計測でき、ユーザー一人ひとりがどう動いているのかトータルで捉えられる
  3. 顧客属性やID、特定の商品の購入など、見たい切り口で自由に顧客のセグメントと絞り込みができる
  4. 発見したインサイトを定量的に裏付けできる

 活用の際は、対象となるすべてのユーザーの行動をチェックする必要はなく、10~20人を見れば傾向をつかむことができ、それに対してボリューム検証を行えばよいことも付け加えた。

 結びとして、下記のように本日のメッセージをまとめ、講演を締めくくった。

 「今までのデータ活用は、集計して定量的に分析するのが王道でしたが、結局のところ顧客が何を考えているかわからず、行き当たりばったりになったりして、うまく活用できていませんでした。それに対し、一人ひとりの行動に分解し、観察しましょうというのが我々の主張です。それにより、実際に何が起きているのかを把握でき、的確な打ち手が打てるようになってコストも下がっていく。これが新しい時代のデータ活用ではないかと思っています」(了)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/5218 2017/12/13 11:00

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