マイクロソフトが提供するPaaS「Azure」とは
マイクロソフトでは、PaaSを中心としたクラウドサービスとして「Microsoft Azure(以下Azure)」を提供している。平岡氏はAzureの特徴の1つに、リージョン(1つ以上のデータセンターを含む地理的に離れた範囲・領域)の多さを挙げた。
「Azureは全世界で42のリージョンがあり、これはほかのどのクラウドプロバイダーよりも多い数です。日本国内でも、東日本と西日本に2つのリージョンを有しています」
リージョン数は選択肢の幅広さだけでなく、大規模災害に備えた可用性の確保しやすさなどを測る1つの目安にもなるだろう。国内に2つリージョンがあれば、冗長化構成のために海外リージョンを使う必要もなく、ネットワークレイテンシの面でも有利になる。
また、Azureの実績としては1か月あたり12万件のペースで新規ユーザーが増えており、「フォーチュン500」企業の約90%に利用されているという。
予測できないトラフィックの変動にも柔軟に対応可能
PaaSをはじめとしたクラウドサービスを利用する代表的なメリットとして、スケーラビリティがある。自社でシステムを構築する場合、将来的な成長を予測してサーバーのスペックや台数を決める必要があるが、クラウドなら最小限の規模でスタートし、必要になった時点で必要な分だけサーバーなどのリソースを増強していけばよい。
また、Azureではこうした長期的な変動だけでなく、ECサイトでは比較的起こりやすい「スパイク」と呼ばれるような急激なトラフィック増加にもスムーズに対応できる。
「Azureの自動スケール機能を使えば、負荷に応じて自動的にサーバーリソースを増減させることが可能です。たとえば最近では、著名人のSNSなどで取り上げられて拡散され、普段からは考えられないレベルのアクセスが集中的に発生することもあり得ます。そのような場合にもECサイトのレスポンス低下やダウンを防ぎ、せっかくのチャンスを有効に活かせるようになります」(平岡氏)
クリスマスや年末商戦のキャンペーン前後などもトラフィックは大きく変動するので、こうした機能があれば安心だろう。もちろん課金は使った分、使った時間のみ。平岡氏によれば、ピーク時に対応できるだけのリソースを固定的に確保する場合に比べて、自動スケールを活用した場合はインフラコストを7割ほど削減できるという。