知らず知らずのうちに消費者にストレスを与えている
普段、ECモールで買い物をするとき、商品を探し出して購入を決断するまでに、どのくらいの時間がかかっているだろうか。また、サブスクサービスで映画やドラマを選ぶ間に、鑑賞時間と同程度の時間が過ぎてしまった経験はないだろうか。
私たちは、消費者として日々多くの選択に迫られている。それに大きなストレスを感じる人も少なくない。企業の視点に立つと、モノを売りづらい時代となった。そんな中で必要なマーケティングを紹介しているのが、『「選べない」はなぜ起こる?』(サンマーク出版/小島雄一郎 著)だ。

近年、企業努力によって商品の質が大きく上がった。価格が安くても、一定のクオリティが担保されている。つまり、価格の安さだけで勝負できないのだ。広告代理店などで経験を積んだ著者の小島氏は、現代の消費者への効果的なアプローチについて「キーワードは『選択からの解放』だ(P.65)」としている。そこで重要なのが、作り手の意思だという。では、あなたは、自社商品にどんな想いを込めているだろうか。
消費者のニーズを捉えることだけが正解ではない
多くの企業は、消費者のニーズを捉え、そしてそれに応えたいと考えている。そのため、同じ方向を向きながら商品を開発したり、施策を検討したりする。見た目も機能も価格も、似たり寄ったりの商品が並ぶのは自然なことだろう。
だからこそ、「何を作りたいか」が大きな差別化要因となる。なぜなら、自分(自社)の意思は自分(自社)にしかないからだ。
これからは「周囲を見渡さずに動くこと」が新しい戦略になり得る。お客様の声を自分たちの価値観でフィルタリングし、必要だと思った要素だけに絞って取り入れる姿勢が重要だ。(P.73)
本書では、こうした環境の変化や今の時代にもつべき考え方はもちろん、うまく人間関係を構築するコツまでわかりやすく解説している。企業視点だけでなく、一人の消費者としても楽しめる一冊だ。