広報さんに教えられた、「いつ作ってどう売る」の重要性
――ヒット商品である、チョコレートビールを最初に作ったのは?
「2006年です。もともと地ビールマニア向けにエールビールを作っていたんですが、ビンテージで、コレクターズアイテムになるようなものを作ろうと思ったのがきっかけです。
もともと黒ビールには、コーヒーのように焦がしたような香りのものがあるんですが、もっとチョコレートっぽくして、チョコレートスタウトを作ろうと決めました。その時期がちょうど年末でして、それならバレンタインに合わせようと広報の中川が言って、それが最初のきっかけですね。
当時、彼女はほかで広報の仕事をしていて、うちは手伝ってくれていたんですが、彼女からみると、コイツらなんてバカなんだろうと。ただ作って売るだけで、世の中に広めようとしないなんて。僕もそのとき初めて教えられたようなものでした。バレンタインに合わせたPRが当たって、『インペリアルチョコレートスタウト』が売れて、翌年もまた売れた。そこからうちは、変わってきたわけですね。
次に作ったビンテージは『麦のワイン』なんですが、この発売日は、ボジョレーヌーボー解禁の日に合わせようと。これも当たって、発売前に完売になっちゃうくらいの人気商品です」
――広報さんの力、すごいですね。
「彼女が言っていることは正しい。一般の人の代表というか。そもそも、ビールがあまり好きじゃないですから。僕らはやっぱり、『ホップの香りを』とか言っちゃうんですよ。でも、そんなの一般の人はわからない。『チョコレート風味』といったほうが、興味をもってくれるわけです。
広く知ってもらえる商品を作っていくことで、いずれはホップの香りも嗅いでくれるかなとか、淡い期待を持っています。『アップルシナモン』というスイーツビールを作ったり、『湘南ゴールド』というオレンジを使ったフルーツビールを作ったり」
――そういうのは“職人基質”に反したりしないんですか?
「ないんじゃないですかね。ただ、つまんないこだわりはいっぱいあります。たとえばフルーツビールだったら、出来上がったビールに果汁を加えてるものもあるんですが、それはビールじゃなくてカクテルじゃないかって僕は思っちゃう。