人気作家の雑貨に行列ができる“角地”にあるお店
「エッケプンクト」——不思議な響きを持つ店の名前は、実に「カド」にあるからつけられたという。ドイツ語でEckepunkt=角地の意味のとおり、東京・自由が丘の住宅が立ち並ぶ角にある小さな雑貨店だ。ガラス張りの窓越しにステンドグラスの鳥のモビールが揺れ、丁寧な手刺繍が施されたシャツがかかる。ドアを開くと、どこにもないような個性豊かな雑貨たちがにぎやかに迎えてくれる。
ぽってりとした掌を感じさせるコーヒーカップ、ドロップのようなガラスのアクセサリー、長く使うのが楽しみになりそうな革のコインケースなど、どれも魅力にあふれたものばかり。ほぼすべてが手作りのものだけにひとつひとつ表情が異なり、眺めているだけでも楽しめる。その中からお気に入りを探す、もしくは出会ってしまうという方が正しいのか。雑貨好きにはたまらない店だ。
そして、壁一面を使ったギャラリースペースには、窓越しに迎えてくれた鳥のモビールとともに、ステンドグラスの作品が並ぶ。決して広くはないスペースだが、ところどころ中途半端に空いており、展示してある作品にも「売約済み」のマークがついている。どうやら人気の作家のようだ。
「ギャラリースペースでは、毎月作家さんの個展や企画展をやっているんですが、たいてい根強いファンがいらして、開始とともにほとんど売れてしまうんです。店頭に出した分もそうですし、オンラインショップの方で売れてしまうこともある。スカスカになってしまうとちょっと格好が悪いので、売約済みとして期間中置いておいていただいたり、作家さんにあとから展示分として納品していただいたりしています」と店主の熊田さん。
特に人気の作家の場合は、地方から前日に来て、早朝4時から店の前に並んで待つこともあるという。「近所の方に『並んでたわよ~』と教えていただいて知ったんですけれどね」と熊田さんは肩をすくめる。
「最近はInstagramで作り手さん自身も情報発信しているので、思いがけず大人気になっていたりします。お客様も貪欲にネットで情報収集しているので、うちのウェブサイトで個展の紹介をするとすぐに問い合わせがきますね。あまりにも早いので、びっくりすることも多いです」
決して“既に売れている”作家の作品ばかりを扱うわけではない。むしろ、店主の熊田さんがふらっと訪れたギャラリーで波長が合った作品や、「あのお客様が好きそうだな」と思った作品、そうした出会いから作家との出会いが生まれ、少しずつ取り扱うものが増えていったそうだ。
熊田さん曰く、「『エッケプンクト』にはコンセプトがない」。それは、お店自体の“生い立ち”に由来するようだ。