ECの議論は、HOW(手段)に偏りすぎている
もう一つECビジネスに身を置く中で思うことがあります。それは、セミナーやイベントにおける議論の中心がHOWに偏っていることです。
ECはテクノロジーと共に成長してきた領域です。新しいモールやプラットフォーム、テクノロジー、ツール。それらをいち早く使いこなすこと自体が、競争優位になっていました。
だからHOWが主役になるのは、自然な流れだったと思います。私自身、HOWの積み重ねで実績を作ってきた側面もあるので、HOWの議論自体を否定するつもりはありません。
ただ、市場が成熟してきている今、同じHOWを続けても差がつきにくくなっていると感じています。進む方向が定まらないままHOWを積み上げるのは、行き先を決めずに、乗り物だけを高性能にしているようなものです。
これからは、HOWの手前にある「進む方向やゴール(WHY・WHO・WHAT)」についての議論を中心にしていくべきだと思っています。
AI時代に、人間が決めるべきこと
生成AIの進化によって、思考・実行コストは限りなく少なくなっていきます。この流れは、今後さらに加速するでしょう。
たとえば、「広告文の作成」「改善案の洗い出し」「CS対応の一次受け」といった業務は、すでに「考える前に、まずAIに聞く」という行動が現場に浸透しています。その行為は効率化を実現する一方で、落とし穴も潜んでいます。
進む方向が曖昧なままAIを使えば、AIは猛スピードで「それっぽい正解」を量産します。そして、意思決定を間違えれば、誤った方向へ最適化し始めます。
だからこそ、人間がやるべきことは明確です。「なぜやるか=WHY」「誰に何を届けるか=WHO・WHAT」を決めることです。
これらが定義されていれば、AIは強力な味方になりますが、定義を誤れば味方どころかECビジネスの成長を鈍化させる敵になってしまいます。
ECの共通言語(OS)を整理する
この連載では、ECビジネスのスタンダードを、一つずつ言葉にしていきたいと思います。
KPI設計、LTV、CPA、集客、UX、CRM、組織、フルフィルメント。どれも目新しいテーマではありません。しかし、今まで曖昧に使われてきたこれらの言葉を再定義し、事業者も支援会社も、同じテーブルで建設的に話すための「共通言語(OS)」を作りたいと考えています。
次回は、まず全体像となる「ECビジネスのKPIについて」解説します。なんとなく使っているKPIや専門用語の解像度を上げるためのポイントを明らかにします。
